夏冬2冠を狙う流経大柏がさらに化けた!? ハイレベルなチーム内競争で攻撃が進化

平野貴也

明らかに夏とは違うチームに

インターハイ王者の流経大柏が選手権に向けてまったく別のチームに仕上がりつつある 【平野貴也】

 対戦相手は「夏の王者に挑む」意識を捨てた方が良い。インターハイ王者は、選手権に向けてまったく別のチームに仕上がりつつある。

 12月30日に開幕する第96回全国高校サッカー選手権大会の優勝候補に名の挙がる流通経済大学付属柏(千葉)は、全国高校総体(インターハイ)との全国2冠を狙う。驚異の競争力で、夏から大きく進化した。

 主将の宮本優太は「夏は、ロングパスを前に蹴って競り勝つだけという感じでしたけれど、インターハイが終わった後から『攻撃は、もっと成長しないといけない』と話してきました。サイドでの崩しやFWがボールを収めてからの攻撃などバリエーションは増えたと思います。(左MFに定着した)鬼京大翔は、夏はメンバーに入っていなかった選手ですけれど、悔しい思いで毎日努力してきて、今、良くなっているのだと思います」と攻撃面の成長に自信を示した。

 名前の挙がった鬼京は、小柄だが鋭いドリブルとシュートテクニックを持つ技巧派だ。選手権の県予選決勝では、市立船橋の2選手の間を一気に突破して先制点をお膳立て。17日に行われた高円宮杯U−18サッカーリーグ2017プレミアリーグ参入戦では、技ありの先制点を含めて2ゴールを決めて勝利に貢献した。

 宮本が話したように、夏までは激しいプレスをかける守備こそ見事だったが、攻撃は単調だった。そのため、プリンスリーグ関東では2勝4分け3敗と伸び悩んでいた。しかし、インターハイ後は、7勝1分け1敗と立て直した。

 明らかに、夏とは違う。攻撃の主軸であるMF菊地泰智も「得点はセットプレーに頼ってしまうところがあったけれど、流れの中でも取れるようにしないといけない。夏以降にずっとワンツーの練習をしていて、今になって、肩の力を抜いて試合で出せるようになってきた。ロングパスに頼らずに自信を持ってプレーができて、攻撃の選択肢が増えてきました」と地上戦の向上を明確に感じていることを認めた。

夏の優勝メンバーもベンチ外に

右DFに台頭してきた齋藤(左)は、インターハイ時に応援団長を務めていた 【平野貴也】

 変化を可能にしたのは、他を寄せ付けない選手層の厚さと競争力だ。攻撃の変化の象徴である鬼京は、1年次にU−15日本代表候補に選出された経験を持ち、早い段階から期待を受けていたが、先発に定着できなかった。

 鬼京は「選手層の厚いチームで、試合に出られずに悔しかった。インターハイも出られず、絶対に変わらなければいけないと思いました。サッカーノートには『チームを勝たせる選手になる』と毎日書いていて、そのためには(うまいだけでなく)結果を残せないとダメだと思いました」ともがき続けた日々を振り返った。

 右DFに台頭してきた齋藤優輝は、インターハイの時は応援団長を務めていた。当然、出てくる選手がいれば、外れる選手もいる。インターハイ優勝メンバーも一時はメンバーから外れた。すると、チームスタッフが「あいつ、今、こんな感じになっていますよ」と拳を固めて格闘家のウォーミングアップのようにぐるぐると回した。

 流経大柏は練習の最後にA対Bの15分ゲームを行うのが恒例。レギュラーを外れた選手たちは、ライバルを相手に激しいプレーを仕掛ける。しかも、プレーの結果はすぐに次の試合に反映される。本田裕一郎監督は「たまには同じメンバーでやらせてくれと思うかもしれないけれど、調子が悪いんじゃしょうがない。絶好調の選手しか使わない」と競争をあおっていた。競争によって、タイプの違う選手が台頭し、チームの選択肢を増やすのだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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