低迷と迷走が止まらないバレンシアの惨劇 安易な経営権の売却、支払った大きな代償

降格圏に近い16位に低迷

かつての強豪バレンシアが今季は低迷。苦しいシーズンを送っている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 2002、04年のリーガ・エスパニョーラ優勝に、00、01年のチャンピオンズリーグ決勝進出。遠い昔の出来事のように思えるが、バレンシアは00年代の初めに素晴らしい結果を出していた。

 それが今では、終わりの見えない嵐の中をさまよい続けている。

 今季のバレンシアは上位陣より降格圏にほど近い、18位スポルティング・ヒホンと勝ち点6差の16位に低迷している(2月10日現在)。だが問題は数字だけでなく、経営陣の迷走に現場が足を引っ張られている状況にある。

 先週末の一戦は、落ちるところまで落ちたと言うべきものだった。質の高い選手を多数抱えながらもチームを立て直せずにいるかつての強豪は、もはやホームでエイバルに0−4と大敗したところでサプライズと受け止められることもなくなった。そんなバレンシアの惨状は、今やヨーロッパ中から注目を集めるようになっている。

経営権の売却を考えているクラブへの警告

ナニら高額な選手を擁するも、経営陣の迷走により大きな代償を支払っている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 ナニ、ムニル・エル・ハダディ、ダニエル・パレホ、ジエゴ・アウベス、ガヤ、エセキエル・ガライ、エリアキム・マンガラ、エンソ・ペレス、マリオ・スアレス、サンティアゴ・ミナ、マルティン・モントーヤ、ギリェルメ・シケイラ――。バレンシアはスペインで4番目に高額な選手たちを抱えるチームであり、年間予算は1億5000万ユーロ(約181億円)にも及ぶ。そんなチームがここまで低迷するのは理解し難いことだ。

 この現象を理解するためには、クラブ内部へと目を向ける必要がある。フットボールという競技を十分に理解せぬまま間違った経営を行えば、大惨事を引き起こしかねない。バレンシアのちょう落は、借金苦を逃れる手っ取り早い方法として経営権の売却を考えている全てのクラブに警告を発しているのだ。

「バレンシアを普通の会社と同じものと勘違いし、現場に重点を置かなかったことはわれわれの間違いだった」

 かれこれ1年もホームのメスタージャに姿を見せていないオーナーのピーター・リムの要請を受け、昨年にフロント入りした元外交官のアニール・マーシーは、そう言って経営陣の落ち度を認めている。

「フットボールはベーシックなビジネスであると理解した。全ては選手という若者の集団が抱く野心をうまく扱えるかどうかにかかっているのだと」

 彼はこうも語っているが、これは少々簡略化しすぎな考え方のように思える。いずれにせよ彼は、新たな経験を積むためではなく、そうした知識を備えた上で新たな役職に就くべきだった。クラブの現状はその代償に他ならないからだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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