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少年チームの監督をいったんお休みします
スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(20)

ちょっと「疲れて」しまった

やっぱり苦労が報われた感じがしたのはタイトルを獲った時。3年間で4回優勝。特に2年前セビージャ市のスクールの頂点に立てた時はうれしかった(写真は3冠王者時)
やっぱり苦労が報われた感じがしたのはタイトルを獲った時。3年間で4回優勝。特に2年前セビージャ市のスクールの頂点に立てた時はうれしかった(写真は3冠王者時)【木村浩嗣】

 2015年11月にスタートしたこの連載も今回が最終回になります。ちょうど第20回だから切りもいい。終わりにするのは、今季限りで指導をいったんお休みにするから。その理由はいろいろあります。


 まずは仕事上の都合。


 1時間練習で準備や何かを含めて拘束は2時間。それが週3回で計6時間。週末の試合は試合時間48分でウォーミングアップを含めて2時間拘束(まあ「拘束」という言葉を使う時点で指導者失格なんだけれど……)。計週8時間は何とかねん出できるのだが、問題なのは火、水、木、金にセビージャにいなければならないこと。つまりチャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグ(EL)の試合がマドリーである場合は取材に行けない。


 テレビ番組の収録などで出張する際には、なるべく練習を休まないようにスケジューリングして、今季は計4日間、代理コーチに来てもらった。それでも、CLとELはセビージャ開催以外は一度も行けず。6月に集中的に開催される少年や女子のトーナメント大会にも同じ理由で足を運べなかった。また、最近は映画の仕事もしているが、各地で開催される映画祭の取材もシッチェス国際ファンタスティック映画祭以外はアウト。さすがにこれはまずいだろう、と。


 まあでも、仕事との両立の難しさは最初から分かっていたこと。本音を言いましょう。ちょっと「疲れて」しまったのだ。何に?

オーガナイズのルーズさはお国柄

 第一に、オーガナイズのルーズさに。リーガ・エスパニョーラはほんの3、4年前まで試合の2週間ほど前にならないと開催日時が決まらないか、決まっていても変更される日本の放送局泣かせのリーグだった。


 プロがこうなのだから、アマ中のアマであるスクールの市営リーグがいい加減でないわけがない。たとえばカレンダーの発表が開幕戦の前々日だったりする。「今週ありそうだ」といううわさが流れ、水曜の昼に「あさって試合だから」と言われる。これが毎年恒例。当然のように試合の日時変更も日常茶飯事。選手登録手続き、ライセンス発行も同じように大慌てで行われる。前もってやれば楽なのだが、“明日できることは今日やらない”のがお国柄である。


 主催者がああだからクラブもこうである。試合用と練習用のユニホームが1カ月以上前に料金を徴収しているのに、なかなか届かない。届いても、数もサイズも背番号も全然注文と違う。「検品」というシステムが子供用のスポーツ用品業界には存在しないのだ。カレンダーの都合で「明後日に試合」なのに着るユニホームがないなんて当たり前。加えてライセンスも未着だったりする。こうしたことをスペイン人のように笑えれば、あるいは「俺の責任ではない」と開き直ることができればいいんです。でも半分スペイン人の私でも根は生真面目な日本人だから、こういうのがストレスになる。


 ちなみにユニホームのための子供の採寸と手渡しも監督の仕事で、注文と違うユニホームが届いても返品は不可。「こっちがお客でしょ。お金払っているんでしょ」と怒ると「そういう条件でないと注文を受けてもらえない」という“お客様は神様です”とは真逆の言葉が返ってくる……。

教育と勝利、商売との板挟みに……

 第二に「商売」と「教育(育成)」と「勝利」のトライアングルに疲れた。教育と勝利の板挟みになるというのは、先月のこの連載でも書いたが(※関連リンク参照)、育成年代の指導者なら誰でも苦労していることだろう。育成のためなら後ろからつなぐサッカーが良いが、勝利のためには放り込みが手っ取り早いとか。教育のためなら子供を平等に起用する方が良いが、勝利のためならうまい子だけを使う方が良い。あるいは悪平等を避けるために、下手でも努力した子を使って、うまくてもサボっている者は使わない、という私採用の別バージョンもある。

 いずれにせよ、選手選択と勝利の間で起こる軋轢(あつれき)である。この従来の構図に、スクール特有のものとして「商売」という要素が加わる。クラブにとって連盟所属チームは名誉であるが、スクールを持つのは経済的に必要だからである。クラブの財源を支えているのはスクールの授業料(連盟所属チームの子には月謝はない)なのだ。


 私の指導するアレビン(10、11歳)カテゴリーでは今季2チーム制を採用した。これには、ほとんどすべての子供がほとんどすべての試合でプレーできるなどのメリットと、ばかげたローカルルールのせいで子供が足りず、試合が成立しないなどのデメリットがあるが、繰り返しになるのでここでは書かない。

木村浩嗣

元『月刊フットボリスタ』編集長。スペイン・セビージャ在住。1994年に渡西、2006年までサラマンカに滞在。98、99年スペインサッカー連盟公認監督ライセンス(レベル1、2)を取得し8シーズン少年チームを指導。06年8月に帰国し、海外サッカー週刊誌(当時)『footballista』編集長に就任。08年12月に再びスペインへ渡り2015年7月まで“海外在住編集長&特派員”となる。現在はフリー。セビージャ市内のサッカースクールで指導中。著書に17年2月発売の最新刊『footballista主義2』の他、『footballista主義』、訳書に『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』『モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」』『サッカー代理人ジョルジュ・メンデス』『シメオネ超効果』『グアルディオラ総論』(いずれもソル・メディア)がある

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