堂安律、充実のオランダ挑戦1年目 最終戦で感じた成長と周囲への感謝

中田徹

PSVとのシーズン最終戦で成長を実感

堂安はファーバー監督、チームメート、サポーターの信頼をつかみ、オランダ全国区の知名度を誇る選手へと成長 【Getty Images】

 5月6日に行われたフローニンゲンのシーズン最終戦の相手は、3週間前に優勝を決めたPSVだった。オランダ屈指の強豪相手のアウェーゲームということもあって、フローニンゲンの劣勢が予想された中、堂安のファーストタッチは開始7分が経ってからだった。

 チームの冬の不振期にも、堂安はキックオフから5分、10分が経ってから、ようやくファーストタッチを記録することが多々あった。ボールに触れなくても我慢し続け、まずはタスクをしっかりこなし、少ないチャンスで見せ場を作ったりゴールを決めたりする――。その積み重ねで堂安はアーネスト・ファーバー監督、チームメート、サポーターの信頼をつかみ、やがてオランダ全国区の知名度を誇る選手になっていった。

 今季、28試合に出場した経験は、多くのものを堂安に与えたはずだ。PSV戦で感じたのは“ゲームを読む目”だ。PSVにボールを回されて自陣に押し込まれても、ゲームの流れに逆らうことなく、やるべきことに集中する。味方からパスが来なければ、相手ボールを奪うまで。前半はシンプルなプレーとスプリントを繰り返し、後半に入ったら右サイドからジャブを入れ、徐々に危険なゾーンへの侵入を増やしていった。ノーゴールに終わったものの、PSV戦の堂安はしっかりと90分間のセルフマネジメントを見せたと思う。

「今日は、すごく(成長を)感じられた試合でした。特に後半の最後の30分間、前を向いた時に怖いところに入っていけた。魅せるプレーはあまりありませんでしたが、DFの背後を取ったりとか、相手にとって嫌なプレーができていたので良かったと思います」

「律に預けると何とかしてくれる」という雰囲気

「律に預けると何とかしてくれる」という雰囲気を感じるという堂安。PSV戦でもいい働きを見せた 【Getty Images】

 目標としたリーグ戦10ゴールには1つ届かなかったが、今季の堂安は9ゴール4アシスト、そしてPSV戦でイエローカードが1枚出て警告3、出場時間2295分という結果を残した。

「オランダリーグは若い選手にチャンスを与えてくれる。そうしたチャンスの中で、自分が結果を残せた自身があります。結果を残した分、特にラスト20分になるとチームが『律に預けるとなんとかしてくれる』という雰囲気がありますし、監督の『律、律』という声が聞こえてくる」

 昨年10月下旬のことだった。スパルタとのアウェーゲームの後、堂安がロッカールームから一目散にチームバスに乗り込んで、インタビュールームに姿を現さないことがあった。この時期の堂安は、チームの主力選手の指定席だった座席を奪うため、隠れた競争を戦っていたのだ。足を伸ばせる特等席に座る堂安に、周りはいろいろ言ってきたらしいが、「英語が分からないフリをした」という。

「今はもう、俺がずっと試合後のインタビューに答えていても、席は空いていますよ(笑)」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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