エイバルでの3年間は「人生最高」の日々 それでも乾貴士が移籍を決断した理由
リーガで初めて認められた日本人
エイバルでの3シーズンで、大きく成長した乾 【Getty Images】
3シーズン在籍したエイバルに別れを告げ、退団を発表した日本代表MF乾貴士。その年月は本人にとって、キャリアの中で最も充実した期間となった。自身が「昔からの夢だった」と話すリーガ・エスパニョーラでのプレー、バルセロナから奪った美しい2ゴール。定位置を確保し、監督のホセ・ルイス・メンディリバルからは「私の中で最も理想的な左サイドの選手は乾」と評価された。
結果的に2017−18シーズン後半、移籍先とうわさされるベティスとの対戦では、敵地での試合ながら地元ファンから大きな拍手を受けた。それはつまり、日本人が初めてリーガでのプレーを認められて、他クラブのファンから獲得を歓迎されるほどの評価を得た瞬間だったと言える。
しかし、ここまでの道は決して順風満帆ではなかった。日本トップクラスのテクニシャンで、最もリーガの水に合うだろうと予想されていた乾でさえ、加入1年目には「ああやっぱり、このレベルじゃ俺は無理なんかな」と思った時期もあったという。エイバルで過ごした3年間の充実、移籍に至るまでの心境の変化、そして自身が思い描く未来を、乾が語る。
乾が一生忘れられない光景とは
昨年4月のビジャレアル戦で決めたゴールは乾にとって大切なものに 【Getty Images】
まぁそれもありましたね。エイバルのユニホームを着て、(ホームスタジアムのムニシパル・デ・)イプルアに立つのはラストなので、ちょっと悲しい気持ちにもなりました。けれど、まずは試合に集中してやっていこうと思いました。
――胴上げの瞬間はどんな感じだったんですか?
ホンマに嫌だったんですよ。みんなのこと人としては信頼しているけれど、めちゃいたずら好きですから(笑)。(ゴンサロ・)エスカランテとか、まだヒリヒリするくらい昨日ツネってきたし。胴上げの時も、エスカランテとジョエル(・ロドリゲス)にずっといたずらされていたから、「早く降ろして」って思っていました。でもやっぱり、うれしかったですよ、もちろん。
――乾選手は常々、エイバルはすごく良いチームと話していますが、具体的にどこがいいところですか?
本当にみんな仲が良くて、それはスタッフ、選手、監督も含めて、本当に全員仲が良い。そういうチームは、過去のクラブと比べてもなかなかない。スペイン語をしゃべれない僕みたいな日本人に対しても、すごく良くしてくれますし、違う国籍の選手でも、みんなが良くする。それは、すべての人が見習わなければいけないことだと思うので、サッカー以外のところでも本当にいいチームだなと感じられるクラブですね。
――この3年間で一番うれしかったことは?
一番うれしかったのは、去年のビジャレアル戦で点を取った時かな。あれは映像を見て今でも泣きそうになるし、多分、一生忘れない。自分がずっと点を取れない中で苦しんでいて、励ましてくれた選手もいたし、冗談半分でからかってくる選手もいた。でも、そういうので元気をもらっていて、その中でゴールを決めた時、本当にみんなが喜んでくれた。ベンチでの映像も見ましたし、自分がいないところでああやって喜んでくれて、本当にあの光景は一生忘れられないですね。もう多分ね、あんなことはないと思うので(笑)。
――仮に入団したチームがエイバルじゃなかったら、今はないかもしれない?
それはそうかもしれないですね。その可能性は大きいんじゃないかって思います。