新天地アンデルレヒトで苦しむ森岡亮太 「勝って当たり前」のチームで戦う難しさ

中田徹

勝つことが義務のチームでプレーする難しさ

アンデルレヒトでは経験したことのない新たな難しさに直面している 【写真は共同】

 早速、2月4日のメヘレン戦で先発出場した森岡は、開始10分には正確な左足のクロスからシルベール・ガンボウラのヘディングゴールをアシストした。だが、その後はうまくゲームを作れず、終盤にはPKを失敗。チームが2−2で引き分けたということもあり、ベルギー国内では厳しい評価が下された。

 翌節、10日のオーステンデ戦は後半、相手が密集して守る狭いエリアをダブルタッチでかわしてから左足アウトフロントでシュートする個人技で魅せたが、得意のスルーパスは不発。ボールロストも多く、森岡は本来の実力を出せなかった。

 この日、アンデルレヒトは0−2で完敗した。現在、アンデルレヒトは3位とは言え、年明けからの成績は1勝3分け1敗と芳しくない。試合内容を見ても守備は崩壊し、ボールを持ってもビルドアップすらままならない。このようなチーム状況で、森岡も自身のすべきプレーが整理しきれてないようだ。

 ポーランド時代の森岡はフィジカル重視のサッカーへの適合に苦労した。今は、「勝つことは義務」というチームでプレーすることの新たな難しさに直面している。

「そうですね。本当に今まで経験したことのない新しい難しさですね。もちろんビッグクラブのプレッシャーもありますし、いろいろな意味で全然経験したことのない感覚ですね。

 サポーターも求めているレベルが全然違う。ここまで勝って当たり前の感覚のチームで、今までプレーしたことがなかった。これまでは負けても別に内容次第で、そこまでブーイングをもらったりすることはなかったですし。今は引き分けても内容が悪かったらブーイングじゃないですか。だから、勝たないといけない」

ポーランドでの経験が生きる日が来るはず

 ここまで「本当に勝たないといけない」と追い込まれたのは、神戸時代の残留争いだろうか。

「その時はそうでしたね。でも落ちましたけれど……」と一旦は肯定してから、森岡は言い直した。

「いやあ、でも全然違いますね。あの時はまだ自分の立場も主軸ではなかったですし、若手でした。今はもう違いますね」

 ブロツワフ時代の森岡も加入当初は苦労し、「ポーランド語を喋れない選手は使わない」と監督から言われて途方に暮れたこともあった。しかし、16年4月1日のレフ・ポズナン戦も「控えだろう」と思って試合前の更衣室に入ったら、戦術ボードに「10」の番号を見つけて慌てて準備をした。

「やっぱりレベルは高くないんで、会場からため息が漏れるような、そんなチームで試合に出てない……。そういうのをいろいろ考えましたね。そこで、急にチャンスが来た。『もう、やるしかない。俺が上がれる選手だったら、絶対にここで結果が出るわ』というふうに思い聞かせた。この試合が始まって10分で点を取りました」

 このブロツワフでの初ゴールをきっかけとして、森岡は9試合で7ゴールという固め取りをし、ポーランドリーグを代表する選手になった。ヨーロッパにおける森岡のターニングポイントとなった試合だったと言えるだろう。

 今はアンデルレヒトで苦しむ森岡だが「俺が上がれる選手だったら、絶対にここで結果が出るわ」という思いで挑んだ試合の経験が生きる日が来るはず。まだまだ、これからだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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