北中米カリブ海王者パチューカ低迷の理由 本田に期待される柔軟性、豊富な経験

池田敏明

18チーム中12位に低迷

パチューカは今季の国内リーグで中位に甘んじている 【写真は共同】

 本田圭佑の加入により、日本での知名度が大幅にアップしたメキシコのパチューカ。2016−17シーズンのCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズリーグ(CL)王者として12月にFIFAクラブワールドカップ(W杯)に出場する立場でありながら、リーガMXの2017前期リーグでは第16節終了時点で18チーム中12位に甘んじている。リーガMXでは開幕から3連敗を喫し、その後、3連勝して持ち直したかに見えたが、再び3連敗と不安定な戦いが続いた。高額な年俸で加入しながら右足のけがで出遅れた本田が地元メディアからスケープゴートにされる一幕もあった。

 北中米カリブ海王者が中位に低迷している理由は、いったいどこにあるのだろうか。そして、本田は何を求められてパチューカに加入し、現状でクラブやチームからの期待に応えることができているのだろうか。

16−17シーズン後半から得点力不足に

 まず、現状と比較するためにパチューカの16−17シーズンの成績を見てみよう。リーガMXの2016前期リーグは17試合で9勝4分け4敗、36得点21失点で2位という好成績を残した。上位8チームが進出する「リギージャ」と呼ばれる決勝トーナメントでは1回戦でネカクサに敗れ、残念ながらタイトルには手が届かなかったが、上々の成績と言える。また、同時期に行われていたCLのグループステージでは、4試合で3勝1分け、19得点4失点という抜群の成績でノックアウトステージ進出を果たしている。特に第3節のポリス・ユナイテッド(ベリーズ)戦では大会新記録となる11ゴールを奪っており、チームとしての充実ぶりがうかがえた。

 しかし、17年に入ると状況が変わる。リーガMXの2017後期リーグでは6勝6分け5敗、16得点16失点で10位となり、リギージャ進出を逃してしまった。17試合で16失点と守備では高い安定感を見せていたが、わずか16ゴールしか奪えなかったことが中位低迷の要因となった。開幕2連勝と好スタートを切り、シーズン半ばまでは上位を維持していたが、第11節ケレタロ戦から6試合連続ノーゴールと急激な得点力不足に陥り、最終的にはリギージャ圏内から脱落してしまった。

CLや代表ウイークで抱えた疲労の影響も

16−17シーズンのCLを制したが、後半から得点力不足に陥っていた 【写真:ロイター/アフロ】

 突如の不調に陥ったのは、CLや代表ウイークと無関係ではないだろう。グループステージは格下の相手ばかりだったため余裕を持って戦えたが、2月下旬にスタートしたCLのノックアウトステージでは、準々決勝の相手がデポルティーボ・サプリサ(コスタリカ)、準決勝がFCダラス(米国)、そして決勝はメキシコのティグレスと強豪相手の試合ばかりで、パチューカとしてもフルメンバーでの戦いが求められた。

 スケジュールを見ると、3月15日にFCダラスとの準決勝第1戦をアウェーで戦い、中2日の18日にケレタロ戦に臨んで0−3の完敗を喫している。その直後には代表ウイークがあり、各国代表に名を連ねる選手たちはそちらでの活動も余儀なくされた、前述のケレタロ戦からリーガMXで不振に陥ったことを考えると、CLや代表ウイークで抱えた疲労の影響は否定できない。

 また、中南米のチームは国内リーグよりも国際大会を重視する傾向があり、CLやコパ・リベルタドーレスで上位進出を果たしたチームが、国内リーグで苦戦を強いられ、残留争いに巻き込まれる事例もそれほど珍しくはない。国際大会と国内リーグ、両コンペティションを両立させることの難しさを考えた時に、パチューカがCL制覇に高い比重を置いたとしても不思議ではない。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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