バドミントン界も"エンタメ改革"スタート 新大会トップ4の演出はどうだった?

平野貴也

多忙なトップ選手たち 日程面などに課題

暗転した会場で行われる試合。光の演出で華やかさも 【主催者提供】

 一方で、演出とは別に、日本バドミントン界が抱える問題が露呈した一面もあった。大会に参加した日本代表の多くが20日に全英オープンから帰国したばかりで、月末には代表合宿を控えるという日程の中、選手のコンディション維持が困難なのは明らか。何人かの主力選手は負傷状況などを考慮して出場を見送った。出場した選手は責任感を示してハイレベルな攻防を見せたが、トップパフォーマンスを引き出せる状態でなかったことは否めない。
 BWFワールドツアーで、どの大会も終盤まで勝つようになった日本のトップ選手たちは、国際大会だけでも多忙となった。声高に主張はしないが、名誉や賞金面でも国内大会にモチベーションを保つことが容易でなくなっている(S/Jリーグのほかに、全日本実業団大会や全日本総合選手権などに出場)。今回行われたトップ4トーナメントは来季、S/Jリーグのプレーオフとして活用される。リーグ戦を2組に分けることで1チームあたりの試合数を減らし、プレーオフによって王者決定戦の注目度を上げる狙いだ。それでも、代表選手の状況を考えると、開催時期の設定やモチベーションの問題は、課題として残る。

 しかし、だからこそ、代表選手のネームバリューに頼らず、エンターテインメント性を高めることで国内大会の魅力を増す挑戦は、必要ではないか。今回は十分な告知期間を設けられず、空席を嘆く選手の声も少なくなかったが、山口茜は「何のためにこの大会をやるかと言えば(バドミントンを)メジャーにすることが一番大きな目的」と思いを明かした。

「1回目で良いところも悪いところもあるし、選手も発言をして、みんなで盛り上げていければいい。この雰囲気で試合を見た子どもは、憧れると思う。小・中学生は無料でも良いのでは。ここでプレーしたいと目標になる大会にできたら良い」(嘉村健士=トナミ運輸)

「初めての演出だったけど、もっとやっても良いと思う。海外ではよくあるけど、日本は、新しいことをやるより、いつも通りにやろうとする習性が強いと感じる。いろいろな人に知ってもらうためには、新しい演出は良いと思う」(福島由紀=再春館製薬所)

発信した変革のメッセージ

強い選手たちと、楽しめる会場づくりを目指して。手探りの中で、変革へのメッセージを発信した 【写真:平野貴也】

 協会も選手もファンも、国内で盛り上がる大会の誕生を望んでいる。課題を伴っているとしても、新たな挑戦は大きな価値のある一歩だ。集客力よりも演出力を重視した会場選びで得た成果もあった。ゼビオアリーナ仙台の会場運営に携わったクロススポーツマーケティング社の渡邉楓さんは「今回は、バドミントンの大会を開催したことで、初めてこのアリーナに足を踏み入れたという仙台のお客さんもいてうれしかった」と話した。既存ファンへの新たな楽しみの提供、新規ファンの開拓を考えると、演出の意味は大きい。実施されなかったが、会場にドローンを飛ばして、新たな角度や視点から試合を見せる案もあったという。
 池田アンバサダーは「まだ選手もお客さんも慣れていないけど、選手が手を振ったり、大型ビジョン用のカメラにアクションを起こしたりと楽しませることを考えるようになれば、ファンも反応するし、エンタメの要素も出てくる」と青写真を描いた。

 会場には、他競技の関係者も視察に訪れた。プロ、アマを問わず日本のスポーツ界全体が大会のエンタメ化に興味を持っている時代だ。変革には強いエネルギーが必要だが、新設大会で「日本のバドミントン大会は変わる」というメッセージを発信できたのではないだろうか。課題解消にどう取り組むか。来季以降の進化が楽しみだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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