悔しさ、反省……成長誓ったサニブラウン「勝負できなきゃ、面白くない」
歯をくいしばり、200決勝のレースを走ったサニブラウン 【写真は共同】
前半100mに絶対の自信
「緊張は全然しなかった。むしろ、世界のファイナルだったので、とことん楽しんでやろうと思っていた」
派手な演出に、会場が盛り上がる中、サニブラウンは冷静に一歩一歩レーンに向かい「無駄な体力は使いたくない」と落ち着いていた。ただ、レース前には報道陣には知らされていなかったが、200メートル予選の前から右足のハムストリングに“張り”を覚えていた。これに関しては、日本チームのトレーナーと、現在サニブラウンが一緒に練習しているオランダチームのトレーナーが様子を見ていた状態だった。
「メンバー的に、自分より速く前半の100を走る人はいないと思っていた。行けるだけ行って、あとは自分のリズムを保っていけたら、前で勝負できていた」
今回の200メートルのメンバーの中で、大会2日目に行われた100メートル決勝に出場した選手は1人もいない。つまり、準決勝を「盛大にやらかした」(サニブラウン)と話したスタートの躓きのようなミスがなければ、自分が前半はトップで抜けられるという自信があった。
その言葉通り、第8レーンから飛び出したサニブラウンは、外側の第9レーンを走るアミール・ウェブ(米国)をとらえ、コーナーを抜ける手前で先頭に立った。しかし、ここで不安材料だった右足の痛みが強くなり、思うように足を回せない。後半はスピードに乗ることができず、ずるずると後方に下がり、最下位に落ちる手前で踏ん張ったが、7位という結果に終わった。
「一番にならなきゃ、まったく意味がない」
結果は7位。中央のレーンでは、優勝したグリエフ(右端)がこぶしを突き上げていた 【写真は共同】
18歳5カ月でファイナリストという快挙を達成し、足が痛い中で世界の強豪を相手に前半はしっかり戦えたことは評価しても良いだろう。しかしサニブラウン自身は、「調整も含めて世界選手権に挑んで、それで勝つ人が一番強い。いくら速いPB(パーソナルベスト)を持っていたとしても、結局、その全ラウンドを走り切って、一番にならなきゃまったく意味がない」と、世界一を決める舞台の本質を語る。
それでも100メートルから数えて5本のレースで、「一本一本すべてが大事。スタートでミスしたら痛いし、それがすごく大切になるのが分かった」と今大会の収穫を話す。そして2020年東京五輪に向けては「(五輪本番に向け)レベルが上がっていくと思うし、そこはしっかり決勝に出つづけ、メダルを取れるように、これから悔しさと反省点を生かして練習していく」と前を向いた。
伊東強化委員長、リレーは「無理をさせたくない」
レースについては「コーナーは抜群によかった。前半の走りは良く、期待が持てた」と高く評価した。しかし、右足のけがについては、慎重に判断するということで、「あまりリレーで無理させたくない。大事な選手なので、足が痛いと言っているのに、無理をさせて、練習をやらせようとは思わない」と、特別措置を取るつもりだ。
4×100メートルリレーの出場判断については、苅部俊二短距離コーチとオランダで指導するレイナ・レイダーコーチの意見を聞いてからとしている。ただ伊東強化委員長は「(サニブラウンの欠場は)確実に9秒台で走る選手だからとても痛い」とするが、桐生祥秀(東洋大)、飯塚翔太(ミズノ)といったリオデジャネイロ五輪銀メダルメンバーや、ベテランの藤光謙司(ゼンリン)らが控えていることもあり、悲観しているわけではない。
そのため今はサニブラウンのリレー起用は「走らせたくない。使わない」という意向のようだ。正式なエントリー確定はこれからだが、日本の「大事な選手」として、この先を見据えた決定になってほしいところだ。
(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)
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