札幌といわきが大会を通して得たものは? 第1回「パシフィック・リム」を総括する
チャンピオンとなった札幌は来年もハワイにやって来るのか?
地元の歓迎を受ける札幌のペトロヴィッチ監督。ハワイはロケーションとしては最高だった 【宇都宮徹壱】
準決勝では、ピッチを幅広く使うことで「外から仕掛けたり、(相手の)中が空いたらそこを突いたり」(三好)という狙いどお通りのサッカーができていた札幌。ただし、後方から丁寧にビルドアップしてくるコロンバスと異なり、縦方向への意識が強く、フィジカルの強さを前面に押し出してくるバンクーバーとの決勝では、攻めあぐむ時間帯が続く。前半のチャンスらしいチャンスは、福森晃斗の左足から繰り出されるセットプレーのみ。後半は両サイドからのクロスに都倉が頭で合わせる場面が2回続いたが、ネットを揺らすには至らず。ようやく後半40分に、福森のFKのチャンスから最後は都倉が押し込み、これが決勝点となって札幌の優勝が決まった。
試合後、「僕が決め切れなかっただけで、チャンスはコロンバス戦と同じくらいあった。自分たちの守備が崩されることもなかった」と語っていたのは、決勝点を決めた都倉である。自分たちの目指すスタイルが発揮できない展開でも、しっかりと結果を残したこと。新体制となって間もないタイミングで、タイトルを(しかも国外で)獲得したこと。いずれも新シーズンに向けて、ポジティブな結果であったと言えよう。また開幕前の準備として考えた場合、8週間のキャンプを強いられる彼らにとり、沖縄と熊本の間にハワイで国際大会を経験するのは、いいアクセントとなったのではないか。
ならば、来年もパシフィック・リムが開催されたとして、札幌はチャンピオンとして再びハワイにやって来るだろうか。おそらく「今は確約はできない」というのが正直なところだろう。札幌の野々村芳和社長は、大会の意義を認めた上で「こっちの練習環境は正直、まだまだですね。ハワイ大学(の天然芝グラウンド)で、ようやくギリというところ」と厳しい指摘。また他のJクラブにしても、人工芝で行われる大会に難色を示すことは十分に予想される。温暖な気候と、観光地ならではのホスピタリティ。確かにロケーションは申し分ないが、ハワイが継続的な国際大会の会場となるには、さらに強い説得力を持つ「何か」がほしい。それが、今後のパシフィック・リム開催の鍵となることだろう。