Bリーグが築き上げたオールスターの価値 熊本に笑顔を届けた2年目の「夢の祭典」

大島和人

熊本に用意された夢空間

チケット発売開始後わずか2分で完売となったBリーグオールスター。熊本でも夢空間が広がっていた 【素材提供:(C)B.LEAGUE】

 オールスターとは何のためのイベントなのだろう。ハイレベルの追求ならば、連係をしっかり構築したクラブチームの試合でいい。お金を稼ぐためならば、もっと大きな会場で開催しつつ、演出の「原価」を抑えるべきだろう。

 でもオールスターには違う意味、価値がある――。そんなことを考えさせられた、熊本の楽しいひと時だった。

 2016−17シーズンのBリーグオールスターは東京の代々木第一体育館で行われたが、2季目の今回は熊本県総合体育館で開催された。この会場はB2熊本ヴォルターズのホームアリーナでもある。

 熊本は16年4月に2度の大きな地震に見舞われた。今も4万人を超す人が家を失ったまま、仮設住宅などで生活をしている。Bリーグは同年8月に代々木第二体育館でチャリティーマッチを行ったが、今回はオールスターを現地で開催することになった。当然ながら復興支援という狙いを込めた選択だ。

 試合は1月14日だったが、13日には震災で特に大きな被害を受けた益城町と、17年7月に豪雨災害に見舞われた福岡県朝倉市の2カ所で、出場選手による支援活動も行われている。

 熊本側の歓迎ムードも強く感じさせられるオールスターだった。熊本空港、目抜き通りにある鶴屋百貨店などには大一番の告知ポスターが大きく張り出され、華やぎを発信していた。

 観客数は3242名にとどまったが、一般発売のチケットは売り出しからわずか2分で完売。実際に試合開始2時間以上前から、スタンドは満席状態だった。四隅に設置されたビジョン、コートに映し出される照明はBリーグが全力を尽くしたことが伺える夢空間仕様。華やかさと遊び心の詰まった、オールスター戦にふさわしい環境が用意されていた。

レジェンドが作り出した空気感

アンバサダーとして参加していた折茂だったが、コールに押されてスリーポイントコンテストに出場する一幕も 【素材提供:(C)B.LEAGUE】

 試合前のスリーポイントコンテストで場内が沸いたのは折茂武彦(レバンガ北海道)のサプライズ出場。47歳の「レジェンド」として名高い彼は、B1の現役プロ選手ながらBリーグの理事でもあり、今オールスターはアンバサダーとして参加していた。しかし場内の「折茂コール」にあおられてコート上でネクタイを外し、白いシャツを脱ぐと、その下には黄緑色のレバンガのユニホーム……。

 ただ、さしもの天才シューターも今回はオールスターの雰囲気にのまれ、1本目から外し続けて4点(満点は30点)にとどまった。お祭りの盛り上がり、観客の熱いリアクションを敵に回すと厳しい。

 スリーポイントコンテストは岡田優介(京都ハンナリーズ)が制した。岡田は19点分のシュートを決め、前回王者・田口成浩(秋田ノーザンハピネッツ)の追撃を1点差でかわした。

 岡田は「折茂さんがいい具合に温めてくれた。最初に入ると気がラクになる。でも外すとため息が聞こえてこれがプレッシャーになるんですよ」と説明する。会計士の資格を持つ知性派の彼でも、場内の空気にプレーを左右される。それがバスケットボール、シューティングの面白さだ。

 ダンクコンテストは昨年に続いてアイラ・ブラウン(琉球ゴールデンキングス)が優勝。ボールをコートに1バウンドさせてバックボードに当て、それを高い跳躍力とパワーを見せつけつつたたき込む「1人アリウープ」を披露した。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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