北中米カリブ海王者パチューカ低迷の理由 本田に期待される柔軟性、豊富な経験

池田敏明

本田を獲得したのは、エースを引き抜かれたから

攻撃ユニットを再構築する必要性に迫られたため、本田らを獲得した 【写真:ロイター/アフロ】

 16−17シーズンのCLを制したパチューカだが、リーガMXでは最後までその強さを維持していたわけではなかった。さらに17−18シーズンを迎えるにあたり、チームにはエースストライカーのイルビング・ロサーノがPSV(オランダ)に引き抜かれるという、戦力的に見て決して小さくない変化が起こった。

 ディエゴ・アロンソ監督が率いるパチューカは「4−2−3−1」や「4−3−3」のフォーメーションを採用することが多く、ロサーノは主に左サイドでプレーしていた。得点力、アシスト力共に高く、CLでは8ゴールを挙げて得点王にも輝いている。彼が左サイド、センターFWにフランコ・ハラ、右サイドにチーム内アシスト王のホナタン・ウレタビスカヤ、トップ下やインサイドハーフにビクトル・グスマンという攻撃ユニットはコンビネーションも抜群で、まさに「チームとして攻撃が機能している」状態だった。

 そこからロサーノが抜けたことで、アロンソ監督は攻撃ユニットを再構築する必要性に迫られた。そこで獲得したのが本田であり、エドソン・プッチ、アンジェロ・サガルといったチリ代表歴を持つアタッカーたち。レオンに期限付き移籍していたヘルマン・カノも呼び戻した。

 2017前期リーグは、この人材の豊富さがマイナスに作用していた。アロンソ監督は相手や状況によって複数のフォーメーションを使い分け、ローテーションも積極的に活用する指揮官で、開幕当初からさまざまな選手の組み合わせで試合に臨んでいた。しかし各選手が個人技に走りがちで、昨シーズンのように連係で切り崩す場面は少なく、また陣形が間延びし、攻守両面で連動性を欠くという問題を抱えていた。開幕当初の不振は、ここに原因があったと推察できる。

 試合を重ね、新戦力が順応するにつれて、これらの問題は解消されつつある。陣形がコンパクトになって選手間の距離が近くなり、テンポよくパスが回るようになるとともに、連動した守備も見られるようになった。最近は本田が右サイドに入ってウレタビスカヤが左サイドに回り、両サイドから効果的な攻撃を仕掛けるシーンも増えてきた。

監督は本田の柔軟性や経験を高く評価

アロンソ監督は本田の「柔軟性」や「得点力」などに期待を寄せている 【写真:ロイター/アフロ】

 前期リーグは残り1試合で、リギーシャ出場の可能性もなくなった。クラブW杯、そして後期リーグに向け、本田はどのような役割を果たすべきなのか。

 アロンソ監督は複数のポジションをこなせる本田の「柔軟性」を高く評価しており、最近の試合で見せている「試合をコントロールする力」や「得点力」にも期待を寄せている。そして、何より生かしてほしいのは彼の「豊富な経験」だろう。パチューカに限らず、メキシコのクラブは内弁慶なところがある。CONCACAF圏内では強さを発揮するが、クラブW杯などインターコンチネンタルの舞台では勝負弱さ見せることが多々あるのだ。本田自身も「パチューカには若い選手が多く、ヨーロッパなどのチームと試合をする国際経験が足りない」と語っている。だからこそ2度のW杯を経験し、ヨーロッパで何年もプレーした経験をチームに還元しなければならない。

 クラブとしては、本田のビジネスマンとしての資質も捨てがたい才能だろう。ヘスス・マルティネス・パティーニョ会長は、いくつもの事業を展開するやり手のビジネスマンである。現在は雇用主(パティーニョ会長)と被雇用者(本田)という関係かもしれないが、いずれ両者が対等のビジネスパートナーとしてタッグを組む日が来るかもしれない。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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