【ボクシング】“ミドル級頂上決戦”決定の舞台裏 好試合必至のカネロvs.ゴロフキン
プロレス的な演出で発表されたビッグマッチ
大差判定勝ちを収めた後、カネロはリング上から「トリプルG」を呼び込み、今年最大のビッグマッチが発表された 【Getty Images】
現地時間5月6日(以下同)、米国ラスベガスのT−モバイル・アリーナで行われたサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)対フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)のノンタイトル戦時のこと――。チャベスに大差判定勝ちを収めた後、カネロはリング上でそう息巻いた。
そこでゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)のテーマ曲になったザ・ホワイト・ストライプスの『Seven Nations Army』が流れると、ミドル級統一王者が場内に登場。リングに上がったゴロフキンはカネロと握手を交わす。9月16日に開催が決まった世界ミドル級頂上決戦は、こんな芝居がかった方法で発表されたのだった。
ボクシングファンは今昔も伝統的な部分を愛する人が多く、プロレス的な演出には賛否両論があったのは事実。しかし、一時は不機嫌になったファンも、ゴロフキン対カネロが実現する喜びは隠しきれないだろう。
現在のボクシング界で最大のカードがこの一戦であることは間違いない。WBA、WBC、IBFの3つのタイトルを保持する無敗の怪物王者ゴロフキンと、母国メキシコを中心に絶大な人気を誇るカネロ。稀有(けう)なスター性も備えた2人の激突は、ボクシングの範疇(はんちゅう)を超えた話題を集めるに違いない。
“メキシカンダービー”は大凡戦も、カネロは成長
チャベスとの“メキシカンダービー”は大凡戦となったが、そこにはカネロの成長の跡も見られた 【Getty Images】
そう宣言した2階級制覇王者のカネロは、26歳にして、キャリアの“審判の日”を迎えるのである。
6日に行われた“メキシカンダービー”のファイト自体は、まるで見せ場のない大凡戦になってしまった。164.6パウンドの契約ウェイトを作るだけで精魂尽き果てたのか、一回り大柄なチャベスは戦意を見せないまま。カネロの方にもフィニッシュに持ち込む意欲は見られず、ブーイングの中で終了のゴングを聴いた。
3人のジャッジがすべて120−108をつけたワンサイドファイト。この内容、結果は、母国のヒーローの対戦を楽しみにしたメキシコのファンを落胆させたはずだ。試合終了後、間髪入れずに続いたカネロの次戦発表を見て、まるで出来レースのようだと感じた人も多かっただろう。
もっとも、サイズで大きく上回る相手を迎えたチャベス戦で、カネロのボクサーとしての向上も確実に感じられたことは記しておきたい。ジャブは鋭く、カウンターはシャープで的確。154パウンド以上では初めてのファイトでも、持ち前の近距離でのクイックネスは消えなかった。チャベスが積極的に出れなかったのも、カネロを擁するゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)が事前から次戦への準備を自信を持って進められたのも、すべてはカネロの成長がゆえだったに違いあるまい。