レアルが示した、バルサとのレベルの違い 優勝候補筆頭として迎えた新シーズン

この10年間で初めての優勝候補筆頭

スーペルコパを制したレアル・マドリー。リーガでも優勝候補の筆頭だ 【写真:ロイター/アフロ】

 混戦が予想された前評判とは裏腹に、2016−17シーズンのレアル・マドリーはシーズンを通してリーガ・エスパニョーラを支配し続けた。そして今季、彼らはこの10年間で初めて優勝候補の筆頭として開幕を迎えた。

 レアル・マドリーは近年、ライバルのバルセロナに大きな差をつけられ、その背中を追い続けてきた。

 バルセロナはヨハン・クライフが1990年代に植え付けたプレー哲学をほぼ常に尊重しながら、現在のポゼッションスタイルを確立してきた。対照的に、数年前までのレアル・マドリーは宿敵からの覇権奪回を焦るあまり、ジョゼ・モウリーニョの監督招へいや高額な選手を買いあさることで自ら混乱に陥り、自分たちのフットボールを見失ってきた。

 だがそれも、ラファエル・ベニテスが15−16シーズン早々に解任されるまでのことだった。ジネディーヌ・ジダンの指揮下、迷えるチームは落ち着きと良質なフットボールを取り戻し、然るべきタイトルの獲得とともに自信を取り戻すことができた。

 ジダンの指揮下では7つ目の獲得タイトルとなったスーペルコパ・デ・エスパーニャにて、レアル・マドリーはクリスティアーノ・ロナウドがほとんどピッチに立つ必要もなく、2試合共にバルセロナに快勝した(3−1、2−0)。今季もこの2チームがリーガ・エスパニョーラの2強であることに変わりはないが、この2試合は現時点でレアル・マドリーがバルセロナより数段上のレベルにあることを明らかにしたと言える。

見る者を納得させる強さ

スーペルコパで活躍したアセンシオ。現在のレアル・マドリーには見る者を納得させる強さがある 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 現在のレアル・マドリーにはただ勝つだけでなく、見る者を納得させる強さがある。しかもあらゆる問題を解決できる豊富な切り札がベンチに並んでいる。サンティアゴ・ベルナベウのセカンドレグで敗れた後、ジェラール・ピケは「この9年間で初めてレアル・マドリーより劣ると感じた」と話していたが、彼のことをマドリディスタ(レアル・マドリーのファン)だと非難することなど誰にもできない。

 今夏はバルセロナとのスーペルコパに加え、UEFAスーパーカップでもマンチェスター・ユナイテッドに完勝している(2−1)。スペイン、欧州、そしてクラブ世界一のタイトルを保有し、公式戦の連続得点記録は8月26日時点で69試合にまで伸びた。12月には世界一の座を維持すべく、再びクラブワールドカップに出場する。そんなレアル・マドリーが現時点で最もタイトルに近いチームであることは明らかだ。

 今夏は即戦力の補強に動かず、ダニ・セバージョス、テオ・エルナンデスらバックアッパーとなる若手有望株を加えるだけにとどまっている。それもジダンと現チームに対する自信の表れに他ならない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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