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相性の良いトラックで優勝を狙う山縣
新たな環境で復活へ歩み出した福島

悔しさの方が上回った昨シーズン

2年ぶりの織田記念国際で1位を取った山縣亮太。次は20日のゴールデンGP大阪での優勝を狙う
2年ぶりの織田記念国際で1位を取った山縣亮太。次は20日のゴールデンGP大阪での優勝を狙う【写真は共同】

 2年ぶりの織田記念国際陸上。故郷・広島のファンは、山縣亮太(セイコー)の快走を待っていてくれた。ゴールデンウィーク序盤の4月29日は快晴。エディオンスタジアムがある広島広域公園周辺の山は新緑にあふれ、色鮮やかなツツジの花がアクセントを添える。


 メインスタンドはほぼ満員の観衆で埋まり、この日の最終種目は男子100m決勝。10秒24(+1.7)に終わった予選から4時間後、山縣は「スタートで出遅れた」という予選の走りを短時間で修正し、10秒17(+1.3)でフィニッシュラインを駆け抜けた。同じリオデジャネイロ五輪4×100mリレー銀メダルメンバーのケンブリッジ飛鳥(Nike)を退けて、2年ぶりの優勝。「タイムは思っていたより悪かった」と、またも課題の残るレースになったが、何よりもジュニアの頃から出場していた織田記念で勝てたことがうれしい。地元のヒーロー・山縣には、スタンドから今大会一番の拍手と歓声が送られた。


 昨年は3月のオーストラリアのレースで10秒06、10秒08と好調なシーズンイン。しかし帰国後、足首に痛みが出て、織田記念のみならず春の試合は欠場続き。だからこそ、今年はケガをしないように細心の注意を払い、国内初戦を無事に走り終えたことが最大の収穫だった。


「冬季もスピードを落とさない練習が多くて、疲れが溜まってくると、それがケガにつながることが多かったんですけど、今は『もう1本行ける』とか『まだ練習できる』というボーダーラインを少しだけ下げて、『ここでやめておこうか』と判断するようにしているんです」


 だからといって、練習で攻めないわけではない。「ここはもう少し追い込もう」と思った時には、ギアを上げる。「そうやってはっきりと、メリハリをつけるようにしたところは、自分の中で新しい取り組みかもしれません」と山縣。昨年春のケガは結局、日本選手権の不調(10秒39で6位)につながり、ロンドン世界選手権の代表も逃すことになった。


「その悔しさの方が少し上回っているかな」と山縣は昨シーズンを振り返るものの、9月末の全日本実業団対抗選手権では10秒00の自己ベスト(日本歴代2位タイ)。その2週間前に桐生祥秀(当時・東洋大/現・日本生命)が9秒98の日本新記録を樹立し、狙っていた「日本人初の9秒台ランナー」の座は逸したが、「自分も遅れは取っていない」と思える会心のレースを見せた。前年の同大会で出した10秒03よりかなり良い走りだったようで、山縣は「今までにない加速感があって、中盤がよく伸びてくれた」と話した。


 そのレースのイメージを忘れないように、山縣は冬季もずっとスパイクを履いてスピード練習を続けてきた。中盤からスーッと伸びていく感覚を身体に染み込ませ、得意のスタートダッシュからつなげたい。


 織田記念のレース後、そのあたりの感覚は「まだまだですね」と、山縣は首をひねった。「自分が意識できないところの調整ができないと、アジア大会の代表になることは厳しい」と、納得していない。


 山縣が「反省点と収穫を次のレースにつなげたい」と話す次のレースが、5月20日のセイコーゴールデングランプリ大阪になる。舞台は10秒03、10秒00と2年続けて自己ベストを出した、大阪のヤンマースタジアム長居。


「今度は1本だけですから、その1本にしっかり合わせて、納得できるレースをしないと勝てません。日本人トップというより、理想は全体で1位。優勝したいですね」


 自社の冠大会ながら、昨年は欠場を余儀なくされた山縣が、相性の良いトラックでどんな走りを見せてくれるだろうか。

チームの後押しでシーズン序盤のレースに出場

新しい環境になり復活の兆しを見せる福島千里(左)。ゴールデンGP大阪で昨シーズンを早くも超えることができるか
新しい環境になり復活の兆しを見せる福島千里(左)。ゴールデンGP大阪で昨シーズンを早くも超えることができるか【写真は共同】

 4月29日の織田記念の女子100mから中3日置いての、静岡国際(5月3日)女子200m。国内のシーズンインとなる春の2連戦を終え、福島の表情はとても柔らかかった。心底ホッとした部分が大きかったのだろう。どちらも優勝して、100mが11秒42(+1.3)、200mは23秒35(+1.1)。自身の持つ日本記録(11秒21、22秒88)には遠く及ばないが、「今はこんなもの」と性急にタイムを求めていない。ただただ「無事に走り切れたこと」「勝負に勝てたこと」が、不安でいっぱいだった福島の心を穏やかにさせた。


 今はチームメイトとして練習や遠征を共にしている男子短距離の山縣が、シーズン前の福島の心情を慮った。


「織田記念は福島さんが日本記録を出された試合ですが、その後、脚のケイレンなどで何回も大変な思いをされている。さらに、今年はセイコーに入って1年目で別の緊張感もあったはず。そういったことが、体の不調につながることを懸念されたのではないでしょうか」


 確かに、エントリーの段階で、福島には織田記念を回避したい気持ちもあったようだ。しかし、チームのコーチや仲間が「のびのび走ってくれたらいい」と背中を押した。山縣は「またケイレンするんじゃないか」という不安を、「どこかで克服しないといけない」と思ったそうで、「今年は大丈夫」とチームの皆で福島の織田記念出場を後押しした理由を明かした。


 昨年は織田記念の100m予選で途中棄権しながらも、静岡国際の200mでは優勝(23秒91/−0.5)している。今年は予選で23秒50(−0.7)と、昨年のシーズンベスト23秒60を早くも上回り、決勝では「スタートから思い切って行く」戦略に出て、23秒35まで記録を縮めた。「最後の20mは本当に辛かったです」と顔をしかめる福島だが、2位の前山美優(新潟アルビレックスRC)に0秒45も差をつける圧勝は気持ちが良かっただろう。


 福島は「23秒前半で満足できるわけないので……」と、この日の走りに決して納得しているわけではない。ただ「ここからスタートできる」という、新たな課題と希望をもらえたことがうれしい。


「この冬は150mとか200mとか、結構長い距離を走って、その練習のデータの蓄積から、どう200mを走るのがいいかと考えたんですけど、その前に元々の100mのスピードが足りないということなんですよね」


 そう言って、福島は「100mのスピードアップ」を、今後の最大の課題に挙げた。そして、200mに向けては「205mまでしっかり走り切れるように、練習を積むこと」ときっぱり語る。


 6年連続で100m、200mの2冠を続けてきた日本選手権は、昨年両種目とも敗れ、「スプリント女王」の座をいよいよ後輩に明けわたしたかに見えた。ところが、環境を変えて再スタートを切った福島は、織田記念でも静岡国際でも後輩たちを寄せ付けずに勝って見せた。


 次は5月20日のセイコーゴールデングランプリ大阪。織田記念で出した11秒42を上回り、100mの昨シーズンのベスト(11秒36)をこの時期に更新できるようなら、復活への道は加速する。

月刊陸上競技
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