バルセロナにのしかかる補強失敗の代償 “代役探し”ではなく、大幅な変革を

バルセロナはレアル・マドリーとのスーペルコパ・デ・エスパーニャで2戦合計1−5と大敗を喫した 【Getty Images】

 本稿は現地時間8月13日に行われたスーペルコパ・デ・エスパーニャのファーストレグにて、レアル・マドリーがバルセロナにカンプ・ノウで3−1と完勝した直後に書いたものだ。

 そのため執筆時点ではサンティアゴ・ベルナベウで行われるセカンドレグの結果は分からないものの、たとえバルセロナが敵地で素晴らしいパフォーマンスを発揮して逆転優勝を実現したとしても、本稿で扱うテーマが変わることはない。

 本稿のメーンテーマとなるのは、バルセロナが必要としている早急な変革についてだ。この場合の変革とはシステムや戦い方を変えることではなく、選手自体を入れ替えることを意味する。(編注:16日に行われたセカンドレグでは2−0でレアル・マドリーが勝利、2戦合計5−1で優勝を果たした)

大きく開く主力とサブメンバーのレベル差

中盤のファーストチョイスの1人であるイニエスタ(右)は低調なパフォーマンスを繰り返している 【Getty Images】

 ベストメンバーを先発にそろえ、多くの選手が気合十分にプレーをすれば、ハイレベルなプレーを実現できる試合もあるだろう。

 だがバルセロナが抱える問題は、ほぼ全ての主力メンバーがベストパフォーマンスを発揮しない限り、以前の強さを維持できないことにある。今のチームは1、2選手が調子を落としただけで、かつてわれわれを魅了したスペクタクルなフットボールとは、かけ離れたプレーレベルに落ち込んでしまうのだ。

 ベンチに並ぶ選手たちは主力組と比べて大きくレベルが劣る。中盤のファーストチョイスであるイバン・ラキティッチとアンドレス・イニエスタはそろって低調なパフォーマンスを繰り返し、さらにはネイマールのパリ・サンジェルマン移籍という不測の事態まで重なった。

 戦力の限られた(とはいえ悪いチームではない)アスレティック・ビルバオを率いて好成績をあげてきたエルネスト・バルベルデは、新監督に就任するなりそんな状況を目の当たりにすることになった。

難しい立場に置かれるラキティッチ

ラキティッチ(左)はトレード要員とされたものの、結局移籍は決まらず。複雑な胸中のまま新シーズンを迎えた 【Getty Images】

 今やディフェンスラインは最大の問題ではない。長らく定位置を維持してきたジェラール・ピケとジョルディ・アルバに加え、昨シーズンにサミュエル・ウムティティが定着し、今夏は右サイドバックにネルソン・セメドが加入した。彼らと中盤の底に構えるセルヒオ・ブスケツは質の高いビルドアップを保証しているものの、現チームが抱える問題はブスケツが前方の誰かにボールを預けたところから見え始める。

 ラキティッチはトップフォームを失って久しいが、とりわけ今夏は精神的に難しい状況に置かれている。マルコ・ヴェッラッティ獲得を目指したクラブが、彼を移籍金の一部としてオファーに含めたという情報が流れたからだ。自らの意思とは関係なくトレード要員とされ、結局移籍が成立せずに残ることになったラキティッチの心境は複雑なはずだ。

 イニエスタは事情が異なる。彼のような“クラック(スペイン語で名手の意)”はプレーの仕方を忘れることなどあり得ないが、長年にわたって蓄積されてきた心身の疲労と年齢の積み重ねが影響し始めたことは明らかだ。その影響でフィジカルコンディションが落ち、プレーを組み立てる上で不可欠な存在である彼は、長い時間試合から消えることが多くなってきた。

 さらにはネイマールがチームを去り、現時点まで彼の代役を務めてきたジェラール・デウロフェウが全くもってネイマールのプレーレベルに至っていないのだから、チームが抱える問題は増える一方である。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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