土台を作ってアベレージを上げていく 女子やり投・長麻尋インタビュー
「ダイヤモンドアスリート」第4期の選手である女子やり投の長麻尋にインタビュー 【写真は共同】
すでに3期が終了し、これまで9人が修了。昨年11月からは継続・新規含め全11人が認定され、第4期がスタートした。今回は第4期となる「17−18認定アスリート」へのインタビューを行い、女子やり投の長麻尋(和歌山北高卒、国士舘大)に話を聞いた。
取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)
ピッチャーだった小学生時代
はい。小学校1年から6年まで、少年野球でピッチャーをやっていました。
――それは、野球をやっていたお父さんやお兄さんの影響ですか? お2人とも、強豪校の主将として甲子園にも出場しています。
そうですね。小さいときから兄にくっついて練習や試合を見に行っていて、ずっと自分もやりたいと思っていました。
――野球少女が中学から陸上部に入ったのはどんなきっかけですか?
「和歌山県ゴールデンキッズ発掘プロジェクト」というプロジェクト(※和歌山県教育委員会が行っている運動能力の高い小学生に専門家による育成プログラムを実施する事業)があって、テストを受けて選ばれるのですが、私はそこにも入っていて、野球と並行してやっていました。そこにいた伊丹大輔先生が陸上の先生で、私が行く中学校にちょうど赴任することになり、「投てきをやってみないか」と誘ってくださったのがきっかけです。私は、中学でも野球をしたかったのですが、「女子がやるのは難しいかな、野球以外だったら何をやろうかな」と悩んでいたところだったので、陸上をやってみることにしました。
――中学で投てきをやるとなると砲丸投ですが、野球の「投げる」とはかなり違いますよね?
はい。違ったので、砲丸もつい投げるような感じになっていましたね。あと、砲丸投と一緒にジャベリックスロー(やり投に取り組む前段階として、中学生年代で実施されている投てき種目)をやっていました。
――練習自体も野球と陸上とでは違っていたのではないですか?
「陸上部」というと走るイメージしかなくて、でも私は投げることしかできず、走るのはすごく苦手だったので、最初はついていけるか不安でした。ですが、個人競技だけど練習はチームのみんなと一緒だったので楽しくて、それに投げることが好きだったので、砲丸投やジャベリックスローの練習はすごく楽しかったです。
――中学3年のときに全日本中学校選手権は砲丸投で出場しています。また、ジャベリックスローはジュニアオリンピックで5位。それが初の全国大会入賞でしょうか?
はい。この種目には中2のときも出ていたのですが、そのときは全然ダメでした(15位)。そのとき、「来年勝負しよう」と思っていました。中学3年のときは1投目でベスト(48メートル36)が出て、トップ8には絶対に残りたいなと思っていたので、もうそれで十分かなと思ってしまいました。
高校から本格的に取り組んだやり投で急成長
実は、陸上は中学でやめようと思っていました。でも、中3になって全中に出たり、ジュニアオリンピックで入賞ができたりするようになったこともあり、和歌山北高の顧問の森下康士先生が声をかけてくださったこともあって、「やってみようかな」という気持ちになりました。
――やり投はジャベリックスローとはまた違いますよね? 中学のころから練習はやっていたのですか?
練習はやっていました。最初は難しかったのですが、中学の間にちゃんとまっすぐ飛ぶようになっていたので、投げるのが楽しくなっていました。
――高校1年ですぐにインターハイや国体にも出場でき、秋には日本ユース選手権(現U18日本選手権)で49メートル96を投げて2位の成績を収めました。この結果については?
思っていた以上の結果でした。試合中、ずっと緊張していた記憶があります。
――12月には高1歴代2位となる50メートル67まで記録を伸ばしました。初の50メートル台ですよね。投げたときは、どんな感じでしたか?
うまく表現できないのですが、49メートル台と50メートル台では何か違う気がしました。
――それはやりが飛んでいくのを見ていてですか? それとも振り切ったときの体の感覚が違ったから?
投げてからですね。やりが飛んでいくのを見たときに感じました。
――高校2年になってからは、いきなりアジアジュニア選手権の代表に選出されました。ベトナムのホーチミンで行われました。
初めての日本代表でしたし、海外へ行くこと自体が初めてで。言葉のこととか不安が大きかったのですが、いざ行ってみたら、日本とは全然雰囲気が違っていて、「え、これで大丈夫なのかな?」という感じで(笑)。そのおかげで試合のときは気持ちが楽になりました。
――インターハイでは高2最高の56メートル48をマークして優勝。高校歴代でも6位となる好記録です。56メートル48は、どんな感触だったのですか?
助走から全部がスムーズに行って、気持ちよく投げられた感じはありました。でも、自分ではそこまで行っていると思っていなかったんです。
――「スムーズに行った」以外に、何か「こうだった」という記憶は?
試合での1投1投の感じ、いつも私、よく覚えていなくて……(笑)。
――集中していたということですね。
はい。何か気持ちがすごく楽でした。全然緊張していなくて、あんなに緊張しなかったのは初めてでした。自分の世界に入っていたという感じでしたね。
――なぜ、そのときは緊張せずに臨めたのでしょうか?
「とりあえず楽しもう」と、ずっと思っていました。記録もそれほどこだわっていなくて、でも1投目からいい感じで上がってきていて。ベスト8にも1番で進んでいたので、気持ち的に楽だったのかもしれません。(優勝記録の56メートル48をマークした)6投目を投げるときも、優勝が決まった状態で投げることができましたから。