VVV藤田俊哉コーチインタビュー<前編> 優勝の感慨、2部で活躍した日本人の評価
VVVが優勝パレードを行った市庁舎広場にあるオープンテラスのカフェで、藤田俊哉コーチにインタビューした 【中田徹】
あの歓喜から2週間以上が経過した。その後のVVVは毎日のように、いくつものスポンサーから呼ばれ、行事や食事会に参加した。「スポンサー主催のフットゴルフ大会なんて2回もやったよ」と藤田もやや祝賀会疲れを起こしているようで、苦笑していた。
インタビューをしたのは、市庁舎広場にある、オープンテラスのカフェだった。狂喜乱舞のフェンロー市民で埋まった2週間前が信じられないような、静かでのどかな午後だった。
優勝を決めた瞬間は「エモーショナル」
こういうギャップが良いよね。あのバルコニーにいた人が、ここでお茶を飲んでいても、フェンローに住んでいる人にとっては、なんてことがないんだよね。
――ほとんど声がかかりません。
そう。これが(リオネル・)メッシやクリスティアーノ・ロナウドだったら状況は変わってくるんだろうけれど、もしVVVの選手がここでコーヒーを飲んでいても、こんな感じで放っておいてくれる。そういう距離感がいいよね。フェンローに来て3年半が経って、「もう日本に帰りたいだろう?」と聞かれるけれど、僕はこっちの生活が好きで合うからさ。何のストレスもないんだ。
――優勝を決めた瞬間の気持ちを教えてください。
優勝して、みんなで「エモーショナルな瞬間だなあ」という話をした。“感動的”“感慨深い”という意味だけど、「エモーショナル」っていい言葉だなあって思った。
普段、僕はこの町で仲間とお茶を飲んだり、友達が遊びに来てくれたりしながら、VVVで仕事をしている。そして優勝が決まったら、フェンローの人たちが僕たちのために喜びを共有してくれた。これがいいんだよね。フットボールで公共の場を歓喜の渦に巻き込むことなんて、そうそうあることではない。
――人波によって、広場がVVVのチームカラーの黄色に染まりました。
(本田)圭佑が優勝した時に比べると、広場に集まった人が減ったらしい。それでも僕にとっては十分な景色だった。広場にスペースが見当たらなかったものね。この広場は、僕からすると、今日みたいにお茶しているような場所なわけ。だから、感慨深いんだ。
5年がかりの結果に「感慨深い」
藤田は優勝を決めた瞬間を「エモーショナル」と振り返った 【VI-Images via Getty Images】
VVVが優勝したのはオランダ2部リーグだからね。言い換えればJ2だよ。J2で優勝したら、日本の町はこうなるのかと思うよ。
――カテゴリーのことを忘れるぐらい、すごいパレードでした。
最初、自分がVVVに来た時、「誰だ、こいつ!?」という状況からチームに入っていった。ハイさん(ハイ・ベルデン会長)と話してから、ここまで5年ぐらいかかった。そう思うと感慨深いよ。
――オランダに来て3年半ですが、ベルデン会長と話してからは5年経ったんですか?
現役の最後1年前にハイさんと会って、自分がどうしたいかをいろいろ話して、それからいざオランダに行こうと思っても、VVVの受け入れやオランダに住む手続きのこともあって、なかなか先に進まなかった。
それからオランダに来てもチームが勝てなかったり、最初の2年間は構想通りにいかなかった。最初のハイさんとの話し合いから5年経って、VVVでは一応の結果が出た。俺はそれを求めてやっていた。結果なんて、誰でも残せるものじゃない。だから、うれしい。