阪神・秋山が語るブレークの理由 「投球フォームに迷いがなくなった」
安定感を増し、阪神の先発ローテーションの軸として活躍する秋山 【写真:BBM】
真っすぐが良くなり1軍で戦える形に
今年こそは絶対にやるぞ、とは思っていましたが、想定していた以上に出来過ぎかな、とは感じています。良くて先発ローテの5、6番手で争う位置なのかな、と思っていましたので。まさかこの時期に6連戦の頭、週初めの初戦(火曜日)を任せられるまでになるとは思っていませんでした。
――昨年までと一番の違いとは何でしょうか。
真っすぐが良くなったこと、と同時に、1軍で投げる回数が増えたことで、1軍の打者を見ながら戦えるようになったことが一番大きいです。1軍に慣れた、というと語弊がありますけど。
――昨年までも1軍での登板はありました。そことの違いとは?
昨年までは、先発ローテの谷間で投げていましたので、この1試合で結果を残さなければ、という自分との戦いでした。打者を見るという余裕はまったくなかったんです。それが今年はオープン戦で結果を残せ、先発ローテに入れたことで落ち着いて投げられている。そこが大きな違いです。
――先発ローテが決まり、シーズン最初から落ち着いて投げられたのでしょうか?
最初の登板はすごく不安でしたし5、6番手のスタートだったので、どうなるなのかなあ、とは思っていました。ただ、自分の中で、失投などした後に、同じ過ちさえ繰り返さなければ大丈夫だとも思っていました。まあ、それでも実際に気持ちが落ち着いてきたのは4、5試合目くらいでした。
――今年初登板では勝ちが付かず、2試合目で勝利投手。そのあとは2連敗もありながら、この中で落ち着いていったんですね。
まずは、試合をつくることを優先に考えていましたので、最初の4試合とも6イニング以上を投げることができていたことは大きいです。気持ちの中で、ポジティブに「5、6番手なんだから6イニングを投げれば大丈夫」と思いながら投げていたんです。その積み重ねによって結果が出てきました。
――昨年に比べ、真っすぐが良くなったという話でしたが、投球フォームには何か変化があったのでしょうか?
皆さんが見ても、すぐには分からないと思います。技術的なことを言えば、胸を柔らかく使うことで、体の開きが抑えられたんです。それにより右腕が上がり、縦振りとなりしっかり指先でボールをたたけるようになりました。
――胸を柔らかく……?
胸を張る感じですね。そうすることで右ヒジと腕のトップの位置が高くなり、角度がつくので打者がイヤに感じているのかな、と思います。つまり、胸を張りながらも、右ヒジとボールを持つ手は頭の後ろに隠れながら高いトップをつくれていることで打者がボールを見づらいのでは、という感じです。
――その投げ方に変更した理由はあるのでしょうか。
昨年シーズン後半に、そういう投げ方の手応えをつかみました。そこから、オフに入り肩周りの可動域を考えながらトレーニングをしました。自主トレのときには、オリックスの岸田(護)さん、平野(佳寿)さんと今年も一緒にやらせていただきました。その中でも、岸田さんの投げ方って、くねくねしながらも胸を張って投げていますよね。1軍でしっかり成績を残していらっしゃいますので、投げ方などをいろいろ聞いてみました。
――そうなんですか。
昨年まで一緒にトレーニングをしていただけだったのですが、今回は自分の感覚と、岸田さんの感覚を聞き、胸を張りながら投げる感覚を調整していきました。その中で、徐々に岸田さんとの感覚に近くなってきたので、これなら大丈夫かな、と。今までは、体を開かないように上半身と挙げた左足を少しひねってから投げていました。でも、ひねってしまうとそれを元に戻して投げようするので、余計に体が開くんです。それで球離れが早くなり、打たれていたということもありました。
――これまで、岸田投手には、そういう質問をしなかったんですね。
僕の中で、胸を張るという感覚がなかったんです。聞いてもイメージがわかないんじゃないか、と思っていたんです。でも、昨年1軍で先発の機会をもらい(2試合に先発し1勝)、長いイニングを投げていく中で、胸を張る感覚を自然とつかんだんです。それを生かしたくて練習をしていき……いろいろなことがつながり、最後は岸田さんにたどりついたんです。昨年の1軍での先発登板機会がなかったら、今年のこの成績はないと思います。
――この投げ方は完全につかんだのですね。
ここ最近、ようやくまとまったかな、と感じています。投球フォームに迷いがなくなったことで、打者にも向かっていけるようになり、成績も付いてきているのかな、と感じています。