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『論語』の教えを胸に、流経大柏が総体V
堅守速攻で日本一に輝いた強さの背景

今季、流経大柏は寮で『論語』を暗唱

流経大柏は徹底的な守備でインターハイを制して夏の全国王者となった。その強さの裏側にはある影響があった
流経大柏は徹底的な守備でインターハイを制して夏の全国王者となった。その強さの裏側にはある影響があった【平野貴也】

「子曰、過而不改、是謂過矣」


 2017年のインターハイ(全国高校総合体育大会)で日本一に輝いた流通経済大学付属柏高校のサッカー部主将である宮本優太が教えてくれた、『論語』の故事成語だ。


「子曰わく、過(あやま)ちて改めざる、是(これ)を過ちと謂(い)う」と言葉にした後で、宮本は「間違えたことを間違えだととらえないことが間違いだ、という意味です。大会中は、失点したことや、PKを与えてしまったことを振り返って、そのシーンだけではなくて、その前の部分がダメなんだという話を選手同士で話すことができていました。『論語』の言葉自体を口に出したわけではなかったですけれど、(言葉が意味する感覚を)胸に持っていたんじゃないかと思います。役に立ったと思います」と、言葉の意味を説明し、大会を振り返った。


 今季、流経大柏は寮で生活する選手が点呼を行う際に、『論語』を暗唱する時間を設けている。春先、本田裕一郎監督は「子曰く……という音が良いから覚えやすい。言葉の解釈の仕方はいろいろある。一応、解説がついているけれど、意味は後から知るという形でも構わない。今は分からなくても、いずれ必ず役に立つ。難しくない。学校の成績のよくない子もいるけれど、『サッカーを教える名人には出会ったけれど、勉強を教える名人にはまだ会っていない』というだけのことだから、大丈夫だと言っている。みんな、あっという間に覚えますよ」と話していた。


 3月に行われたサニックス杯国際ユース大会の前夜祭では、他チームが一発芸などを繰り広げる中、流経大柏は覚えた『論語』の斉唱を披露したという。孔子の『論語』を覚えたからといって、サッカーがすぐに強くなるわけではない。しかし、宮本の話を聞いて、じんわりと効果を発揮しているのかもしれないと思った。

プリンスリーグ関東では低迷中だったが……

チームをけん引していたのはキャプテンの宮本(4)と、攻撃の主軸である菊地泰智だった
チームをけん引していたのはキャプテンの宮本(4)と、攻撃の主軸である菊地泰智だった【平野貴也】

 流経大柏は、徹底的な守備でインターハイを制して夏の全国王者となった。9年ぶり2度目、単独では初の優勝だ。全国的に名の知れた強豪校だが、昨季は高円宮杯U−18プレミアリーグEASTで9位に終わり、初の降格。今季は1つ下のカテゴリーにあたるプリンスリーグ関東で戦っているが、9試合を終えて2勝4分け3敗、12得点12失点、10チーム中7位と低迷中だ。


 今大会、トーナメント戦を戦うにあたり、チームは守備を強化した。相手のキーマンに、対人戦に強い選手をマンツーマンで付けて攻撃の起点を作らせず、伝統のハイプレッシャーで相手のパスワークを寸断した。ボールを奪うとロングパスで速攻を仕掛け、積極的にシュート。コーナーキックやロングスローで攻め込むセットプレー地獄に追い込み、ゴールを奪った。リーグ戦にはなかった、5試合で1失点という堅守が、優勝の原動力だった。


 ピッチの内外でチームをけん引していたのは、中盤の底で全体のバランスを取る宮本と、攻撃の主軸であるMF菊地泰智だ。ともに前回大会の準優勝を経験している。


「事前合宿から、優太と一緒に、何が必要か、どれだけきついかを仲間に伝えてきた。試合中につらい思いをするより、負ける方が(もっと)嫌だろと言って、優太と一緒にチームを引っ張ってきた」と話した菊地は、決勝戦で鋭いプレスバックを見せ、中盤のわずかな隙を埋めて堅守を体現、勝利に貢献した。宮本とともに、チームの守備組織を機能させた陰の功労者だ。

平野貴也
平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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