渡邊雄太が挑むNCAAラストシーズン 「今年は僕がエースとして引っ張る」

杉浦大介

渡邊雄太にとっては勝負の年となる大学ラストシーズン。開幕を前に意気込みを聞いた 【Getty Images】

 日本生まれの男子選手としては史上4人目のNCAAディヴィジョン1プレーヤーとなったジョージ・ワシントン大学の渡邊雄太。ついに4年生を迎え、勝負のシーズンが間もなく始まろうとしている。悲願のNCAAトーナメント出場に向けて、今年が最後のチャンス。“NBAに最も近い日本人”と呼称されてきたサウスポーにとって、NBAのスカウトたちにアピールしなければいけない大事なシーズンでもある。

 10月6日、今年は母校のエースとしての働きが期待される渡邊に話を聞いた。過去、現在、未来について熱っぽく語る姿からは、今シーズンにかける強い意気込みが透けて見えてくるかのようだった。

「NCAAトーナメントに出るのが最低限の目標」

――まず4年生として迎える今季の目標を聞かせてください。

 僕はNCAAトーナメントにまだ1回も出場できていません。今年が最後のチャンス。これを逃したら僕の人生の中でもう2度とNCAAトーナメントに出るチャンスはないので、何としてもトーナメントに出場したい。それが最低限の目標ですね。

――そのためには渡邊選手の活躍が必要ですね。

 今年は僕がエースとしてチームを引っ張っていかなければいけません。1〜3年まではとにかく自分の役割をこなすという感じだったのですが、今年はディフェンス面では常に相手のエースをマークして、オフェンスでは自分が点を取って、さらにリバウンドも取って、チームメートのためにアシストもして……。ベストプレーヤーとしてすべての面に取り組んでいくつもりです。自分自身でもステップアップする必要があると思っています。

――去年はチーム1の平均18.3得点を挙げたタイラー・キャバナーというエースがいました。彼が不在になって、練習中から自分への負担の大きさは感じますか?

 タイラーが抜けたというのはやはり大きいです。そこを埋めなければいけないということの重要さは感じています。

――渡邊選手個人としても、1年生時は平均7.2得点、2年生時は8.4得点、3年生時は12.2得点と過去3年の間に数字は確実に伸びています。NCAAディヴィジョン1の舞台でより良いプレーヤーになれているという実感はありますか?

 はい、あります。

――特に自信を持てている部分は?

 まずはディフェンスですね。去年はほぼ全試合で相手チームのエースをマークして、けっこう抑えることができていました。そこはかなり自信になっています。また、去年のシーズン終盤までには、ミドルレンジからの(プルアップ)ジャンパーが武器として確立していきました。僕のガードにつく選手はたいてい6’4”(=193.04センチ)、6’5”(=195.58センチ)くらいの自分より小さい選手たち(渡邊は203センチ)だったので、相手の上からシュートを打ち、高確率で決められる試合がありました。ミドルジャンパーは1つの武器として使えるという手応えが出てきています。

――1年生時からロングジャンパーは周囲にも評価されているという話をしてくれていました。1〜2年目(34.8%→30.6%)の間に3ポイントシュートの成功率はダウンしましたが、去年は31.4%と持ち直しましたね。

 3ポイントの確率はあまり上がっていませんが、自分の中ではまだ1つの武器として使えると思っています。パーセンテージ自体はそれほど高くないですけれど、チームメートやコーチも僕のスリーはある程度信頼してくれていると思います。自分の武器の1つとして使い、今年は数字も上げていかないといけませんね。去年は成功率30%ちょいくらいだったんですけれど、40%は決められるようにしたいです。

フィジカル面での弱点を克服

渡邊は「もっと低くドリブルできるようにならないといけない」と課題を語った 【杉浦大介】

――他に改善が必要と感じている部分は?

 ドリブルがまだ高いことです。ピック&ロールの際などにもディフェンスに手を当てられたりとか、そういうことがまだ多い。米国人は手が長いですし、日本にいた頃のままの感覚でプレーしていると、クロスオーバーなどしたらすぐに取られてしまう。もっと低くドリブルできるようにならないといけません。正直、ドリブルはまだ武器としては挙げられないので、伸ばさなければいけない点です。

――1年生の頃はフィジカル面を改善点として挙げていましたが、かなり身体が大きくなって、そこまで意識することなくなりましたか?

 まだ弱点の1つではあると思いますが、自分は昔からずっと身体が細くて、それでもやってきているので、もう押し負けるというのは気にならないですね。相手の方が力は強いというのは分かっているので、それ以外のところで勝負していきたいです。ただ、自分の中で一番強い状態でいなければいけないとは思っています。(フィジカルの)数字は上がってきているので、ウェイトは常にやり続けたいです。

――確かに去年くらいから押し負けるシーンはほとんど見なくなった印象もあります。

 正直、身体の強さは慣れも大きいです。身体が弱くても、慣れているのと慣れていないのでは全然違う。米国に来て、けっこう時間が経って、大学生の身体の強さには慣れてきました。

――今さらですが、米国と日本のバスケットボールを両方経験してきて、最も大きな差はどこに感じますか? パワー? スピード? それともすべてでしょうか。

 すべて、ですね。フィジカルの面は全然違いますし、一言では言い表しにくいです。プレーの激しさの部分なんかは、やっぱり米国でプレーすると、日本とはまったく違うなという感じです。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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