レアル、5年ぶりリーグ制覇の3つの要因 全試合得点の歴史的快挙も達成

全38節を通して安定感を発揮

最終節で勝利し、レアル・マドリーは5年ぶりとなるリーグタイトルを獲得 【Getty Images】

 5月21日(現地時間)に行われたリーガ・エスパニョーラ最終節、ラ・ロサレダでマラガを2−0で下すという異論の余地なき勝利により、レアル・マドリーは5年ぶり、過去10年でもわずか3度目となるリーグタイトルを手にした。

 レアル・マドリーの勝因としては、まず全38節を通してほぼ常に首位の座を守り続けた安定感が挙げられる。だがシーズン当初から本コラムでも指摘してきた通り、今季はリーグタイトルの獲得を最優先して戦ってきたことも大きかった。この4シーズンで3度の決勝進出を果たしてきたチャンピオンズリーグ(CL)での成功とは裏腹に、国内リーグのタイトルは長らく手が届かずにいたからだ。

 マラガ戦が終わり、選手たちがピッチ上でトロフィーを掲げ祝宴を楽しんだ後、会見場に現れた監督のジネディーヌ・ジダンはいつも通りの穏やかな笑顔を浮かべながら口を開いた。

「もちろん長いシーズンにおいては思い通りにいかない時もあるが、リーグ戦では日々の努力、安定して勝ち続けることが何よりも重要だ。その王者になるということは、誰よりも優れたチームだったことを意味する」

 ジダンの言葉は核心を突いている。それに常に落ち着き払った彼の佇まいは、レアル・マドリーが成功する上で大きな役割を果たした。昨季半ばにラファエル・ベニテスの後を継いだ指揮官にとって、スターぞろいのチームをシーズンを通して率いるのは今季が初めてのことだ。

 にもかかわらず、彼はいつだって穏やかな笑みを浮かべながら、選手たちのモチベーションを切らすことなく、大きな問題を抱えることもなく大胆なローテーション起用を貫いてきた(ハメス・ロドリゲスが出場機会の少なさに不満を漏らしたことは何度かあった。そのために彼は移籍することになりそうだ)。何よりチーム一丸となって戦いながら、個々の能力を最大限に引き出すことに成功している。

 ジダンの落ち着いた振る舞いは、監督は常にテクニカルエリアで激しい身振りを交えながら怒鳴ったりする必要はないことを教えてくれた。重要なのはプレー意欲に溢れた選手たちの“エゴ”をうまくコントロールするすべを知ることだ。世界最高レベルの“クラック”(名手)が集まったレアル・マドリーのようなチームであれば、なおさらそれが重要になる。

素晴らしかった3人のディフェンダー

セルヒオ・ラモス(中央)は守備だけでなく、終了間際に重要なゴールを決めて何度もチームを救ってきた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 チームについても非常に高い評価を与えるべきだ。失点数は41とリーガで4番目だが、とりわけ3人のディフェンダーは素晴らしかった。セルヒオ・ラモスはその存在感、勝者のメンタリティーに加え、終了間際に重要なゴールを決めて何度もチームを救ってきた。シーズンを通して突出したパフォーマンスを見せてきた両サイドバック(SB)のダニエル・カルバハルとマルセロは、両サイドを深くえぐるアタッカーの役割をこなしつつ、多くの試合でライバルのサイド攻撃をシャットアウトした。

 またジダンはカゼミーロをディフェンスラインのサポート役として中盤の底に据え、プレーの構築についてはルカ・モドリッチとトニ・クロースを通して行う形を見いだした。クロースはカゼミーロが中盤に加わった昨季から守備の負担が軽減され、より前線のアタッカーたちに近い位置で攻撃を組み立てられるようになった。

 前線のトリデンテ、有名なBBC(ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド)について、あらためて言及する必要はないだろう。ベイルはケガ続きで多くの試合を欠場したものの、2位バルセロナとの明暗を分けた最大の要因はベンチメンバーの充実にあった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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