今さら聞けないバスケのルール 緻密なスポーツの醍醐味を今から知ろう!

大島和人

終盤にタイムアウトが頻発する理由

試合終盤になるとタイムアウトが頻発する。デザインされたプレーの確認だけでなく、さまざまな駆け引きが詰め込まれている 【(C)B.LEAGUE】

 バスケは妙に劇的な展開が多い競技で、醍醐味は残り3分、残り1分といった土壇場の攻防だ。そこにはいろいろな駆け引きが詰め込まれる。接戦の終盤はタイムアウトが増え、点差によっては守備側があえてファウルで試合を止めることもある。相手のフリースローが失敗に終わることは当然あるし、リードされていれば自分たちの攻撃時間を確保することが最優先になるからだ。

 ファウルゲームの成功例として忘れられないのは、10年4月12日のJBL(ジャパンバスケットボールリーグ)プレーオフ決勝第3戦。栃木が「残り14秒で5点差を追う」状況からファウルゲームを仕掛けて、逆転勝利を挙げている。

 それぞれのチームが1Qに5個以上のパーソナルファウルを犯すと、シュートへのファウルでなくても、ファウルを受けた選手にフリースローが与えられる。なお各Qが終わればチームファウルのカウントはリセットされる。

 ただし選手は1試合に5ファウルで退場になる。逆に言うと5つまではファウルができる。バスケは「いつ、どういう状況でファウルをするか」がシビアに問われる競技で、守備側は相手の「得点期待値」を下げるためにファウルを戦略的に活用する。

 控え選手が相手のエース級と対峙する場合は、短いプレータイムで立て続けにファウルを犯してもチームのマイナスにならない。相手がのってしまいそうな、絶妙なタイミングでファウルをすることも大切な戦術だ。例えばB1最多のファウル数を記録している桜井良太(レバンガ北海道)は、「チームのためになるファウル」ができる知的な選手でもある。

 一方でチームの得点源、エースが第1Qから2つ、3つと安易にファウルをすることは禁物だ。その後のプレーがどうしてもソフトになってしまうし、相手もそれを織り込んでその選手にファウルさせるようなアタックを狙ってくるからだ。

褒められるファウルもあればその逆も

コート上には3人の審判がおり、「ファウルの見逃し」は起こりにくい 【(C)B.LEAGUE】

 バスケは緻密なスポーツで、時間はもちろん、選手やチームが犯したファウルの数をテーブルオフィシャルがしっかり記録している。またBリーグならコート上に3人の審判がいて、コートも狭く、サッカーやラグビーに比べると「ファウルの見逃し」は起こりにくい。サッカーのシミュレーションに相当する「フロッピング」の反則はあるが、実戦ではあまり見ない。

 もっとも本当に危険な、悪質なファウルはより重い「罰」が科せられる。パーソナルファウルの中でも悪質なものは「アンスポーツマンライク・ファウル」(アンスポ)を取られ、プレイヤーはこれを1試合に2度犯すと退場(失格)処分となる。アンスポはシュート動作以外に対するものであっても相手に2本のフリースローが与えられる。通常のファウルと逆で、その成否にかかわらず「ファウルを受けた側」のスローインでゲームが再開される。

 ディスクォリファイング・ファウルはより悪質な、いわゆる一発退場となるプレーだ。フリースローに関する扱いはテクニカル・ファウルやアンスポと同様となる。通常の5ファウルと違い、アンスポやディスクォリファイング・ファウルによる失格は出場停止処分もある。これを犯した選手が褒められることはない。

 審判への抗議、相手チームに対する暴言や挑発などによる「テクニカル・ファウル」の反則もある。これも相手のフリースローが与えられ、フリースローを投じた側のスローインでゲームが再開される。

 どんな説明よりも雄弁なのは実際のプレーを見て、喜怒哀楽とともに心へ刻み付ける経験だろう。バスケはルールを知らなくても楽しめて、ルールを深く知ればさらに楽しめるスポーツだ。今までBリーグと縁が無かった皆さんにも、2017−18シーズンの終盤戦、チャンピオンシップやプレーオフをぜひチェックしてほしい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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