VVV藤田俊哉コーチインタビュー<前編> 優勝の感慨、2部で活躍した日本人の評価

中田徹

VVVが優勝パレードを行った市庁舎広場にあるオープンテラスのカフェで、藤田俊哉コーチにインタビューした 【中田徹】

 オランダ2部リーグの優勝を祝うVVVのパレードが4月22日、フェンローの町で盛大に行われた。ホームスタジアムのデ・クールを出発したバスが、2.5キロ先にあるフェンロー市役所に着いたのは1時間以上経ってからだった。マウリス・スタイン監督をはじめとしてコーチングスタッフ、選手が次々にバルコニーに立って、広場を埋めたフェンロー市民に向かって優勝盾を掲げる。藤田俊哉コーチがバルコニーに立ったのは3人目だった。「ホンダー! ホンダー!」という合唱を浴びながら、実に気持ちよさそうに藤田は優勝盾を上下に振りまくった。

 あの歓喜から2週間以上が経過した。その後のVVVは毎日のように、いくつものスポンサーから呼ばれ、行事や食事会に参加した。「スポンサー主催のフットゴルフ大会なんて2回もやったよ」と藤田もやや祝賀会疲れを起こしているようで、苦笑していた。

 インタビューをしたのは、市庁舎広場にある、オープンテラスのカフェだった。狂喜乱舞のフェンロー市民で埋まった2週間前が信じられないような、静かでのどかな午後だった。

優勝を決めた瞬間は「エモーショナル」

――藤田さんも2週間前、市庁舎のバルコニーに立っていました。今の景色と比べて信じられませんよね。

 こういうギャップが良いよね。あのバルコニーにいた人が、ここでお茶を飲んでいても、フェンローに住んでいる人にとっては、なんてことがないんだよね。

――ほとんど声がかかりません。

 そう。これが(リオネル・)メッシやクリスティアーノ・ロナウドだったら状況は変わってくるんだろうけれど、もしVVVの選手がここでコーヒーを飲んでいても、こんな感じで放っておいてくれる。そういう距離感がいいよね。フェンローに来て3年半が経って、「もう日本に帰りたいだろう?」と聞かれるけれど、僕はこっちの生活が好きで合うからさ。何のストレスもないんだ。

――優勝を決めた瞬間の気持ちを教えてください。

 優勝して、みんなで「エモーショナルな瞬間だなあ」という話をした。“感動的”“感慨深い”という意味だけど、「エモーショナル」っていい言葉だなあって思った。

 普段、僕はこの町で仲間とお茶を飲んだり、友達が遊びに来てくれたりしながら、VVVで仕事をしている。そして優勝が決まったら、フェンローの人たちが僕たちのために喜びを共有してくれた。これがいいんだよね。フットボールで公共の場を歓喜の渦に巻き込むことなんて、そうそうあることではない。

――人波によって、広場がVVVのチームカラーの黄色に染まりました。

(本田)圭佑が優勝した時に比べると、広場に集まった人が減ったらしい。それでも僕にとっては十分な景色だった。広場にスペースが見当たらなかったものね。この広場は、僕からすると、今日みたいにお茶しているような場所なわけ。だから、感慨深いんだ。

5年がかりの結果に「感慨深い」

藤田は優勝を決めた瞬間を「エモーショナル」と振り返った 【VI-Images via Getty Images】

――VVVのパレードは、地方局L1が2時間半以上、生中継しました。

 VVVが優勝したのはオランダ2部リーグだからね。言い換えればJ2だよ。J2で優勝したら、日本の町はこうなるのかと思うよ。

――カテゴリーのことを忘れるぐらい、すごいパレードでした。

 最初、自分がVVVに来た時、「誰だ、こいつ!?」という状況からチームに入っていった。ハイさん(ハイ・ベルデン会長)と話してから、ここまで5年ぐらいかかった。そう思うと感慨深いよ。

――オランダに来て3年半ですが、ベルデン会長と話してからは5年経ったんですか?

 現役の最後1年前にハイさんと会って、自分がどうしたいかをいろいろ話して、それからいざオランダに行こうと思っても、VVVの受け入れやオランダに住む手続きのこともあって、なかなか先に進まなかった。

 それからオランダに来てもチームが勝てなかったり、最初の2年間は構想通りにいかなかった。最初のハイさんとの話し合いから5年経って、VVVでは一応の結果が出た。俺はそれを求めてやっていた。結果なんて、誰でも残せるものじゃない。だから、うれしい。

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント