VVV藤田俊哉コーチインタビュー<前編> 優勝の感慨、2部で活躍した日本人の評価

中田徹

攻撃がオランダのフットボールのスタイル

「攻撃がオランダのフットボールのスタイル」と語る藤田。攻撃の形を作ることが優勝の鍵だった 【VI-Images via Getty Images】

――VVVが優勝した鍵は?

 攻撃(の形)を作って、最後に守備を整えたことかな。

――攻撃からチームを作ったんですね。

 オランダ人には、攻撃しかないじゃん。エールディビジ(オランダ1部)にも守備の特徴を持ったチームはない。オランダには「フットボールはこうやらないといけない」というのがある。そこに守備のフィロソフィーなんてないよ。だから今、オランダのチームは(国際試合で)勝てないんだけれど、攻撃がオランダのフットボールのスタイル。

 オランダは男も女も、子供もプロも、クラブも代表も、フットボールは全部一緒。その中で今、オランダ代表が取り残されている。クラブはうまくアジャストできるけれど、代表チームがアジャストしていない。今だったら絶対にアヤックス勢を主流にして代表を組んだほうがいい。それでもアヤックスはEL(ヨーロッパリーグ/今季は準優勝)だからね。CL(チャンピオンズリーグ)とは全く違う世界だから。

――アヤックスのリザーブチーム、ヨング・アヤックスもオランダ2部リーグに参戦しています。VVVが優勝した直後(4月29日の第37節)、ヨング・アヤックスはトップチームのメンバーをずらりとそろえて戦い、VVVは1−4で完敗しました。

 あれって、アヤックスのプライドだよね。すげえなあと思った。「お祝い気分を一発ぶち殴るぞ」みたいなさ。あれには、彼らのプライドをすごく感じたよ。中でもアブドゥルハーク・ヌーリ(20歳、今季、オランダ2部リーグのMVP)はいい選手だよね。ものすごく小さくて(167センチ)、つぶされないのかなと思うけれど、つぶされない。

オランダ2部でプレーした日本人3選手の評価

ファン・ウェルメスケルケン際(右)について、藤田は「自分の地位を確立した」と評価 【VI-Images via Getty Images】

――今シーズンは、多くの日本人がオランダ2部リーグでプレーしました。

 ファン・ウェルメスケルケン際(ドルトレヒト)は苦しみながら、自分の地位をチーム内で確立した。山崎直之(テルスター)は“主力”とまではいっていないけれど、十分な“戦力”だったよね。日本人として、すごく立派だったよ。

――それはなぜでしょうか?

 なかなか、あそこまで行けないよ。彼はスカウトされてオランダに来たわけではない。だから、試合に出られる状況が整っていなかった。そこで試合に出続けたのは立派。だけど、僕がいくら立派と言っても、彼は今の自分の立場に満足していないだろうから、そこを考えればもっとやることはある。

田嶋凜太郎は、点を取って結果を残すことで評価を上げていった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

――VVVの田嶋凜太郎選手は?

 毎日、凜太郎を見てきたから、彼のことはよく分かっている。凜太郎はとても成長した。トレーニングにおいてストレスなく普通にプレーできるようになった。

――最初は普通にできなかったんですか?

 それは、そうでしょう。大学に入ってから 、すぐに(休学して)オランダに来て「練習についていけるのかな!?」と思ったけれど、キックにパンチがあって力があった。緩急の付け方が足りない、状況判断が遅いとか、注文はあるけれど、公式戦に出ていないから仕方のない部分もある。だけど、練習試合では凜太郎は1年間、点を取って結果を残したからね。

――だから、シーズン終盤、リーグ戦で出場機会を得たんですね。

 そう。トレーニングで5対5、7対7、8対8をやっても、点を取るのは凜太郎。周りの評価は「凜太郎は点を取る」と上がっていった。優勝したチームの中で自分の居場所を確立したのはすごい。一定の評価はされているから。練習中、選手は凜太郎に愛情を持って言葉を発していたよ。

<後編は6月7日掲載予定>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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