競技転向3年後に日本歴代2位に 身長179cmの女子やり投げホープ北口榛花

高野祐太
 2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートたちを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第4回は北海道出身、陸上競技の北口榛花(はるか/日本大)を紹介する。

高身長という強み

陸上女子やり投げのホープ、北口榛花。写真は2016年5月、61メートル38のジュニア日本新をマークした北口 【写真は共同】

 北口榛花はスケールの大きなやり投げ選手だ。「最近は計っていないけど179センチはある」という長身からやりを投げ出すダイナミックなフォームが日本人離れしている。

 今季に引退した女子やり投げの第一人者、海老原有希さんは身長164センチ。63メートル80の日本記録保持者で、2011年世界選手権では同種目で日本人初の決勝進出を果たした国内屈指の実績を持つ。それでも世界的に見れば小柄な身長で、これ以上の結果を残すには限界があったとも言えた。
 北口の場合は高身長という点だけを取っても、ワールドクラスになり得る可能性がある。自己記録はまだ海老原さんに及ばないものの、19歳の現時点で日本歴代3位の61メートル38(記録時点では歴代2位)に達している。

競泳、バドミントンで活躍 高校から陸上の世界へ

本格的に陸上を始めたのは高校から。当初は競泳でも上を目指していた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 ホープとしての魅力を秘めた北口だが、中学では陸上競技をやっていなかった。3歳で競泳を始め、小学生ではバドミントンにも取り組んだ。バドミントンでは小学生の全国大会で団体優勝をし、競泳では旭川東高校1年時に高校総体支部予選で50メートルと100メートルの自由形で優勝。当初は高校では競泳で上を目指すつもりだった。
 だが、同校陸上競技部の松橋昌巳監督に、この2つのスポーツで培った肩の強さと柔らかさという能力を見いだされ、「きっと強くなれるよ」と勧誘されたことが陸上競技との出合いだった。

 競泳への思いは強かったが、「すごく悩んだけど、親にもやってみればと言われたし、先生に競泳も続けて構わないと言っていただけたので、始めることにしました」。
 そうして、思いもよらなかった高校生活が始まり、まだ競泳との“二刀流”だった6月の高校総体北海道予選でのことだ。女子やり投げ決勝で北口は助走にもなっていないような助走で、取って付けたように数歩進んでから、へっぴり腰の手投げでひょいとやりを放り投げた。下手くそ以外の何ものでもない“素人投げ”。それなのに高校生では一定レベルと言える45メートルラインを超え、優勝をさらってしまった。

「こんなに短期間に記録が出ると思いませんでした。陸上も面白くなってきたので、競泳と両方で上を目指します」と高校1年だった北口は初々しく語った。
 なんというポテンシャルの高いアスリートが旭川から出現したものだろう。フォームの稚拙さと記録の間のあまりにもかけ離れたギャップを目の当たりにし、そう呆気に取られずにはいられなかった。投げ方が洗練されたときにどこまで記録が伸びるのか計り知れないと、うなるしかなかった。北口はその年の10月に、陸上に専念することを決断する。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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