バルセロナにのしかかる補強失敗の代償 “代役探し”ではなく、大幅な変革を

スアレスが孤立するシーンが目立つように

メッシが中盤まで下がってプレーする機会が増え、スアレスが前線で孤立するシーンが多く見られるようになった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 それだけではない。ネイマールを失い、イニエスタの存在感が薄れてきたことにより、攻撃の核となるべきリオネル・メッシはプレーの構築に苦労している中盤をサポートすべく、低い位置まで下がってボールを受ける頻度が増えた。結果としてトリデンテ(3トップ)が前線に並んでいた昨季までとは異なり、ルイス・スアレスが前線で孤立するシーンが増えているのだ。

 ベストメンバーをそろえてもそのような状況では、控え組はどうなるというのか。主力組と彼らの間に大きなレベルの差がある現在のバルセロナは、極めて戦力バランスの悪いチームだと言える。

 ヤスパー・シレッセン、ハビエル・マスチェラーノ、複数のポジションでプレーできるセルジ・ロベルト、バルベルデに戦力外とみなされ移籍が濃厚となったアルダ・トゥランらひと握りのバックアッパーを除き、このチームの中心選手となり得る、もしくは試合の流れを変える切り札的存在となりそうな選手は見当たらない。

残り2週間で、どれだけ的確な補強を実現できるか

バルセロナに求められるのはネイマールの代役探しではなく、もっと大幅なメンバーの刷新だ 【Getty Images】

 ここ数年、バルセロナはごくわずかな例外を除き、選手補強の失敗を繰り返してきた。チームは今、その代償を払い始めている。重要なのは残り2週間となった移籍市場で、どれだけクラブが的確な補強を実現できるかだ。

 バルセロナはネイマールの売却によって2億2200万ユーロ(約290億2000万円)の移籍金を手にした。だがそのことを知っている他のクラブは、バルセロナが狙うクラックたちの移籍金を釣り上げてくるはずだ。

 その1人であるフィリペ・コウチーニョはネイマールとは異なるタイプながら、彼の代役としてチームの新たな武器となり得る選手だ。だが今必要なのはネイマールの代役探しだけではなく、より大幅な変革であることを強化部の人間が理解していなければ、バルセロナはシーズンを通して同じ問題を抱え続けることになる。

 例えば、バルセロナはヨーロッパで活躍するスター選手の15〜20パーセントほどのコストしかかからない南米のマーケットにもっと目を向けた方が得策ではないだろうか。

 早急に結果を求める時ほど、広い視野を保つことができず盲目になってしまうものだ。近日中に1人、2人のクラックを獲得したところで、メンバーの大幅な刷新を必要としているバルセロナの問題が解決されることはないだろう。

 ゆえにバルセロナがほんの数年前までたどっていた黄金期を再び築き、輝かしい試合の数々を再現したければ、早急な変革が不可欠なのだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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