堂安律、充実のオランダ挑戦1年目 最終戦で感じた成長と周囲への感謝
PSVとのシーズン最終戦で成長を実感
堂安はファーバー監督、チームメート、サポーターの信頼をつかみ、オランダ全国区の知名度を誇る選手へと成長 【Getty Images】
チームの冬の不振期にも、堂安はキックオフから5分、10分が経ってから、ようやくファーストタッチを記録することが多々あった。ボールに触れなくても我慢し続け、まずはタスクをしっかりこなし、少ないチャンスで見せ場を作ったりゴールを決めたりする――。その積み重ねで堂安はアーネスト・ファーバー監督、チームメート、サポーターの信頼をつかみ、やがてオランダ全国区の知名度を誇る選手になっていった。
今季、28試合に出場した経験は、多くのものを堂安に与えたはずだ。PSV戦で感じたのは“ゲームを読む目”だ。PSVにボールを回されて自陣に押し込まれても、ゲームの流れに逆らうことなく、やるべきことに集中する。味方からパスが来なければ、相手ボールを奪うまで。前半はシンプルなプレーとスプリントを繰り返し、後半に入ったら右サイドからジャブを入れ、徐々に危険なゾーンへの侵入を増やしていった。ノーゴールに終わったものの、PSV戦の堂安はしっかりと90分間のセルフマネジメントを見せたと思う。
「今日は、すごく(成長を)感じられた試合でした。特に後半の最後の30分間、前を向いた時に怖いところに入っていけた。魅せるプレーはあまりありませんでしたが、DFの背後を取ったりとか、相手にとって嫌なプレーができていたので良かったと思います」
「律に預けると何とかしてくれる」という雰囲気
「律に預けると何とかしてくれる」という雰囲気を感じるという堂安。PSV戦でもいい働きを見せた 【Getty Images】
「オランダリーグは若い選手にチャンスを与えてくれる。そうしたチャンスの中で、自分が結果を残せた自身があります。結果を残した分、特にラスト20分になるとチームが『律に預けるとなんとかしてくれる』という雰囲気がありますし、監督の『律、律』という声が聞こえてくる」
昨年10月下旬のことだった。スパルタとのアウェーゲームの後、堂安がロッカールームから一目散にチームバスに乗り込んで、インタビュールームに姿を現さないことがあった。この時期の堂安は、チームの主力選手の指定席だった座席を奪うため、隠れた競争を戦っていたのだ。足を伸ばせる特等席に座る堂安に、周りはいろいろ言ってきたらしいが、「英語が分からないフリをした」という。
「今はもう、俺がずっと試合後のインタビューに答えていても、席は空いていますよ(笑)」