今季のラ・リーガは「退屈」だったのか 3強のシーズン評価をめぐる不毛な論争

バルサ、国王杯に続いてラ・リーガも王手

国王杯で優勝を果たしたバルサは、リーグとの2冠が目の前 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 未消化分のビジャレアル戦を含めた5試合を残し、バルセロナは今週末にリアソールでデポルティーボと対戦する前の時点で、リーグ優勝を決める可能性がある。そのためには、バルサよりも先に試合が行われる2位のアトレティコ・マドリーと3位のレアル・マドリーが共に引き分け以下に終わる必要がある。

 長らくバルセロナとレアル・マドリーによる独占状態が続いてきたラ・リーガでは、数年前からアトレティコ・マドリーを加えた三つ巴の優勝争いが繰り広げられるようになった。だが今季はエルネスト・バルベルデ率いるバルセロナが実質的にシーズンを通して首位を独走し続けている。

 レアル・マドリーは開幕当初から相性の良いチャンピオンズリーグ(CL)を最優先した戦いに徹し、全てのコンペティションでタイトルを狙いにいくことを早々に断念した。アトレティコはラ・リーガで2位の座をしっかり維持してきたが、バルセロナにタイトルを受け渡しても、宿敵レアル・マドリーより上の順位で終われれば良いと考えている印象がある。

マドリーのメディアが仕掛ける「不毛な論争」

現地時間5月6日には今季最後となるクラシコが控えている 【Getty Images】

 このような状況下、とりわけ首都マドリーのメディアは不毛な論争をあおり立てている。早々に勝者が決まった今季のラ・リーガはあまりにも退屈で、価値の薄いものではないか。それが彼らの主張である。

 スペインフットボールとピッチ外の論争は切っても切れない関係にある。今回も首都マドリーのメディアはバルセロナのラ・リーガ優勝から人々の関心をそらすべく、あたかもそれが唯一の価値あるタイトルであるかのように、CL制覇こそ何よりも重要なのだと繰り返し主張している。

 ラ・リーガとコパ・デル・レイ(国王杯)の2冠を手にしたバルセロナと、ラ・リーガは3位ながらCLで準決勝に勝ち残っているレアル・マドリー。両チームの現状を比較し、自分ならどちらの立場を取るか想像させることで、ビッグイヤー(CLの優勝トロフィー)への渇望をあおる論者もいる。

 だが、アトレティコが最後まで首位争いに踏みとどまれなかったことも、レアル・マドリーが早々にタイトルレースから脱落してしまったことも、バルセロナに責任がないことは確かだ。いずれにせよ、バルセロナが独走したからラ・リーガが退屈であるという主張は、敗者の側が自己批判をする代わりにでっち上げた言い訳にすぎない。

 確かに、CLはラ・リーガや国王杯よりハイレベルなコンペティションかもしれない。しかし、1シーズンに国内のタイトルを2つ獲得することにだって大きな価値がある。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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