ネイマールのレアル移籍は実現するのか 会見で見せた涙、PSGでの厳しい現状

会見で見せた涙が物語る、ネイマールの現状

日本との親善試合後の会見でチッチ監督がネイマールを擁護。ネイマールは涙を見せた 【Getty Images】

 日本vs.ブラジルの親善試合が行われた後の記者会見にて、ネイマールが隣に座るチッチ監督の擁護に感極まって涙したことも、彼の現状を物語っている。

 ネイマールにかかるプレッシャーは恐ろしいほどに大きく、今度は衝撃のうわさが浮上した。C・ロナウドとの契約満了に合わせ、レアル・マドリーが2019−20シーズンにネイマールを獲得する可能性が報じられたのだ。

 この情報は、珍しくレアル・マドリーの機関紙『マルカ』とバルセロナの機関紙『ムンド・デポルティーボ』がそろって報じた。報道によれば、レアル・マドリーは2億ユーロ(約265億円)の移籍金に加え、選手への報酬を含めた総額2億5000万ユーロ(約333億円)に上る諸経費を工面しているという。

 この報道を受け、メッシが電話で移籍を思いとどまるようネイマールを説得したといううわさまで出ているが、彼を止めるのは簡単なことではなさそうだ。レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長は、21世紀初頭には“銀河系”と呼ばれる大型補強に駆られていたが、ここ2、3年はビッグタイトルを獲得していることもあり、補強に急ぐことなく、無駄な出費を抑えて良質なスター選手を獲得することに集中している。

 一方のネイマールもまだ若いとはいえ、カンプ・ノウで受けるであろう誹謗中傷の嵐を耐え得るほどには成熟している。そうでなくとも、すでにバルセロナのファンは、MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)と呼ばれた南米トリオの崩壊をもたらしたネイマールの移籍を“裏切り行為”とみなしており、彼を快く送り出すことはしなかった。

かつてのロナウド、フィーゴの再現となるか

かつてのフィーゴ(右)のようにバルセロナからレアル・マドリーへの移籍は実現するのだろうか 【写真:ロイター/アフロ】

 ネイマールの移籍が実現すれば、ペレス会長にとってはサントスのスターとして輝いていた頃の獲得を阻まれたバルセロナに対するリベンジとなる。バルセロナのアイドルとして人気を博した後、レアル・マドリーのユニホームを着てクラブ史に残るほど活躍したロナウドやルイス・フィーゴのケースを再現することにもなるだろう。

 1950年代に生じた故アルフレド・ディ・ステファノの強奪事件は、もっと暴力的なものだった。コロンビアのミジョナリオスで活躍していたアルゼンチン人は、レアル・マドリーとバルセロナが繰り広げた獲得合戦の末、アスルグラナ(青とエンジの意。バルセロナのユニホームを指す言葉)のシャツを着てプレーし始めた。だが彼は、ほどなくマドリー行きの電車に乗り、クレ(バルセロナのファン・サポーター)たちの元には、二度と戻って来ることはなかった。

 ネイマールをめぐっても、歴史は繰り返されるのだろうか。関係者たちはそろって否定するだろうが、われわれの記憶にはある言葉が刻まれている。03年にデビッド・ベッカムの獲得を問われた際、当時のレアル・マドリーの会長が言っていた「ネバー、ネバー、ネバー」だ。

 その会長は他でもないフロレンティーノ・ペレスであり、ほどなくベッカムはレアル・マドリーの選手となった。そう考えると、先日セルヒオ・ラモスが出演したラジオ番組の中でネイマールの加入を歓迎していたことも、単なる冗談には聞こえなくなってしまう。

 これがただのうわさにすぎないのか、現実に起ころうとしていることなのかは、そのうち明らかになるだろう。今言えることは1つ。歴史は繰り返されるということを、すでにわれわれはよく知っているということだけだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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