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パナソニックは誰が出ても勝てるチーム
総力戦のVファイナルを制して得た財産

ファイナルはフルセットの総力戦に

Vリーグ男子はパナソニックの4年ぶり5回目の優勝で幕を閉じた
Vリーグ男子はパナソニックの4年ぶり5回目の優勝で幕を閉じた【写真:坂本清】

 フルセットでパナソニックが制し、優勝を決めるのか。はたまた、豊田合成が逆転勝利でゴールデンセットへともつれ込むのか。


 3月18日に行われたV・プレミアリーグ男子、ファイナル第2戦。最終セット、13−12とパナソニックが1点をリードした場面で、川村慎二監督はセッターの深津英臣に代え、ワンポイントブロッカーで池田政之を投入した。


 サーブを打つのは途中交代で入り、このセットはセッター対角のオポジットに入った久原翼。それまでとは逆のコースを狙ったサーブで豊田合成の守備を崩し、パナソニックがチャンスを得る。1点を取り、マッチポイントをつかみたい。セッター不在のため、ミハウ・クビアクが素早くセットに入り、福澤達哉が打つ。だが豊田合成もレシーブでつなぎ、ラリーの応酬が続く中、クビアクは池田にトス。ライトからのスパイクが決まり、14−12。マッチポイントというだけではない、パナソニックが大きな大きな1点を手にした。


 今季、常々「誰が出ても勝てるチームをつくりたい」と口にし続けて来た深津が言った。


「近年けが人が多くて、なかなかベストな状況に持っていけない中でも、われわれはプロとして結果を残さなければいけない。力をもっている選手がいっぱいいる中でもコートで出せない時期、場面もありましたが、今日の試合が一番、『誰が出ても勝てるチームだ』と証明することができました」


 代わって入る選手たちが、それぞれの役割を果たして勝利をつかみ取る。「総力戦」と称した最終戦は、まさにそんな最高の一戦だった。

チームのAB戦が最も熾烈な競争の場

パナソニックの選手たちはチーム内の熾烈な競争を勝ち抜いている
パナソニックの選手たちはチーム内の熾烈な競争を勝ち抜いている【写真:坂本清】

 深津や福澤、清水邦広といった全日本でも豊富な経験を持つ面々に加え、久原、今村貴彦、関田誠大など年代別のカテゴリーで日本代表として活躍する選手がそろう。単純に見るだけでも「誰が出ても勝てる」選手層ではあるのだが、特に今季は練習からの充実度、そしてチーム内競争のレベルが違ったとミドルブロッカーの白澤健児は言う。


「自分も含め、(年が)上のメンバーで話した時、『年を重ねていくうちに俺らも下のメンバーを育てないといけないんじゃないか』と考えたこともあったんです。でも僕らはあくまで選手であって、自分が試合でプレーをして勝たないといけない。今までは横とか下を見ながらやっていたんですけれど、まずはコートでしっかり自分が結果を出す。僕自身も今年同じポジションで同じ身長の兒玉(康成)が入って来た時に、そろそろ自分も入れ替わるのかなという気持ちでいたんです。でもいざ合流して、一緒に練習しているうちに思うんですよ。やっぱり負けたくないなって」


 試合期になればレギュラー組のAチームと、リザーブ組のBチームでAB戦を行い、実戦形式の中で戦術を確認し、スキルを磨く。たいていの場合、Bチームが仮想相手チームとなり、攻撃パターンやブロックシステムを確認しながら行うことが多いのだが、今季のパナソニックはそのAB戦こそが最も熾(し)烈な競争の場だったと川村監督は言う。


「ちょこちょこメンバーを代えるんです。そうすると、代えられた選手は『あれ、俺あかんのか』と思って刺激になるし、もっとやらなきゃ試合に出られなくなるという危機感が出てくる。そうやってチーム内での競争意識が高まることは絶対プラスになる。むしろ僕はレギュラーとリザーブの『AB戦』ではなく、『紅白戦』という意識でやってきました」

福澤(中央)は「全員で勝ち星を取ろうという気持ち」が今年の強さだと語る
福澤(中央)は「全員で勝ち星を取ろうという気持ち」が今年の強さだと語る【写真:坂本清】

 誰が出てもおかしくない、誰が出ても勝てるチーム。その意識は試合の中でも端々で変化を生み出す。コートに立つ選手だけでなく、アップゾーンの選手がより細かく試合を観察し、相手のブロックやディフェンスの付き方、サーブの傾向などを事細かに伝える。中から見える状況と、外から見える現状を共有することでより冷静なプレーにつながり、大きな効果をもたらしていたと福澤は言う。


「たとえばセッターの関田だったら、常に深津に対して『今のブロックはこうなっています』とか、試合中にものすごくコミュニケーションを取り合うんです。コートの中だけでなく全員で戦って、全員で勝ち星を取ろうという気持ちで戦っている。それが今年のチームの強さだったと思うし、本当にうまく回っていたと思います」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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