マラソンでの勝負を決めた設楽悠太「記録よりも日本人に負けない選手に」

折山淑美

ベルリンマラソンで自己ベストを更新

今年2度のマラソンレースで、積極的な走りを見せた設楽悠太。20年東京五輪へ向け、成長を見せる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 2019年9月以降に開催される、東京五輪マラソン代表選考会の「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」へ向けた「MGCシリーズ」が8月から開始。その中で、設楽悠太(ホンダ)が自身2回目のマラソンとなるベルリンマラソン(9月24日)で、自己記録の2時間9分3秒で6位となり存在感をアピールしている。

 初マラソンだった今年2月の東京マラソンではインパクトのある走りを見せた。先頭集団が世界記録を上回るペースで走る中、10キロ過ぎからは単独で集団を追いかけ、中間点は先頭と33秒差の1時間1分55秒で通過。25キロまでは日本記録を大きく上回るペースで走った。

 35キロからは5キロのラップタイムが16分41秒と脚色が鈍って井上大仁(MHPS)と山本浩之(コニカミノルタ)に抜かれて日本人3番手の11位となったが、記録は2時間9分27秒。前半をハイペースで突っ込みながらも、うまくまとめるレースをしたのだ。

「東京マラソンの日本選手は集団でレースを進めて後半に追い上げるような展開が多いけど、それだと勝ち目はないし、日本選手でも攻めのレースをしなければ戦えないと思って。それを誰かがやらなければいけないと思ったし、僕がやったことでほかの選手もやってくれるようになると考えていました。だから記録にはこだわらずに最初から攻めていって、後半潰れてもいいという気持ちで走りました。でもあそこで2時間9分台で走れたので、これから後半の失速を抑えられるようになれば今のタイムより1分以上は良くなると思います。将来的には日本記録を出すことを目標にやっているので、焦らずに少しずつ自己記録を縮めていければいいと思っています」

雨の影響で失速も「これもマラソンの難しさ」

ベルリンマラソンでは後半の失速はあったものの自己ベストを更新。最低限の走りを見せた 【写真:ロイター/アフロ】

 初マラソンの東京では、ゴールまでを計算して走ったわけではなかった。先頭集団はハイペースで入ったが、まずは自分が行けるところまで行こうとだけ考えていた。

「東京は中途半端なレース展開になってしまったが、あれは僕にとっていい経験になったというか、ひとりで前を追う難しさを知るレースにもなったので。だから2回目のベルリンでは第2集団でレースを進めて、後半粘れる走りをすればいいと思っていました」

 こう話すようにベルリンでは最初の5キロを14分51秒で入り、その後も20キロまでは5キロ15分を切るペースで進み、中間点通過は1時間2分57秒だった。

 だが後半は雨の影響で路面が滑ったのに苦しんでそこで力を使ってしまい、終盤の失速につながったという。30キロ以降は15分43秒、16分17秒という5キロのラップタイムで走り、失速はしたがそれでも最低限の目標であった自己記録更新は果たした。

「欲を言えばもうちょっといきたかったというのはあるけど、これもマラソンの難しさだと思うので。所属するチームにはマラソン経験者も多くて『あとは経験を積むしかない』と言われているので経験を積み、もっと上の大会でしっかり勝てるような選手になりたいと思います」と設楽は言う。

1/2ページ

著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント