バルセロナの移行期を締めくくった国王杯 3連覇も課題は山積み、夏に大改革か?

アラベスを難なく下し、国王杯3連覇

バルセロナは国王杯3連覇を達成し、2016−17シーズンを終えた 【写真:ロイター/アフロ】

 アトレティコ・マドリーのホームスタジアム、ビセンテ・カルデロンで行われる最後の公式戦となった現地時間5月27日の国王杯決勝にて、スタンドのVIP席を訪れたバルセロナの面々はどこか煮え切らない様子だった。それは今季彼らがどのようなシーズンを過ごしてきたかを何よりも雄弁に説明していたシーンだった。

 ライバルの背中を追い続けた苦しいシーズンの最後に、バルセロナはようやく大きなタイトルを1つ勝ち取った。だがその喜びに浸る間もなく、ルイス・エンリケと多くの選手はクラブを去り、チームは一新されることになるだろう。

既に退任を発表していたルイス・エンリケ監督をはじめ、チームは一新されることが予想される 【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナは国王杯決勝で好調のアラベスを3−1で難なく下し、2016−17シーズンを終えた。選手のタレントや資金力に雲泥の差があるライバルに対し、アラベスを率いるマウリシオ・ペジェグリーノにできることはほとんどなかった。ルイス・スアレスを出場停止で欠いたものの、バルセロナは前半だけで3−1とし、ハーフタイム前に勝負を決めた。そして後半はリオネル・メッシを中心にボールを支配し、試合終了までの時間をやり過ごすことに徹していた。

 国王杯3連覇を実現したことで、バルセロナは今季を主要タイトル無冠のまま終えずに済んだ。同時に来季はレアル・マドリーとのエル・クラシコを最低5試合(7月29日にマイアミで行われる親善試合、スーペルコパ・デ・エスパーニャの2試合、リーガ・エスパニョーラの2試合)戦うことになったものの、アラベス戦の勝利にそれ以上の意味はなかった。

薄くなった選手層、高まったメッシへの依存度

メッシ(左)ら主力への依存度が高まり、バックアッパーが育っていないなど、チームは多くの問題を抱えている 【写真:ロイター/アフロ】

 スタンドでVIPたちとあいさつを交わした後、バルセロナの選手たちは写真撮影のためにピッチに戻り、キャプテンのアンドレス・イニエスタとセルヒオ・ブスケッツがトロフィーを掲げる姿を遠目に眺めていた。ミックスゾーンの囲み取材に応じなかったことも含め、こうした彼らの振る舞いはおそらく、毎試合カンプノウのスタンドがプロリーグ機構(ラリーガ)会長ハビエル・テバスに「出て行け!」コールを送っているのと同じく、リーグの運営に対する不満の表れなのだろう。

 バルセロナはシーズンを通して不当なジャッジに不満を漏らし、抗議し、自分たちの正当性を主張し続けた。だが確かなのは、プランニングのミスによりチームの選手層が薄くなった上に、ルイス・エンリケが主力メンバーの代役が務まるバックアッパーを育てられなかったことで、主力組とそれ以外の間に大きな差ができてしまったことだ。

 さらにはアレイクス・ビダルやアルダ・トゥラン、ラフィーニャらのけがも重なった。ユベントスで不動の右サイドバック(SB)の地位を築き、レアル・マドリーとのチャンピオンズリーグ(CL)決勝に挑もうとしているダニエウ・アウベスの代役も見つけることができなかった。

 スペクタクルな南米トリオ(メッシ、スアレス、ネイマール)、何より世界最高のプレーヤーであるメッシを前線に擁しているバルセロナは、ライバルのレアル・マドリーが4年間で3度目のCL決勝を戦う理由を今一度考えてみるべきだ。そうすれば近年のチームは何かが狂ったまま、修正できずにここまできてしまったことが分かるはずだ。

 高いテクニックと破壊力抜群の攻撃陣は健在ながら、バルセロナは以前よりピッチをせわしなく走り回るようになった。それは縦に速く攻めるスタイルに傾倒したことで、中盤でボールを保持する時間が少なくっているからだ。チームとしての機能性を少しずつ失い、メッシへの依存度が高まっていることも原因の1つだろう。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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