ベルギーリーグで輝く2人の日本代表 森岡と久保は特徴の異なるトップ下に

中田徹

チームコンセプトにハマった森岡

ベルギーリーグで共に好調をキープする森岡(右)と久保 【Getty Images】

 日本代表復帰の報を受け「キターっ!」と森岡亮太(ベフェレン)は思ったのだという。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の代表発表記者会見は10月31日のこと。その前日に森岡は朗報を聞いた。ゴールとアシストを重ねたポーランドリーグのシロンスク・ヴロツワフ時代、森岡が日本代表に呼ばれることはなかった。それも無理はない。ハリルホジッチ監督自身「森岡は知っていたが、興味はなかった」と明かしたのだから。

 森岡は、11月4日(現地時間、以下同)のムスクルン戦で左からのクロスを、高い打点のヘッドで合わせてチームに先制点をもたらした。相手GKが一歩も動けなかった豪快かつ完璧なヘディングだった。Jリーグ、ポーランドリーグで「一回もヘディングのゴールはなかった」と本人が振り返るほど、空中戦の強さとは無縁だった男が、偶然のようなヘディングシュートをベルギーで決めてから、今やゴールへの確信を持ってゴール前でクロスを待っている。今季7ゴールのうち、実に3つが頭で決めたゴールなのである。

 べフェレンのスカウトは、フィジカルとロングボールに頼るサッカーをしていたヴロツワフを見て、「森岡はこのチームに合わない。うちのチームなら森岡はピッタリと合う」と思っていたそうだ。べフェレンは小クラブで、1部リーグ残留を目標としているクラブだ。それでも、しっかりボールをつないで攻撃的に試合を進めるコンセプトがクラブ内で共有されており、「森岡こそ、うちのチームにハマる選手だ」という確信を得て、ポーランドからベルギーに連れてきたのだ。

 そのことを証明するのが、14節を終えて森岡が7ゴール(リーグ2位タイ)、8アシスト(リーグ2位)という個人成績に加え、ストライカーのアイサック・テリンが8ゴールで得点王争いの首位に立ち、ジーニョ・ガノ(オーステンデ)も7ゴールを決めていることだ。

チームメートの得点王争いを支える

アシストのみならず、自らの得点シーンも増えてきた森岡(左) 【Getty Images】

 今季開幕した頃、トップ下の森岡が組んだストライカーはガノだった。ガノがゴールゲッター、森岡がアシスト役となって、瞬く間に2人は素晴らしいコンビを組むようになった。しかし、開幕から調子が良すぎるのも小クラブにとっては考えもので、3節を終えて4ゴールと絶好調のガノは、オーステンデのオファーを受けて移籍していった。

 しかし、森岡にはすぐに新たな相棒が見つかった。アンデルレヒトでくすぶっていたストライカー、テリンが期限付きでベフェレンにやってくると、移籍後初ゲームとなったオイペン戦(9月9日)で1ゴール3アシストと固めどり。一気に森岡と黄金のコンビを組むようになったのだ。

 シュート力、高さ、くさびでの懐の深さなど、ガノとテリンには共通するところも多いし、もともとのポテンシャルも高い。だが、その才能を存分に生かすには、気の利いたラストパサーが必要である。この2人が得点王争いの上位に君臨していることは、森岡の支えも見逃せない。

 このような能力の高い長身ストライカーとコンビを組むことによって、森岡の180センチの身長も生きている。189センチでシュート力の高いテリンには、相手のセンターバックが絶対に付いてくるから、その前後にはポケットが生まれる。ムスクルン戦の森岡のヘディングゴールは、テリンをおとりにしてゴール前に飛び込んでいって決めたものだった。

 左サイドバック、エルディン・デミルのクロスを受けて、コルトライク戦に続くヘディング弾を決めた森岡は、「またもやボールが良かったので」と言ってから、「今回に限っては(自分の)ヘディングも良かったですね」と言って笑った。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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