キャブズのライバルはキャブズだけ? カイリー移籍後も、優勝候補の筆頭に

杉浦大介

波紋を呼んだアービングのトレード志願

カイリー・アービング(左)のトレード志願は大きな衝撃を与えた 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 現役ナンバーワンプレーヤーのレブロン・ジェームズが率いるチームから、自ら放出を望む選手が出てくるとは……。今オフ、NBAを襲った最大の衝撃は、3年連続でNBAファイナルに進んだクリーブランド・キャバリアーズ(以下、キャブズ)からカイリー・アービングがトレード志願したことだった。

 本人の希望がかない、アービングは8月22日(現地時間、以下同)にボストン・セルティックスに移籍。今季も大本命になるはずだったイースタン・カンファレンスの雄は、ここでチーム作りに変化を強いられることになった。過去5年で4度もオールスターに選ばれたエリートポイントガード(PG)が不在になれば、大幅な戦力ダウンは避けられないところだろう。

 しかし結局のところ、キャブズは今季も依然としてイースタンの優勝候補筆頭に挙げられている。10月25日、ブルックリンでのネッツ戦に臨んだ陣容を見る限り、それほどの心配は必要ないようにも思えた。

PGはレブロンに適したポジション?

PGとして巧みなパスさばきを披露するレブロン。献身的な彼には適した仕事なのかもしれない 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 決して広いとは言えないロッカールームに、レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、ケビン・ラブ、デリック・ローズ、アイザイア・トーマスらスーパースターが集まった姿は壮観だった。サポーティングキャストにも、ジェイ・クラウダー、J.R.・スミス、トリスタン・トンプソン、カイル・コーバー、ジェフ・グリーン、ホセ・カルデロンといった実績ある選手がずらりとそろっている。

 アービングが抜けた後ですら、“パワーハウス”という形容がぴったり。豪華メンバーに囲まれ、直近の2戦ではレブロンがPGとして巧みなパスさばきを披露している。

「PGを務める日は、特にトランジションの際には、周囲の選手たちをよりよく見るようにしている。速攻でスピードを出し過ぎず、簡潔にパスを出す。特に好調な選手たちにボールを回し、それでいて必要な際には、自身がアタックモードに入るんだ」

 もともと重要な場面ではボール運びを担当することが多かったレブロンだが、ネッツ戦では開始直後から司令塔役を務めていた。身長203センチ、体重113キロの大型PGは、この日は29得点、13アシスト、10リバウンドで今季初のトリプルダブルを達成。数多くの武器を上手に使いこなすのは、コート上での視野の広さと、アンセルフィッシュ(献身的)なプレー態度で知られるレブロンに適した仕事なのかもしれない。

ベテラン中心の陣容、不安はコンディション面に

セルティックスから移籍したトーマス(3)は股関節を痛め、年末までは出場できない 【Getty Images】

 もっとも、そんなキャブズとレブロンにも、もちろん懸念材料がないわけではない。アービングを放出する代わりに、セルティックスから昨季平均28.9得点のトーマス、守備の良いクラウダーを獲得できたのは良いリカバリーだった。その周囲にウェイド、ローズといったビッグネームを散りばめたのも理解できる。ただ、こうしてベテラン中心の陣容になったことで、コンディション面に不安が出てきている。

 股関節を痛めたトーマスは少なくとも年末まで出場できず、復帰後もピークの力が発揮できる保証はない。これまで度重なるけがに見舞われてきたローズ、35歳になったウェイドも1年を乗り切るスタミナには不安がある。

 案の定、トーマス、ローズ、ウェイドは25日のネッツ戦ではそろって欠場。レブロンに司令塔役が適任なのは前述通りだが、先発PGとしての起用はけが人が多いゆえの“苦肉の策”でもある。そして、この日のネッツ戦ではレブロンの良さこそ引き出されたもののキャブズは107−112で苦杯を喫した。

「40分にわたってボールをさばかなければいけないというプレッシャーが、レブロンににのしかかっている。PGのポジションは負担がかかるんだ。残念ながら、ローズとウェイドが戻るまでは他に選択はないけれど……」

 ネッツ戦後、ティロン・ルーHCも心配そうな顔でそう述べていた。超大型PGに魅力があるのは事実だが、シーズンの早い時期からレブロンに負担がかかりすぎるのは考えもの。やはりトーマス、ローズがボール運びをするのがベストの形だけに、けがに苦しむ2人の早期復帰が待たれるところだ。そして今後、ベテランぞろいのロースター(登録選手)をルーHCがどう起用していくかも重要になってくるはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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