涙の4年生と、笑顔で迎える監督 「挑戦し続ける」天理大ラグビー部
関西王者となるも、大学選手権で東海大に敗れる
東海大に敗れ、涙する選手たちを笑顔で迎える天理大・小松監督 【斉藤健仁】
準々決勝屈指の好カードは、天理大が常にディフェンスが強固な東海大にペースを握られ、7対33で敗戦し、天理大の日本一を目指す戦いは準々決勝で終わった。
この2年、関西では頭一つ抜けた存在で、負けなしだった天理大。ハーフ団のSH藤原忍とSO松永拓朗、突破力のあるCTBシオサイア・フィフィタと1年生も先発したものの、23人のメンバーを見ればCTB王子拓也キャプテンを筆頭に、PR木津悠輔、FB井関信介(いずれも4年)、日本代表キャップも持つNo.8ファウルア・マキシ(3年)と3〜4年生の経験豊富な選手が多く、「史上最強」とも言われるほどの布陣だった。
東海大には夏の練習試合では14対45で敗戦しており、過去の大学選手権での対戦成績も0勝3敗と決して分のいい相手ではなかった。それでも、今年度の天理大であれば、東海大、帝京大を倒す可能性も十分あるのではないかと見られていた。
王子キャプテン「蹴れなかったのが弱さです」
継続してアタックしたが、東海大のディフェンスの前に1トライに抑えられた 【斉藤健仁】
前半は風上だったものの、キックをうまく使うことができず、逆にマークしていたNo.8アタアタ・モエアキオラ(3年)らに2トライを許してしまったことが痛かった。
後半は、天理大学は「バックドア」とも呼ばれる裏のラインを使い、「ポッド」というシステムで、大外に配置していたCTBフィフィタ、No.8マキシの2人までうまくボールを運んだ。だが、それも東海大学は予想していたかのように、タックルの強いSH山管一史(2年)をWTBに配置するなどしてしっかりと対応した。
前半のキックの使い方、そして後半、ボールを回す中でコンテスト(相手と競り合う)キックのオプションがほとんどなかったことは悔やまれる。やはり、相手のディフェンスが強固なときは、キックをうまく使うことも必要であろう。
もちろんキックを選択肢としては用意したようだが、リードされる展開の中で、12番の位置からゲームをコントロールしていた王子キャプテンは「蹴れなかったのが弱さですし、うまさがなかった」と肩を落とした。
FW、セットプレーの強化で総合力の高いチームへ
強化してきたスクラム、モールはチームにとっての武器となった 【斉藤健仁】
ただスクラムは終始優勢であり、後半6分には、ゴール前でうまくモールを組んで、一度押された後にも、しっかりとコントロールしてSH藤原がトライを挙げた。天理大は現在、持ち味としているボールを継続するアタックだけでなく、FW、セットプレーの強さもある総合力のあるチームと成長している。その転機は2013年度にあった。
2009年度に東海大に敗れた天理大は、東海大にならって朝練習を始めたり、近くのダムの階段を走ったりとフィットネスやフィジカルの強化にあたり、2010年度、人格者として知られたHO立川直道(クボタ)キャプテンの下、35年ぶりに関西を制する。(大学選手権は2回戦で東海大に敗戦)
続く2011年度は、いまでは日本代表の顔のひとりとなったSO立川理道(直道の弟/クボタ)がキャプテンとしてチームをリードし、帝京大に惜しくも12対15で敗れたが、天理大学の“代名詞”であるフラットラインを武器に、初の決勝まで駆け上がったことは鮮明に記憶に残っており、ラグビーファンの心を打った。