モリエンテスが語る、サッカー人生の岐路 銀河系軍団の熾烈なポジション争い

スポーツナビ

ラ・リーガのアンバサダーとして来日したモリエンテスにインタビュー。銀河系軍団の熾烈なポジション争いについて聞いた 【宇都宮徹壱】

 2016−17シーズン、レアル・マドリーはリーガ・エスパニョーラとCL(UEFAチャンピオンズリーグ)のタイトルを獲得した。CLでは史上初の連覇を達成し、ジネディーヌ・ジダン監督のもと、充実した時を過ごしている。一方で所属する選手たちは常に激しいポジション争いを強いられる。今夏もハメス・ロドリゲス(→バイエルン)やアルバロ・モラタ(→チェルシー)、ダニーロ(→マンチェスター・シティ)といった準レギュラークラスの選手たちが出場機会を求めて新天地へと旅立っていった。

 銀河系軍団の一員であり続けることはどれほど難しいことなのか。レアル・マドリー在籍時にリーグ優勝2回と3度のCL制覇などを経験し、このたびJリーグと戦略的連携協定を締結したラ・リーガのアンバサダーとして来日していたフェルナンド・モリエンテス氏にクラブの哲学や自身が在籍していた当時のポジション争い、そして移籍を決断した瞬間について聞いてみた。

 現役時代からほぼ変わらない体型、タイトル獲得の重要性などクラブの哲学を朗らかな笑顔を見せながら語る一方で、「サッカー人生の岐路だった」というロナウドの加入について触れたときだけは唇をかみ締め、ゴールを狙うストライカーらしい鋭い眼光を見せたことがとても印象的だった。(取材日:2017年7月20日)

ジダンは監督になってとても変わった

現役時代はジダン(右)の監督としての資質を感じなかったという 【Getty Images】

――まずは昨シーズンのレアル・マドリーについておうかがいします。リーガ・エスパニョーラとCLを獲得しましたが、OBとしてどう見ていましたか?

 昨シーズンはシーズンを通して調子が良かったね。特に最後の2カ月はフィジカルを落とさず、高いレベルを保っていた。それが勝因になったんだと思う。

――ジダン監督のチーム作りを見ると、カゼミーロのような守備力の高いMFを重宝するなどモリエンテスさんも在籍し、CLを制した01−02シーズンのチームと似ている部分を感じます。

 レアル・マドリーはバランスが重要だと思っているし、すべてのラインでバランスを保つことが現在の競争力につながっている。カゼミーロのようにディフェンスが得意な選手がいれば、異なる利点を生む(ルカ・)モドリッチのような選手もいる。各選手が得意なプレーでお互いを補完して、相乗効果を生んでいると思う。

 レアル・マドリーのような難しいチームをコントロールするには監督の力量が試される。だからジダンは素晴らしい役割を果たしていると思うよ。

――ジダン監督について、現役時代から監督としての資質を感じていましたか?

 ジダンは監督になってとても変わったね。現役時代には、彼が監督になるなんて誰も思っていなかったと思う。当時はそこまでの資質を感じていなかったよ。ただ、ジダンは引退したときに、今後のキャリアパスを考えてとても準備したんだと思う。彼が成功してとてもうれしいよ。

すべての試合で勝ちにいくのがレアル・マドリー

モリエンテス(左)はラウルとの2トップでゴールを量産。3度のCL制覇などを経験した(写真は00年) 【写真:ロイター/アフロ】

――仮に昨シーズンのチームと02年にCLを制したチームが戦ったらどちらが勝つと思いますか?

 すごく難しいね(笑)。世代が違うし、どちらもクラブにとって重要な時代を作ったチームだ。ただ、サッカーはどんどん進化していくものだから、今のチームの方がしっかりと整備されているだろうし、それは仕方がないことだと思う。結果を予測するのは不可能だけれど、面白い試合にはなるのは間違いないだろう。

 サッカー選手としては基本的にどの試合にも「勝つんだ」と思って挑む。特にレアル・マドリーでプレーする選手たちはすべての試合で勝とうと考えるものだ。でも、その試合は僕らが勝つんじゃないかと思うよ(笑)。

――充実した時期を過ごしていますし、レアル・マドリーは新シーズンも期待できそうですね。

 そうだね。ただ、難しいシーズンにはなると思う。前のシーズンを超えるのは難しいことだから、非常にチャレンジングなシーズンになるだろう。簡単ではないと思うが、素晴らしいラインアップがそろっているので、ジダンが監督として選手をどうマネジメントしていくかが鍵になるだろう。重要なことは、すべての試合で勝ちにいくこと、できるかぎり多くのタイトルを取りにいくことだ。

モラタの決断は理解できる

モラタの移籍は大きな損失と語るも、決断には理解を示した 【Getty Images for ICC】

――新シーズンに向けてといえば、モラタのチェルシー移籍が(インタビュー日の朝に)発表されました。彼の移籍についてどんな印象を持ちましたか?

 レアル・マドリーにとって、またラ・リーガにとっても大きな損失であることは間違いない。彼は下部組織からレアル・マドリーで成長してきた選手であり、スペインリーグのことを熟知していた。特に私はいま、ラ・リーガのアンバサダーをしているから、プレミアリーグに選手を持っていかれることは悲しいことだよ。ただ、欧州で移籍は普通に行われていることだからね。

――モラタにはモリエンテスさんと似ている部分があると思います。スペイン代表に選ばれる実力がありながら、クラブではなかなか出場機会を得られない。モラタの決断を理解できる部分もあるのでは?

 選手によって移籍の理由はさまざまだが、レアル・マドリーというビッグクラブからの移籍を決断することは簡単ではない。モラタはまだ若いし(24歳)、出場時間は長くなかったが、多くのゴールを決めていた(リーグ戦で15得点)。

 今後、もっとゴールを増やしたいと思って移籍を決断することは理解できる。特に彼の場合はアントニオ・コンテ監督のことを知っていたので、もしかしたらチェルシーに移籍すると重要な選手として出場機会が増えると直接言われたのかもしれない(編注:14年にモラタはコンテに誘われユベントスへ移籍。しかし、コンテは直後に退団しイタリア代表監督に就任した)。

 モラタとしては出場機会を増やしたい、そして違うリーグでもプレーしてみたいと思ったのかもしれないね。選手としては、常に自分は重要な選手でありたい、重要な役割を担っていたいと思うのは当然のこと。理解はできるよ。

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