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脱・マイナーを目指しバスケ界を先導する
"やんちゃキャラ"ジェッツのビジネス戦略
株式会社千葉ジェッツふなばしが、日本スポーツビジネス大賞のライジングスター賞に輝いた
株式会社千葉ジェッツふなばしが、日本スポーツビジネス大賞のライジングスター賞に輝いた【写真:魚住貴弘】

 2018年3月、日本のスポーツビジネスのさらなる発展に貢献する狙いで誕生した「日本スポーツビジネス大賞」。第1回となる今年、独自の創意工夫や新規性が認められ、今後ますますの成長が期待される「ライジングスター賞」を受賞したのが「株式会社千葉ジェッツふなばし」である。昨年度、売上高9億円超、年間観客動員数13万5097人(平均観客動員4503人)、Twitterフォロワー12.7万人超(2018年3月現在)と、2016年に開幕したBリーグをけん引するトップクラスのビジネス実績を誇り、今年度は、それをさらに上回る数値実績で推移する(売上高12億円超、年間観客動員数15万人想定)。同社代表取締役社長を務める島田慎二氏にこれまでの苦労と手応えを伺いながら、その経営哲学に迫った。

利益にこだわり固定概念にとらわれない脱・マイナースポーツ戦略

受賞インタビューに応える千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役社長
受賞インタビューに応える千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役社長【写真:魚住貴弘】

――日本スポーツビジネス大賞、ライジングスター賞おめでとうございます。


島田: どうもありがとうございます。大変光栄です。


――千葉ジェッツのクラブ経営はメディア等でも高い注目を集めています。ビジネス面の好結果をどのように自己評価されていますか。


島田: 売上が年間8000万円程度の実力だった頃、3年で琉球ゴールデンキングスの3億円を抜き、5年で栃木ブレックスの5.5億円を抜くという目標を掲げ、これを実現できました。ぜいたくを言えば、もう1年くらい早いスピード感で達成したかったというのが本音ですが、現在では12億を超えているように、ほぼ想定通りに成長できていると感じます。


 スポーツビジネスといえども、あくまでビジネス。そのことに主眼を置き、ビジネスに注力してきたことが、経営の好結果につながっていると思っています。いい商品を作り、正しい顧客に対してきちんと売り、その後のアフターケアなどのサービスを充実させ、そしてそれをまた経営に生かす。そんな当たり前のPDCA(計画・実行・評価・改善)を徹底してきた結果だと思います。


――経営する上で心掛けていることはありますか。


島田: 私が社長に就任した6年前は、クラブは経営不振の状況でした。クラブスタッフの中に、野球やサッカーなどに代表される「スポーツビジネスとはこういうもの」というスポーツ業界特有の常識のような固定概念がはびこっていたように記憶しています。このような内的要因が最初のハードルで、スタッフ全体の意識、発想の転換が必要でした。


「固定概念にとらわれない」は現在の会社の行動指針でもあります。マンネリにならないように、経営の質を高めるために、経営面も演出面もつねに新しいものを取り入れ、チャレンジすることを強く意識しています。


 企業は利益を上げ続けなければいけません。私は「1回でも赤字を出したら、その期で退任する」と言ってきました。毎年黒字を出す、利益を出す、結果を出す。これは、選手年俸やスタッフの給料を上げていくためにも当然のことですし、経営者の責務です。黒字にすることや、目標に定めた観客動員を達成することなど、数字にこだわるところは、クラブのアイデンティティーです。


 バスケットボールはまだまだマイナーなスポーツです。しかし、観客動員が少ない、事業規模が小さい、メディアに取り上げられない……などを稼げない言い訳にしていたのでは、マイナースポーツは一生稼げません。ニーズに合う人を見つけて、しっかり売る。このゼロをイチにすることができれば、投資できる対象になるはずだと考えてきました。

“やんちゃキャラ”という個性を際立たせるブランディング

千葉ジェッツの観客動員数はBリーグで断トツのトップを誇る
千葉ジェッツの観客動員数はBリーグで断トツのトップを誇る【Getty Images】

――ゼロイチにするための具体的な戦略は。


島田: 私は、スポーツビジネス関連の書籍などを読んだこともないので、そもそも何がこの業界の常識なのかは正直なところよく分かりません。ただ、よく聞いたのが「味方を作るより敵を作らないほうが良い」というような言葉でした。スポーツは公共財だから、汎用性の高い経営をしたほうがいい、というわけです。


 しかし私は、逆だと思っていました。バスケットボールのアリーナは、5000人で満員にできる。徹底的にキャラを際立たせて、個性を出す、というスタンス。ジェッツを好きな人はとことん大好き、嫌いな人は大嫌いでもいいと(笑)。そういう生き方を選択してやってきました。


 バスケットのチームはどこもキャラが薄いと感じていました。例えて言うなら、クラス全員がおとなしい教室、というイメージ。だからジェッツは、修学旅行のバスの中で一番後ろに座っているように、クラスで一番“やんちゃなキャラ”でいようと。認知してもらうために、チャレンジャーという生き様を見せて目立つ。これが私たちのブランディング戦略です。


 マリーンズ(プロ野球)やジェフ(Jリーグ)と同様に、観客動員が何人で看板がいくらですと商売をしても、バスケットの規模の小ささが目立つだけ。マイナースポーツだからこそ、バスケット界でタブーとされていることへのチャレンジを戦略的に仕掛けていこうと心がけました。bjリーグで初めて天皇杯に出た。bjリーグからNBLにリーグを変えた。リーグを変えた際には、打倒・トヨタ(現・アルバルク東京)を掲げました。


 かつて私もベンチャー企業の創業者でした。「いつか上場したい」と思ってやっていましたから、日本の上場企業の頂点であるトヨタを打ち負かすというアリが巨象に向かうような構図は、地域のベンチャー企業の経営者が感情移入できるはずだと考えました。「こういうチャレンジをしていきます」とか「こういう視点でビジネスを展開していきます」というストーリーに投資をしてもらうことで、将来「このクラブを育てたのは私だ」と皆さんに思ってもらえるようになる。それがジェッツのスポンサー営業であり、ゼロイチの戦略でした。


――経営を進めていく上で、スポーツビジネス特有の難しさを感じたところは。


島田: とにかく、ステークホルダーが多いことですね。経営経験の多い社長が多くない中で、利害関係者が多岐にわたる環境こそ、多くのクラブがビジネスとして成熟し切れない最大の要因だろうと思いました。しかし裏を返せば、ここさえクリアできれば、ブレークスルーできるとも感じていました。


 多くのステークホルダーに対して幅広く対応するためには、人が必要です。しかし、リソースが少ないバスケット界でそれを実現しようとすれば、中途半端になり墓穴を掘ることになる。だったら、最初から仕掛けない。「ごめんなさい。今は力不足で、ここまでしかできません。力がついた時にお願いします」と正直に申し上げ、できることに集中しようと。いわば断捨離、「捨てる」ことを意識しました。


――その際の優先順位の付け方は。


島田: 数字に直結するかどうかです。売上もしかり、集客もしかり。お金や人の数、そこに直結するものから取り組みました。行政に代表されるように長きにわたって関係構築していくところもありますが、まずは、数字の即効性があることについて優先順位を高くして進めました。資金を集め、人を増やし、少しずつ対応する領域を広げていった。その結果、スタッフも現在では20人以上になり、全方位に対応できるようになりつつあります。

クラブの経営が良くなり続けることが唯一無二の成長戦略

天皇杯を連覇し、選手、スタッフ、ファンらと記念撮影
天皇杯を連覇し、選手、スタッフ、ファンらと記念撮影【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――クラブスタッフも増えているようですが、意識していることは。


島田: 力をつけて結果を出すしかないと思っています。説得力のあるリーダーは、「何を言うか」ではなく、「誰が言うか」。自分が際立ってくれば、「この人とやりたい」という人が出てきます。結果的に経済力が高まれば、やりがいも感じますし、コミットメントも強まります。ですから、私が経営者として成長し、ジェッツを成長させていく、ということを強く意識しています。


 クラブの中は、明るくて自由な雰囲気で、スタッフからもいろいろなアイデアが出てきます。ただ、彼らが「やりたい」ということは聞きません。「あれをやったほうがいい」「これをやるべき」かどうかが経営判断の軸。「したい」ではなく、「べき」かどうか。スタッフ側の視点ではなく、顧客側の視点を重視しています。


――天皇杯2連覇などチーム力も高まっています。選手たちとの関係は。


島田: 選手と事業の関係もおおむね良好だと思います。ファンやスポンサーなどの支えがあって成り立っていることは常日頃よく言っていますので、選手たちも概念をよく理解して、気持ち良くさまざま協力してくれる選手が多いです。


 経営成績が良くなっていることは選手たちも感じています。例えば、遠征の移動の際の飛行機や新幹線の座席クラスが良くなり、ホテルのランクが良くなり、練習場の環境が良くなり、観客が増え、選手年俸も上がる。こうした変化は、事業サイドの好結果が結びついていることは彼らも分かりますよね。だからこそ、選手たちがジェッツでプレーしたい、ここで結果を残したいと思ってくれる。


 ですから、顧客を意識し、経営側が力をつけることが究極の社員教育だと思います。育てた選手を外に出さないようにすることも、クラブスタッフの離職率を下げることも、経営力に尽きます。今後、こういう環境を当たり前だと感じる選手たちが増えてくる可能性もありますが、この点についてもクラブの経営が良くなり続けることが唯一無二の成長戦略であり、選手や社員教育に最大の効果を発揮すると思っています。


――今後の期待や課題を教えてください。


島田: 追われる立場より、やはり追う立場の方が強いと思いますので、私たちが何を目標にするのかが課題です。アリーナは常に満員、クラブの売上はリーグトップクラスを誇り、チームは天皇杯を連覇できた。こうしたことに対する慢心やおごりが最大の敵。業界のトップにいると、大企業病のようなものが生まれやすくなりますが、「日本のバスケット界でトップだからといって全く誇れるわけではない」と、常に危機感を持っています。


 成し遂げていないリーグチャンピオンを目指すとともに、ジェッツのチケットが即完売になり、さらにはチケットの単価が多少高くなっても売り切れる、そういう世界観をつくっていきたいですね。


 私が社長になって6年。正直なところまだまだ私依存の状況がありますので、あと数年で後継を育て、100年続くクラブの礎を築きたいと思っています。

日本スポーツビジネス大賞実行委員会

「日本スポーツビジネス大賞」は、スポーツビジネスにおける素晴らしい取り組みを行い、年間を通して著しい成果を挙げたクラブ・企業・団体等を表彰する企画。こうした事例にスポットライトを当てることで、分野横断的に学び合い、日本のスポーツ界のさらなる発展に貢献することを目的とする。2017年、川淵三郎氏を発起人代表として発足、実行委員会が事務運営を行う。第2回となる2018年度表彰は、初年度同様、株式会社楽天野球団元社長で株式会社USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長COOの島田亨氏を審査委員長に迎え、スポーツナビの創業者であり現在はヤフー株式会社常務執行役員コーポレートグループ長、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事の本間浩輔氏、株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役、一般社団法人スポーツビジネスアカデミー代表理事、全日本野球協会理事の荒木重雄氏、欧州サッカー協会マーケティング代理店「TEAMマーケティング」Head of APAC Sales、Jリーグアドバイザーの岡部恭英氏、と各方面でスポーツビジネス業界をリードする識者が審査委員会を構成し、審査を行った。

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