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“森保ジャパン”初の公式大会は苦い結末
東京五輪へ、挫折から始まる成長物語

スコアどおりの“大敗”を喫したU−21代表

“歴史的”とも言える0−4の大敗を喫したU−21代表。4失点という数字がすべてを物語っていた
“歴史的”とも言える0−4の大敗を喫したU−21代表。4失点という数字がすべてを物語っていた【Getty Images】

 1月9日から中国・江蘇省で行われている23歳以下のアジア王者を決するAFC U−23選手権。19日に行われた準々決勝において、“東京五輪代表”たるU−21日本代表はU−23ウズベキスタン代表を相手に0−4の歴史的とも言える大差で敗れ、大会を去ることとなった。


 スコアボードに刻まれた「0−4」という無惨な数字がすべてを物語っていた。サッカーでは大差のついたゲームであっても、そこまで実力差はないということは起こり得るものだ。たまたま片方のチームのシュートがよく入ったり、イチかバチかの攻勢に出た終盤で大量失点というケースもある。ただ、今回の敗戦はそうしたものではない。シュート数「4対20」という数字が端的に示すとおり、試合内容でも大差のあるゲームだった。


「ウズベキスタンと、われわれ日本代表の現時点での力の差が出た結果になった」(森保一監督)


 指揮官の表情と言葉は、掛け値なしの本音だろう。序盤から相手に主導権を握られ、隙を見せた流れを突かれて前半31分に先制ゴールを許すと、ミスが絡んで一気に大量3失点。気持ちを引き締め直したはずの後半立ち上がり早々にも失点しての大敗である。ぐうの音も出ない。攻撃も最後まで形にならず、相手を脅かしたと言えるシーンは果たして何度あったことか。アジア勢との敗戦後には「内容では勝っていた」「あそこでああしておけば」などと言えることも多いが、この試合に関して、そうした感想は出てこないだろう。それは当事者たる選手たちにしても同じだった。


「試合をやっていて、今までの相手とはまるで違うなというのは感じていた」(DF原輝綺=アルビレックス新潟)


「相手のほうが気持ちの部分であったり、すべての部分で上回っていた」(MF井上潮音=東京ヴェルディ)


「スピード、球際の強さで差を感じた。自分たちよりもひとつ、ふたつ上手」(DF立田悠悟=清水エスパルス)


「ビルドアップのところでも自分たち以上で、すべて相手のほうが上だった」(DF古賀太陽=柏レイソル)

「ヨーロッパスタイル」を志向するウズベキスタン

「ヨーロッパスタイル」のサッカーを志向するウズベキスタン。15年のU−20W杯では8強入りを果たすなど、力を見せてきた
「ヨーロッパスタイル」のサッカーを志向するウズベキスタン。15年のU−20W杯では8強入りを果たすなど、力を見せてきた【Getty Images】

 もともとウズベキスタンはアジア列強の中でも異質なチームである。旧ソビエト連邦の一部だった歴史的経緯があり、サッカーは完全なヨーロッパスタイル。時代に応じたアップデートも重ねており、各年代でクオリティーの高いサッカーを見せてきた。中東勢など、個々の能力で言えばウズベキスタン以上と言える国はあるのだが、サッカーの質という点では常にこの国の代表は指折りの存在である。特にこの年代は2015年のU−20ワールドカップ(W杯)で8強入りを果たすなど、力を見せてきた世代である。


 よく年代別日本代表のスタッフとは「ウズベキスタンと当たれたらいいですね」という話をするのだが、それも「この国とやれば、いい経験になる」というある種の信頼の裏返しがあるからだ。昨年12月にタイで行われたM−150杯に参加したときも、代表スタッフの1人と「(別グループにいた)ウズベキスタンと最後にやれたら理想的ですね」なんて話をしていたものだった。実際、そのとおりにこの大会の決勝でウズベキスタンと当たることになったのだが、結果はPK負け。ただ、このときの彼らと今回の彼らは「相手の勢いがあって、のまれてしまった。やってみて全然違いました」(立田)。


 この試合では、しっかり後方からビルドアップしてくる相手に対し、日本は5−4−1の形でリトリートして守っていたが、1対1の局面でしばしば劣勢となり、試合全体の流れもじわじわと失った。デュエル(1対1)の勝率は46.6対53.4でウズベキスタン優勢の試合だが、空中戦のデュエル勝率はより開いており、35.0対65.0と日本の大差負け。全体に押し込まれる中で、セカンドボールも拾えなくなっていく流れだった。


 サッカーにはポゼッションで相手を押し込むことで、カウンターでの相手の得点率が上がるという、一見するとパラドックスのような現象がある。ジョゼップ・グァルディオラ監督時代のバルセロナが典型例だが、相手を押し込むことによって、相手のビルドアップを始める位置を低くさせ、逆に自分たちは押し込むことで敵陣に多くの選手がいる状態でボールをロストするので、そこからのプレッシングに切り替えやすく、その実効性も高くなる。ウズベキスタン戦の日本は、この袋小路にも追い込まれてしまった。それはこの大会を通じて新任の指揮官である森保監督が選手たちに要求してきた「チャレンジ」と裏腹の関係にある。


 5バックでリトリートして守ることを許容する森保監督のシステムは、低い位置からでもしっかりビルドアップしていくことを大きな狙いとして持っていて、それでこそ機能するシステムでもある。練習でもGKを使って攻撃を組み立てる、少ないタッチでパスを回すことを徹底して取り組んできた。試合になっても、選手たちは「チャレンジすることが大事」(MF神谷優太=愛媛FC)と前向きに取り組んできた。


 ただ、その意図は露骨でもあり、ウズベキスタンは日本を分析した上で、試合のどこかで“狩りに出る”チャンスを最初から狙っていたのだろう。


「最初はそんなにプレッシャーを掛けてこようとはしてこなかったと思うんですけれど、われわれのビルドアップに対してプレッシャーが掛かったな、日本が慌てたなという流れから、プレッシャーを掛け続けてきた」(森保監督)

川端暁彦
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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