ようやくバレンシアに訪れた幸福の時 得点力が向上し、クラブの無敗記録を更新

08−09シーズンのクラブ記録を上回る

バレンシアは08−09シーズンに打ち立てた開幕8戦無敗のクラブ記録を更新(写真は当時のもの) 【写真:ロイター/アフロ】

 10月21日(現地時間)に行われた、第9節のセビージャ戦を4−0の大勝で終えた時点で、マルセリーノ率いるチームは08−09シーズンにウナイ・エメリ監督が記録した開幕8戦無敗(6勝2分け)のクラブ記録を上回った。

 6勝3分けの勝ち点21は同25の首位バルセロナにこそ及ばないが、同20のレアル・マドリー、同19のアトレティコ・マドリーを抑えて2位につけている。しかも両者とは対戦済みで、レアル・マドリーとはアウェーで2−2、ホームで対戦したアトレティコとも、0−0で引き分けている。

 11月末に行われる第13節では、バルセロナをホームに迎える首位決戦を控えている。だが、すでに前半戦ではマドリーに本拠地を置く2強と、勝ち点を分け合っただけでなく、レアル・ソシエダを3−2、アスレティック・ビルバオを3−2、セビージャを4−0で下している。今後の見通しはかなり明るいと言えるだろう。

 選手たちは自信に満ち溢れている。それはザザが発した「メスタージャ(バレンシアのホームスタジアム)に来るチームは苦しむことになる」というコメントにも表れている。クラブは新たなスポーツディレクターを置くことなく、マルセリーノに選手の補強と放出の権限を一任することを決めた。それはスペインのクラブでは珍しいことである。

 さらにセビージャ戦ではゲデスが大活躍した。彼は今夏にパリ・サンジェルマン(PSG)から期限付き移籍してきた選手だ。クラブは完全移籍での獲得を検討しているが、PSGは彼の獲得時に3000万ユーロ(約40億円)の移籍金をベンフィカに払っているだけに、交渉は簡単にはまとまらないだろう。

頓挫していた新スタジアム計画も再開

新スタジアムの建設計画も再開するなど、ファンの期待は日に日に高まっている 【Getty Images】

 ただ、良いことは続くもので、09年から手付かずになっていた新スタジアム建設の再開も決まった。ヌエボ・メスタージャと名付けられた新たな本拠地は、21年の完成が予定されている。

 元々のプランでは7万人以上を収容する予定だったが、新たな設計案では6万人弱の収容に規模が縮小され、ローマのホームスタジアムであるオリンピコよりも、ビルバオのサン・マメスに近いコンセプトが打ち出された。それはフットボール以外の用途も念頭に入れながらも、何よりスタンドとピッチの距離を近くし、良い雰囲気を作り出すことに重点を置いたことを意味する。

 何年も続いた迷走の時期を抜け出し、ようやくバレンシアは幸福を感じられる時を迎えた。ソシオたちの期待感は日々高まっている。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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