レアルが示した、バルサとのレベルの違い 優勝候補筆頭として迎えた新シーズン

独自の哲学を貫けなくなったバルセロナ

リーガ開幕戦は勝利も、バルセロナは以前ほど独自のプレー哲学を貫けなくなっている 【写真:ロイター/アフロ】

 対照的にバルセロナは2億2200万ユーロ(約289億円)もの資金を手にしたものの、チームの要である南米トリオを構成していたネイマールの移籍により、大きな戦力ダウンを強いられている。その傍ら、そのネイマールは早くも新天地パリ・サンジェルマンで輝きを放ちはじめている。

 今夏バルセロナは右サイドバックのネウソン・セメド、コロンビア人センターバック(CB)のジェリー・ミナ(来年1月の加入が内定)を獲得し、ジェラール・デウロフェウを買い戻した。さらにフィリペ・コウチーニョ、ウスマン・デンベレ、ジャン・ミシェル・セリらを獲得すべく奔走しているが、チームはリーグ開幕戦でベティスに2−0で勝利した後も精神的に沈んだままの印象だ(編注:バルセロナは25日、デンベレの獲得合意を発表)。

 現在のバルセロナはかつてないほどリオネル・メッシへの依存度が高まっている。創造性を失いつつある中盤では、ベテランの域に入ったアンドレス・イニエスタがコンスタントに活躍できなくなり、イバン・ラキティッチも長らく本来のプレーレベルを失っている。ネイマールの代役が務まる選手が現れる望みも薄いだろう。

 だがそういった個々の状況以前の問題として、バルセロナは横パスとバックパスを多用しながら攻撃を組み立て、リズムの変化やカットインを駆使して敵陣ペナルティーエリアへの侵入を試みる独自のプレースタイルを年を追うごとに失ってきた。並行して長年チームを支えてきた偉大なるクラック(名手)たちも年を重ね、1人、2人と現役を退いていく中で、クラブは以前ほど独自のプレー哲学を貫けなくなっている。パウリーニョの獲得はその一例だ。

広がり続ける、スペインクラブの貧富の差

スペインでは、一部のビッグクラブとそれ以外の差が大きすぎる 【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナがそのような状況なら、アトレティコ・マドリーは今夏の補強を禁じられている。来年1月にはセビージャからラス・パルマスとの半年契約を経てやってくるビトーロの加入に加え、現在クラブはジエゴ・コスタの買い戻しにも動いている。だが現時点では現有戦力のみで戦わなければならないことは確かだ。

 今夏、最も選手補強に予算を投じているのは、首位争いに食い込むべく、さらなるレベルアップを目指しているセビージャだ。アルゼンチン代表監督となったホルヘ・サンパオリの後任には、セルタで好成績を残した同郷のエドゥアルド・ベリッソが就任。並行してクラブはシモン・ケアー、エベル・バネガ、ヘスス・ナバス、ギド・ピサーロ、ルイス・ムリエル、ノリートらの獲得に総額6150万ユーロ(約79億5000万円)も費やしている。

 またビジャレアルはミランからカルロス・バッカを獲得。マルセリーノ・ガルシア・トラルを新監督に招いたバレンシアは、ゴールキーパーのネト、CBのガブリエル・パウリスタらを補強している。

 いずれにせよ、トップクラブが今夏に費やした補強資金がその他クラブの総額と変わらない現状――1部初昇格のジローナは450万ユーロ(約5億8000万円)、マラガは470万ユーロ(約6億1000万円)、エスパニョールは510万ユーロ(約6億6000万円)しか補強に金をかけていない――は、スペインクラブの貧富の差が縮まるどころか、広がり続けていることを示している。

 リーガ・エスパニョーラがプレミアリーグと世界最強リーグの地位を争う上で、それは大きな問題の1つとなり続けてきた。一部のビッグクラブとそれ以外の差が大きすぎるスペインとは違い、イングランドでは優勝チームと最下位チームの経済格差がずっと小さく、より拮抗(きっこう)したリーグ戦となることを保証している。

※移籍金は推定で、日本円は17年8月25日現在のレートで換算

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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