同じスケートでも異なる環境と技術 【対談】加藤条治×小塚崇彦 後編
スピードスケートの加藤条治と、元フィギュアスケーターの小塚崇彦さんの対談後編。同じスケート競技でも異なる環境や技術について語った 【坂本清】
一方、スピードスケートの加藤条治(一般財団法人博慈会)は、引退後の選択肢に関してはフィギュアスケートの方があると感じている。両者の言葉から競技の違いが鮮明に浮かび上がる。対談の後編では上記に加えて、滑りの技術や練習スタイルについても語り合った。
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滑る技術はどこまで違う?
速く滑ることに関してはスピードスケートが絶対に勝つと、加藤は断言する 【写真:松尾/アフロスポーツ】
小塚 僕はスピードスケートの靴で滑ろうと思っても滑れないです。たぶん条治さんはフィギュアの靴でも滑れると思います。
加藤 ある程度は滑れます。
小塚 スピードスケートのスラップの感覚が全然分からないです。だから後ろがパコッとなる感覚が全然イメージできない。
加藤 全く別の感覚かな。僕はフィギュアも滑ったことがあるし、スケートは最初フィギュアの靴を履いてからスタートするものなので。ただ、スピードスケートに慣れるとフィギュアは危ないですね。スピードスケートは、ブレードが長いので前後バランスがあまり必要ないんです。その感覚のままフィギュアの靴で滑ると、後ろに体重を乗せたときにツルッといき、1回体が浮いて腰から落ちるんですよ。それで尾てい骨などをケガしてしまう人がいます。横に転ぶことはあまりないんですけど、前と後ろに転ぶことはあります。
――滑る技術も全然違いますよね。
小塚 以前、テレビ番組で岡崎(朋美)さんと対決したんですけど、大敗を喫してしまい……(苦笑)。全然勝てないです。どれだけ頑張っても勝てないです。
加藤 速く滑るということに関しては、スピードスケートが100パーセント勝つね。
小塚 条治さんが10年後や20年後に滑ったとしても、今の僕では絶対に勝てないです。前にテレビで見たんですけど、清水(宏保)さんと荒川(静香)さんがお互いの靴を入れ替えて滑っていました。
加藤 やっていたね。清水さんのボロ勝ちだった(笑)。
小塚 めちゃくちゃ速かった(笑)。やはりスピードスケートの方が絶対に速いですね。
加藤 もちろん種目を変えれば、当然フィギュアにはかなわないです。スピードスケートの人は回転したり、ジャンプを跳んだりはできないので。
小塚さんは過去にテレビ番組で岡崎朋美さんに完敗したという。スピードではかなわないが、回転やジャンプではフィギュアスケーターも負けない 【坂本清】
加藤 いや、目は回る(笑)。
小塚 やっぱり慣れの問題ですね。
加藤 いくら回っても大丈夫なんだ?
小塚 ある程度は大丈夫ですね。昔『トリビアの泉』というテレビ番組で、安藤美姫さんが何回転しても大丈夫だったというのがありました。
加藤 それはすごい。フィギュアの方が引退したあと、エンターテインメントとして見せるものがあるよね。
小塚 競技から引退しても、アイスショーで活躍する場があるというのはフィギュアの良いところだと思います。でも、アイスショーをずっとやっていても、その先はどうするのかという問題はあります。ファーストキャリア、1.5キャリア、その次のセカンドキャリアがあって、1.5キャリアが今のプロという感じです。セカンドキャリアではない。そこはまだまだ改善していく必要があると思うんですけど、競技が終わったあと、そういう場があるのは恵まれていると思います。