女子800mは「1分台」にチャレンジ 北村、川田、塩見の高速バトルに期待

月刊陸上競技

昨年の日本選手権でトップ争いを繰り広げた(左から)北村夢、塩見綾乃、川田朱夏 【写真:アフロ】

「1分台」へのカウントダウンが始まっている――。昨年の陸上日本選手権で女子800メートルのトップ3を占めた北村夢(エディオン)、川田朱夏(東大阪大)、塩見綾乃(立命館大)。第102回日本陸上競技選手権大会(6月22日〜24日/山口・維新みらいふスタジアム)では、3人の“ルーキー”が高速バトルを繰り広げるだろう。

3人が自己ベストを更新

昨年の日本インカレでは日本歴代2位となる2分00秒92をたたき出している北村 【写真:アフロ】

 昨年の日本選手権は高校生だった川田と塩見が先行すると、バックストレートで北村がトップを奪取。1周目と2周目をともに62秒台で刻んだ北村が2分04秒62で初優勝した。当時の自己ベストは北村が2分02秒52、川田が2分05秒23、塩見が2分05秒71。その後、3人は大躍進を遂げることになる。

 8月の山形インターハイでは、川田と塩見が歴史に残る名勝負を演じた。序盤から先行する川田が400メートルを59秒、600メートルを1分31秒で攻め込むと、塩見がホームストレートで逆転。塩見が2分02秒57(日本歴代5位)、川田が2分02秒74(日本歴代7位)と、ともに高校記録(2分04秒00)を大きく上回った。

 一方、大学生だった北村は7月の学内タイムトライアルで男子選手と走り、400メートルを58秒4で通過。2周目も62秒でまとめて、日本歴代2位相当の2分01秒22で走破した。そして9月の日本インカレでは、400メートルを58秒6、600メートルを1分30秒1で独走すると、日本歴代2位の2分00秒92をたたき出している。

 昨年の日本選手権から北村は1秒60、川田は2秒49、塩見は3秒14も自己ベストを短縮して、今季は2レースで3人が顔を合わせた。

 5月3日の静岡国際は、塩見を先頭に400メートルを60秒で通過。ラスト160メートル付近で北村が前に出ると、残り30メートルで川田がトップを奪い、自己新&大会新の2分02秒71で制した。続く5月20日のゴールデングランプリ大阪は、400メートルを59秒で入る展開。外国勢に食らいついた塩見がセカンドベストの2分02秒73で4位に入った。

順調に調整を進め、いざ、日本選手権へ

静岡国際の400メートルで優勝するなどスプリント力もアップしている川田。“サブ2分”へ挑戦となる 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 3人の状態はと言うと、北村は2月末に右ひざを痛めたため、本格的な練習を再開したのは3月後半から。シーズンベストは静岡国際の2分03秒36だが、徐々に本来の動きを取り戻している。「焦らずに、1分台という目標に向かっていきたい」と話しており、日本選手権には仕上げてくるだろう。

 川田は今季100メートルで12秒02をマーク。400メートルでも静岡国際は53秒58で優勝、5月11日の関西インカレでは自己新の53秒50と着実にスプリントがアップ。「800メートルで2分を切るのも夢ではないと思います。日本選手権は2冠が目標です」と力強い。塩見はゴールデングランプリ大阪でトップ集団につくレースを覚え、課題にしている終盤の走りに手応えをつかんだ。そして、「一番の目標は1分台。日本人で最初に1分台に入りたい」と意気込む。

 順番で言うと、05年の日本選手権で杉森美保(京セラ)が樹立した日本記録(2分00秒45)の更新が先になる。しかし3人は、「1分台」の“景色”しか見えていないようだ。

“サブ2分”を実現するには、高速ラップが必要不可欠になる。これまでの展開を考えると、400メートルは58秒台前半で入り、600メートルを1分30秒切りという展開になると面白い。今季は3人が万全な状態で激突していないが、コンディションが整えばどんな“化学反応”が起きるのか。1分台の扉をこじ開けるためにも、積極果敢なレースを期待したい。

(文/酒井政人)
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著者プロフィール

「主役は選手だ」を掲げ、日本全国から海外まであらゆる情報を網羅した陸上競技専門誌。トップ選手や強豪チームのトレーニング紹介や、連続写真を活用した技術解説などハウツーも充実。(一社)日本実業団連合、(公財)日本学生陸上競技連合、(公財)日本高体連陸上競技専門部、(公財)日本中体連陸上競技部の機関誌。

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