タフな戦いはお手の物、石川直樹の安定感 日本代表にこの選手を呼べ!<札幌編>

斉藤宏則

16年ぶりのJ1残留を果たした札幌からは、チームの堅守を支えた石川直樹を推薦したい 【©Getty Images/J.LEAGUE】

 Jリーグの2017年シーズン、堅守速攻を武器に16年ぶりとなるJ1残留を果たした北海道コンサドーレ札幌から、ハリルジャパンへ推薦する選手の名前を挙げるとすれば、チームの堅守を支えた石川直樹だろう。札幌にはアカデミー出身の有望な選手も複数在籍しているが、昨季のJ1で年間を通してレギュラーとしてプレーした選手は、残念ながら登場しなかった。

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会が来年、もしくは再来年開催というのであれば期待を込めて、そうした選手の名を挙げるべきなのかもしれないが、開幕まで残すところあと半年を切った。やはり、こうした企画に参加するからには、単に将来を嘱望するためのリストアップではなく、より具体的に即戦力となり得る名前を挙げたいという個人的な考えのもと、記させてもらった。

リーグ屈指の安定感を誇るストッパー

仙台在籍時は4シーズン続けて残留争いを経験。安定感のあるプレーを見せ続けた 【(C)J.LEAGUE】

 17年夏、石川はおよそ6年半ぶりに札幌復帰を果たした。前回在籍時(09年夏〜10年)は柏レイソルからの期限付き移籍でのプレーだったが、今回は完全移籍での加入となった。より本腰を入れてプレーしている最中、ということである。

 前回在籍時にはチームはJ2だったが、常にハイレベルで安定感のあるプレーを見せていた。11年からはアルビレックス新潟へ移籍し、厳しい残留争いの中で、しっかりとJ1残留に貢献。13年からはベガルタ仙台に戦いの場を移し、ここでも4シーズン続けてJ1残留の一翼を担った。キャリアの中では年代別を含め、代表チームでプレーしたことはないが、仙台でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の過酷な戦いを経験しており、十分かどうかは計れないが、国際試合の経験は有している。

 そして肝心のプレー面では、リーグ屈指の安定感を持った左利きのストッパーと評していいはずだ。前述したように、これまでのキャリアでは残留争いに身を置くことが多かったため、なかなか前任の日本代表監督たちを含め、彼らの目に留まる回数は多くなかったが、残留争いのプレッシャーを含め、苦しい戦いに慣れており、メンタル的にもタフなセンターバック(CB)だ。

 身長180センチ、体重74キロと細身な印象もあるが、空中戦やボディコンタクトには強さがあり、簡単には背後を取らせない的確なポジショニングも魅力。ボールを持ってからも、スピードのあるパスを前方に配球できるし、近くでプレーする選手との巧みなパス交換から攻撃を組み立てることもできる。

 また、左サイドバック(SB)としてもプレーできるのが大きい。W杯では登録人数が23人と限られてくるため、複数ポジション、特にCBとSBをこなせるDFというのは貴重なはず。そうした選手がいることで、メンバー選考の幅がさらに広がるという意味でも、こうした人材の評価は高まるのではないだろうか。

不慣れなシチュエーションでも実力を発揮

昨シーズンは不慣れなポジションでも実力を発揮した石川(右)。タフな戦いはお手の物だ 【©Getty Images/J.LEAGUE】

 現実的に考えて、過去の戦績を踏まえると、日本代表はW杯の戦いでは「守勢に回らざるを得ない側」に属すると見るべきである。そうなってくると、まず考えなければならないのは守備だ。もちろん、若くて有能なCBを起用して厳しい戦いに挑むことにも大きな価値はあるが、そうした場合には、やはり安定感のあるバックアッパーが必要になるはずだ。

 昨季はシーズン半ばに札幌に加わり、プレー経験のほとんどない左ウイングバックとして起用され続けるという難しい任務を求められたが、そこでもしっかりと相手の攻撃を封じ、巧みな駆け引きをしながら相手の右サイドからの攻撃をパワーダウンさせていた。不慣れなシチュエーションでも、しっかりと力を発揮できることを証明したばかりでなく、加入直後から積極的に声を発し、闘争心を高く保ってプレーしていた石川の姿はチームメートたちにも大きな勇気を与えていたように感じた。

 常に残留争いの厳しい環境の中に身を置いてきただけに、タフな戦いはお手の物。そして、もし上位チームでプレーする機会があったならば、一度は日の丸をつけるチャンスもあったのではないだろうか。コツコツと守備をし続け、派手なプレーがあるわけではないが、そうしたことを思わせてくれるのが、この選手である。

 現在の代表チームでは、30歳を超えた選手が招集されるケースはあまり多くないようだが、そういったチームほど、最後の最後になって経験値のある選手に頼らざるを得なくなるような気もしている。それはともかくとして、素晴らしい実力を持ったCBがいるということを、シンプルに紹介したいと思う。
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著者プロフィール

1978年北海道生まれ。北海学園大学経済学部卒。札幌市を拠点に国内外を飛び回る。サッカーでは地元のコンサドーレ札幌、各年代日本代表を中心に、ワールドカップ、五輪、大陸選手権などの国際大会にも精力的に足を運ぶ

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