ようやくバレンシアに訪れた幸福の時 得点力が向上し、クラブの無敗記録を更新

開幕直後から安定したパフォーマンスを披露

マルセリーノ監督(右)就任後、バレンシアを取り巻く状況は少しずつ好転していった 【Getty Images】

 今季も厳しいシーズンになると予想されていたバレンシアが今、幸福に包まれている。

 この数年間、いったい何人のスポーツディレクターがクラブを去っただろうか。2月にはクラブの英雄であるマリオ・ケンペスまでもが、度重なるフロントとの対立の末に親善大使の職を解かれている。9月にはホセ・ラモン・アレサンコが解任されたばかりだ。

 何もかもがうまくいかず、オーナーのピーター・リムに対する信用はすっかり地に堕ちていた。そんな状況が少しずつ好転しはじめたきっかけは、まず2015−16シーズンまでビジャレアルを率いて良い結果を出していた、マルセリーノ・ガルシア・トラル監督の招へいが当たったことだ。

 昨季は守備の要として活躍したエリアカン・マンガラを手放し、開幕当初から複数のけが人にも見舞われた。1月に加入したシモーネ・ザザ、今夏に獲得したゴンサロ・ゲデスらも、どこまで活躍するか分からなかった。そのような状況下で、マルセリーノは即座にチームの骨格を固め、開幕直後から安定したパフォーマンスを引き出すことに成功した。

攻撃の駒が増加、ザザは得点ランク2位につける

リーグ戦9試合で8ゴールと得点ランキング2位タイにつけるザザ(右) 【Getty Images】

 ディフェンスラインにはコロンビア人のジェイソン・ムリージョ、ブラジル人のガブリエル・パウリスタが加入した。彼ら2人にアルゼンチン人のエセキエル・ガライを含めた3人のセンターバックが中央を固め、経験豊富なサイドバックのマルティン・モントーヤとホセ・ルイス・ガヤが両サイドを固めている。

 成熟期を迎えたダニエル・パレホ、万能プレーヤーのカルロス・ソレルを中心とした中盤は、ジェフリー・コンドグビアの加入によりクオリティーが飛躍的に向上した。さらにゲデス、アンドレアス・ペレイラらも加わったことで攻撃の駒も増えた。

 前線ではザザがリーグ戦9試合で8ゴールを量産し、ビジャレアルのセドリック・バカンブと並んで得点ランキング2位につけている。彼より多く得点を挙げているのはリオネル・メッシだけだ。

 ザザと2トップを組むロドリゴ・モレーノも5ゴールを挙げているが、何よりチームの得点力の高さを象徴しているのは、これまでの9試合で9人もの選手がゴールを決めていることだ。しかも上記の2人に加え、サンティ・ミナが3得点、コンドグビアが2得点と、4人が2ゴール以上を奪っている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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