歴史的チームだった今季のウォリアーズ 初戴冠のデュラントが払った多くの犠牲

杉浦大介

勝負を決めたスーパースコアラー

MVPを獲得したデュラント。ファイナルでもその得点力は際立っていた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「ケビン・デュラントのファイナル」――。ゴールデンステイト・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズ(以下、キャブズ)が史上初めて3年連続で激突した2017年のNBAファイナルは、今後、そんな風に記憶されていくのかもしれない。

 6月12日の第5戦を地元で制したウォリアーズが、3年越しの「トリロジー(3部作)」を勝ち越した。MVPを獲得したのは平均35.2得点、8.4リバウンド、5.4アシストをマークしたデュラント。メーンキャストの大半が過去2年と同じだったが、勝負を決めたのは昨オフにウォリアーズに加わった痩身(そうしん)のスコアラーだった。

「(苦しいときに)鼓舞してくれるチームメートがいた。それこそが誰もが人生で必要とするものだ。シーズンを通じてずっとそうだったのが素晴らしい。今ここでその選手たちと一緒にいられるというだけで素晴らしいよ」

 ファイナル終了後、デュラントはそう語って仲間たちに感謝をささげた。しかし、少なくともこのシリーズ中に関しては、感謝したいのは他の選手たちとウォリアーズのファンの方だったかもしれない。 

 全5試合でチーム最多得点。敵地での第3戦では終了間際に逆転のスリーポイントシュートを沈めて貴重な勝利を手にした。そして、第4戦で敗れた後、巨大なプレッシャーの中でプレーした第5戦でも、デュラントの得点力は際立っていた。

4度の得点王も無冠だったデュラント

 最大17点差をつけられながら、キャブズも昨季王者の意地をかけて後半に猛追。しかし、第3クォーター(Q)終盤に4点差に迫られても、第4Q開始早々に3点差まで追い上げられても、そのたびに背番号35が冷静にジャンパー(ミドルシュート)を突き刺し続けた。

 コート上では決して表情を変えず、長いリーチを生かしてガード不可能なロングジャンパーを放つ「サイレント・アサシン(狙撃ライフル)」。そんなデュラントの切り札的な活躍は、キャブズの選手たちとファンに絶望感を与えたに違いない。

「ケビンの歴史は非常に独特だ。ただうれしいよ。彼はこれまでも素晴らしいキャリアを築いてきたが、それを次のレベルに引き上げた。シーズンを通じて素晴らしかったし、このシリーズでも見事だった。支配的だったね」

 スティーブ・カーヘッドコーチはそう述べて目を潤ませたが、実際にここにたどり着くまでのデュラントの道は容易なものではなかった。

 オクラホマシティ・サンダー時代に4度も得点王になったが、9シーズンで優勝は1度も果たせなかった。昨年のオフにFA権を得ると、2年連続でファイナル進出を果たしていたウォリアーズに移籍。サンダーのエースとして臨んだ昨季プレーオフで激闘の末に敗れたライバルチームとの契約を選んだことは、多くのファンを驚かせ、そして少なからず失望させた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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