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A代表に必要な個の力、選手発掘の重要性
2年半の内山篤体制を振り返る<後編>
後編のテーマは、A代表を担う選手に必要な個の力について。内山氏が感じた日本が養うべき能力とは?
後編のテーマは、A代表を担う選手に必要な個の力について。内山氏が感じた日本が養うべき能力とは?【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 日本を10年ぶりとなるU−20ワールドカップ(W杯)へ導き、7月のAFC U−23選手権予選で約2年半に渡る監督の任期を終えた内山篤氏へのインタビュー後編のテーマは、A代表を担う選手に必要な個の力について。世界の舞台で勝ち抜くために、若き日本代表には何が足りないと感じたのだろうか。内山氏は今後、日本が養うべき能力とともに、選手発掘の重要性を説いた。(取材日:2017年8月1日)

育成年代の指導者はA代表を意識すべき

――A代表を担う選手を育てていくために、より必要なことは何でしょう?


 年代別代表としては、もっと下の年代から国際経験を積み上げていくことが一番だと思います。言葉では「世界基準」と言えるのだけれど、実際選手にそれを意識させるのはなかなか難しい。


――選手が必要性を感じなければ、身につきようがないですよね。


 年代別の代表は特に、能力のある選手たちに国際試合を通じて意識を変えさせる場だと思います。たとえば国内では棒立ちでボールを受けても失わない選手もいるわけですが、国際試合でそれだと確実に刈られるぞ、と。でも言っても通じないので、体感するしかない。


――最終的な目標はA代表ですからね。


 サッカー選手なら、みんなそうでしょう。本当は年代別の代表監督はもちろん、トレセン(地域の選抜講習会)の指導者であってもA代表を意識しておかないといけないんです。選手はそこに行って、活躍したいんですから。それこそ本当のプレイヤーズファースト。「“内山ジャパン”はやめてくれ」と言ってきたのも、そういうことです。内山色の選手なんて要らないんですよ。


 A代表は別に○○ジャパンでもいい。ハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督)にはハリルさんのサッカーがあって、それに合う選手を選ぶということでいい。でも年代別代表は違いますよね。自分はどんな監督がA代表に来ても、やれる選手になってほしいと思ってやってきました。

選手の意識を変えた中村俊輔の言葉

内山氏はU−20W杯前に中村俊輔(右)に依頼し、選手の意識を変えるようアプローチしていた
内山氏はU−20W杯前に中村俊輔(右)に依頼し、選手の意識を変えるようアプローチしていた【写真:田村翔/アフロスポーツ】

――選手が選手を自分で育てていくような空気感を作ろうとしている印象がありました。


「選手が自分で勝ち取るしかない」とか言うじゃないですか。言葉では簡単にね。でも、それは投げやりに過ぎる。われわれ指導者がきちんと選手の意識に向かってアプローチしないといけないと思ってやってきました。実際に変わってくれていった選手は何人もいたと思います。


――たとえば、誰になるのでしょうか?


 けがをしてしまいましたが、小川航基(ジュビロ磐田)はその1人ですよね。堂安律(フローニンゲン/オランダ)も向上心を持ってトライし、いまは欧州の舞台へ挑戦している。冨安健洋(アビスパ福岡)もそう。彼らの中で海外に対する意識が、代表として世界のチームとやる中で、漠然としたイメージから現実的な目標になっていったと思います。


――そういう意識付けもされていましたよね。


 たとえば、世界大会前には中村俊輔(磐田)に来てもらって、いろいろと話してもらいました。彼はU−20のとき(1997年、当時はワールドユース選手権)に世界の8強まで行っていて、「自分はまあまあ世界でもやれる選手だな」と思ったそうです。


 Jリーグでも活躍して、A代表にも選ばれるようになった。でも(01年3月に)フランスとやったら、0−5で負けて何もできなかった。「なんだ、この差は」とね。日常のもまれ方の差がこういう差になるのか、と。選手にはU−20W杯で「そこそこやれた」くらいで安心してほしくないことを、俊輔を通じてあらかじめ言ってもらったわけです。

小川航基とは「もう少し早く出会いたかった」

U−20日本代表のエースだった小川。特別な資質を持つ彼とは「もう少し早く出会いたかった」という
U−20日本代表のエースだった小川。特別な資質を持つ彼とは「もう少し早く出会いたかった」という【写真:田村翔/アフロスポーツ】

――あらためて世界大会で「足りない」と感じた部分はありますか?


 やはり、「判断」でしょう。他カテゴリーでも見られますが、たとえば「縦に速く」と言えば、それだけになってしまったりする。逆に「崩す」となると、崩すことだけが目的になっているようなプレーが出てくる。


 相手を見て、状況を見て、味方を見て判断できていれば、そうはならないはずですが、実際にそういうことが起きる。U−20の選手たちにも、そういう要求を、相手を見ながら、戦い方を選ぶよう要求をしてきました。


――攻撃では距離感を近くして複数人が絡んでいくような、チームとして積み上げてきた攻めの効果が見えました。


 確かにそうですが、最後の精度は不足していた。それも事実です。そこには個の能力、クオリティーの部分も出てきます。


――高いクオリティーを持っているかどうか。


 練習すればシュートはうまくなります。でも、あの緊張感の中でいかにリラックスしてシュートを打てるか。これは素材として持っていないと。それも痛感しています。ペナルティーボックスの中の戦いはやはり独特なものがあるので、そこでやれる選手を見つけないといけないし、環境を与えないといけない。スカウティングの部分ですね。小川航基にもそういう資質があると思います。彼とは18歳ではなく、もう少し早く出会いたかったという気持ちもありますね。(編注:小川が初めて年代別代表に招集されたのは15年1月、U−18日本代表のロシア遠征)

川端暁彦
川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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