逆境サトノダイヤモンド凱旋門賞勝算は? 最強の天才少女エネイブルが立ちはだかる

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世界ナンバーワンの芝最強馬決定戦、凱旋門賞に日本のサトノダイヤモンドが挑戦する 【写真:アフロスポーツ】

 世界ナンバーワンの芝ホースを決める頂上決戦、『凱旋門賞』が現地時間10月1日(日)、フランスのパリ郊外にあるシャンティイ競馬場2400メートル芝で開催される。欧州競馬伝統の一戦。ヨーロッパの競馬関係者はもちろん、世界中のホースマンたちが憧れ、目標とする世界最大級のレースだ。

 日本馬の挑戦は1969年のスピードシンボリから始まり、昨年のマカヒキまで18頭が通算20回挑戦。しかし、いまだ勝つことはできず、1999年エルコンドルパサー、2010年ナカヤマフェスタ、2012年&13年オルフェーヴルの、4度の2着が最高着順。過去の歴史の中で欧州調教馬以外は勝ったことがないという、その重い扉に手をかけてはいるものの、あともう一押しができずに跳ね返され続けている。

父と子、人馬ともにリベンジだ

 そんな日本競馬界の宿願に今年挑むのは、昨年の菊花賞、有馬記念を制したサトノダイヤモンド(牡4=栗東・池江泰寿厩舎)、同じ厩舎の僚馬で重賞4勝のサトノノブレス(牡7=栗東・池江泰寿厩舎)の2頭だ。

日本競馬界の宿願はサトノダイヤモンドによって達成されるか 【写真:中原義史】

 サトノダイヤモンドはここまで通算11戦7勝。昨年は菊花賞を快勝し同世代ナンバーワンとなり、続く有馬記念では1つ年上の古馬代表キタサンブラックをも打ち負かし、名実ともに現役日本最強ホースの1頭となった。単純な競走能力の高さはもちろん、誰もが見惚れる鹿毛の美しい馬体に、騎手の意のままに動くことができる気性の良さ・賢さと、まさに競走馬の1つの理想形とも言えるスーパーホースであることは異論のないところだろう。

 さらに、サトノダイヤモンドを取り巻く背景にも注目したい。同馬の父はあの無敗の三冠馬ディープインパクトだ。競馬にはあまり興味のない人でもその名前は知っているという希代のスターホースであるディープインパクトは、2006年に凱旋門賞に挑戦。地元フランス馬や欧州トップホースを押しのけ1番人気に支持されたが、直線で力尽き悲願はならなかった。このディープインパクトを育てたのが池江泰郎元調教師。そして、その息子がサトノダイヤモンドを手がける池江泰寿調教師だ。

 つまり、今年の凱旋門賞には人馬ともに子が父のために捧げる2つのリベンジの意味が込められている。

池江泰郎元調教師(前列左から2人目)は現在「サトノ」の馬を所有する里見治オーナーのアドバイザーを務めている。泰郎元調教師にとってもサトノダイヤモンドでの凱旋門賞勝利は自身のリベンジとなる 【写真:中原義史】

 いや、池江泰寿調教師にとってはもう1つ、大事なリベンジがある。12年と13年に2着と惜敗したオルフェーヴルのトレーナーこそが池江泰寿調教師その人なのだ。特に師にとって初の凱旋門賞挑戦となった12年オルフェーヴルの2着は「取りこぼしたのは、当時の僕の若さです。いまなら間違いなく勝たせることができていた」と振り返るほどの悔しい敗戦。そして、今回挑むサトノダイヤモンドは「総合力なら五分と五分」というほどの高い評価を与える逸材である。まさに満を持しての凱旋門賞再挑戦であり、池江泰寿調教師にとっては“3つのリベンジ”を果たし、かつ日本競馬界の悲願を果たす最高のチャンスがやって来たというわけだ。

 なお、もう1頭のサトノノブレスも父はディープインパクト。僚馬としてサトノダイヤモンドの勝利を手助けしつつ、こちらも一発大駆けを狙いたい。

前哨戦まさかの4着も本番巻き返しへ

 そんな日本最強チームで挑んだ欧州初戦が現地時間9月10日のフォワ賞。本番の凱旋門賞と同じシャンティイ競馬場の芝2400メートルで争われる前哨戦の1つだ。

 通常ならば、凱旋門賞、フォワ賞ともにロンシャン競馬場で開催されるのだが、ロンシャン競馬場が改修中のため、昨年、今年と2年続けてシャンティイで代替開催されている。起伏が大きく、芝も深いために日本の競馬場と比べて格段にタフさとスタミナが要求されるのが欧州競馬。ここにスピードに優れた日本馬が苦戦し続ける理由があるのだが、シャンティイはロンシャンに比べて速いタイムが出る芝。つまり、フランスの競馬場の中でも日本馬に合うコースと言われており、事実、昨年は日本馬のエイシンヒカリが芝1800メートルのイスパーン賞で10馬身差の大楽勝を披露し世界に衝撃を与えた。それゆえに日本馬が凱旋門賞を勝つチャンスは例年よりも大きいのではないか――そうした期待と評価は欧州競馬界にも浸透している。だからこそフォワ賞ではサトノダイヤモンドが1番人気に支持されたのだが、結果は最後の直線での伸びを欠き6頭立て4着に敗れてしまった(サトノノブレスは6着)。

 騎乗した主戦のクリストフ・ルメールは「最後の200メートルで止まってしまいました。今日は馬場がとても重かったことも影響したかと思います」と敗因を馬場に求め、また、「休み明けでまだ100%の状態ではない中よく走ってくれました」と、4月30日の天皇賞・春3着以来4カ月半ぶりの実戦であることも響いた。“勝って本番へ”が当然と見られていただけに、サトノ陣営、日本のファンにはショックの大きい敗戦だったが、その分、課題もはっきりと明らかになった。ロンシャンより時計が速いと言っても、雨で馬場が重くなればやはり日本馬は実力を発揮できない。このことが本番前に改めて分かり、実際に経験できたことは大きなプラス材料と考えたい。

 サトノダイヤモンドならば必ず学習して欧州馬場仕様の走りに適応してくるだろうし、何より池江調教師は「前哨戦70〜80%、本番で90%以上」と仕上げの過程を明かしている。サトノダイヤモンド自身が叩き良化型であることからも、間違いなく本番では調子をグンと上げて出走してくることだろう。もちろん前哨戦の敗戦を楽観視することはないが、ことさら悲観する必要もない。逆境を跳ね返すサトノダイヤモンドと陣営の底力を信じ、そして当日は快晴の良馬場でレースが行われることを願いたい。

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