本田を想起させた堂安のスーパーゴール 代表落ちも「しっかり結果を出すのみ」

中田徹

オランダ人に堂安律の名前が深く刻まれる

AZ戦の83分、堂安律は20メートルほどの強烈なミドルシュートを決めてゲームを2−2のタイに戻した 【Getty Images】

 3月18日に行われたAZ対フローニンゲン、83分に堂安律が20メートルほどの強烈なミドルシュートを決めてゲームを2−2のタイにすると、隣に座ったオランダ全国紙の記者が思わず叫んだ。

「すごい選手だ。これで日本代表じゃないの!?」

 フローニンゲンが0−2と劣勢に立たされていた70分、堂安は反撃の狼煙(のろし)をあげるアシストも記録した。

 戦前、対戦相手AZのGKマルコ・ビゾット、MFフース・ティル、FWワウト・ウェフホルストは、初めてオランダ代表に選出されて注目を集めていた。イラン代表のFWアリゼラ・ヤハンバクシュ、右サイドバックのヨナス・スベンソン(ノルウェー代表)も素晴らしいプレーで3−2の勝利に貢献した。しかし、試合後、繰り返しテレビで流されたのは、ビゾットの指をかすめてネットを揺らした堂安のスーパーゴール。オランダ人に堂安律の名前が深く刻まれた試合になった。

 堂安は、オランダテレビ局NOSに対して「以前、本田圭佑選手の得点シーンを僕は日本で見たことがある。(自分のゴールも)そうなればいいと思います」と語った。夜7時からのサッカー番組では字幕のみ付けたが、夜10時すぎからの番組では、このインタビューに、本田圭佑が2009年8月にユトレヒト戦で決めた弾丸シュートの映像をかぶせていた。

反省を生かし、ハードワークと創造性が共存

この日、堂安のボールタッチは少なかったが、試合から消えている感じがしないのは守備での頑張り、相手への威圧感があるからだろう 【Getty Images】

 私もまた、堂安がゴールを決めた瞬間、頭の中が8年あまり前にタイムスリップし、本田のスーパーゴールを思い出していた。それほど、堂安のゴールも、本田のゴールも、左足のパンチが効いた強烈なものだった。

 本田のゴールのほうが、やや距離があり、角度も左側で、スピードを落とさぬままダイアナゴルに飛んでいったシュートだった。打つ前から「俺がゴールを決めてやる」という舌なめずりが観客席に伝わってくるようだった。

 堂安のゴールは、守備を固めた相手に囲まれていた中、意表を突いたものだった。ゴール片隅に狙ったコントロールも絶妙だった。

「(スペースが)狭かったですけれど(打った)。最近、監督からずっと『良い左足を持っているんだから、もっとシュートを打て』と言われていた。前半に関してはシュートがゼロだった。後半は仕掛ける場面が増えてきたから、狙っていこうという気持ちが、ああいうのを生んだと思います。でも、あんまりスピードはなかったですよね。ちょっと遅くなかったですか?(笑)」

 AZ戦、堂安のボールタッチは少なかった。後半、パス成功は10本足らずだった。それでも、試合から消えている感じがしないのは守備での頑張り、そして相手に対して与える威圧感があるからだろう。

 今から1カ月前、2月16日のVVV戦で貴重な同点ゴールを決めた堂安だったが、「試合から消えている時間が長い。そこが反省点」と言っていた。すると、翌23日のNAC戦から堂安の守備での貢献度が増していき、ハードワークとクリエーティビティーが共存するプレーヤーになっていった。

 AZ戦後半のパフォーマンスを堂安はこう振り返る。

「正直、タッチは少ないと思っていますけれど、ゲームに入れていない感じがあまりない。ずっとゲームに関与しながらファイトしながら、チームメートを引きつれる動きもできている。自分がずっとボールを触る意識ではなく、周りのためとか関与しているから、あんまり後半はそんなに触れていないというイメージですね」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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