カタルーニャ独立問題とラ・リーガの異変 レアルはロナウドが不発、バルサは快進撃

レアル・マドリーが10節を終えて早くも2敗

レアル・マドリーが早くも2敗。その1つを1部初昇格のジローナ相手に喫した 【写真:ロイター/アフロ】

 ラ・リーガの第10節終了時点でバルセロナがレアル・マドリーとアトレティコ・マドリーに勝ち点8差をつけることなど、誰が予想できただろうか。

 レアル・マドリーが早くも2敗し、それもその1つを1部初昇格のジローナ相手に喫することなど、なおさらだ。ここまでレアル・マドリーの総得点は、1試合2ゴールペースにも満たない19ゴールにとどまっている。これはバルセロナ(28ゴール)に加えて、2位のバレンシア(同27)、8位のレアル・ベティス(同21)、9位のレアル・ソシエダ(同21)よりも少ない。

 ラ・リーガのみならず、ここまでレアル・マドリーはチャンピオンズリーグ(CL)でもファンの期待を裏切るパフォーマンスを繰り返してきた。それはディエゴ・シメオネ率いるアトレティコも同じだ。アトレティコはCLでは決勝トーナメント進出の希望がほぼついえただけでなく、ビセンテ・カルデロンからワンダ・メトロポリターノに本拠地を移してからは、ホームゲームのたびに苦戦を強いられるようになっている。

 一方、バルセロナに大きな期待はかかっていなかった。ネイマールを失い、代役となり得る即戦力の補強にも失敗した今季は、とりわけ前線の戦力が手薄だ。さらには目玉補強となったウスマン・デンベレも早々に負傷離脱してしまった。

バルセロナは素晴らしいスタートダッシュを実現したが……

バルセロナは早くも12ゴールを量産しているメッシにけん引され、素晴らしいスタートダッシュを実現 【Getty Images】

 こうした背景とは裏腹に、バルセロナは早くも12ゴールを量産しているリオネル・メッシにけん引され、素晴らしいスタートダッシュを実現した。ここまでリーグ戦で勝ち点を失ったのは、アトレティコと敵地で引き分けた1試合のみだ。それもカタルーニャ自治州議会が一方的に独立を押し進める中で、不安定な政情がリーグにも影響を及ぼしはじめた中での一戦だった。

 実現性は低いとはいえ、カタルーニャが独立した際には今季のラ・リーガを最後まで戦えるかどうかも分からない状況下、バルセロナは輝かしいプレーを見せることなく、ルイス・スアレスも極端なスランプに陥り、メッシに頼り切りになりながらもライバルとの差を広げてきた。

 マドリーの2大クラブが足踏みを続ける中、バルセロナのライバルとして浮上してきたのがバレンシアだ。マルセリーノ・ガルシア・トラル率いるチームは何年も続いてきた低迷期を乗り越え、あらゆるピッチで強さを発揮できる得点力の高いチームに豹変(ひょうへん)した。メスタージャにバルセロナを迎え撃つ第13節の大一番では、彼らがタイトルを争うにふさわしいチームなのか、一時的に好調なだけなのかが問われることになる。

 今季のバルセロナは奇妙なチームだ。ボールポゼッションでは上回りながら、守護神のマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンが勝敗を分けるキーマンとなった試合がいくつもある。偉大なるスター、メッシの力を最大限に生かすこともできておらず、ベテランの域に達したアンドレス・イニエスタはハイレベルなプレーを維持しているものの、年々コンディションの維持が難しくなってきている。

 ネイマールを失った後はメッシ、スアレスに続く3人目のFWとなる選手が定まらず、エルネスト・バルベルデ監督は4人のMFを起用することで補ってきた。バルセロナのプレースタイルとの相性が疑問視されていたパウリーニョがスムーズに適応し、中盤で即戦力として機能していることが唯一の救いだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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