【ボクシング】“ミドル級頂上決戦”決定の舞台裏 好試合必至のカネロvs.ゴロフキン
より拮抗する力関係で予測も難しくなった
カネロの挑戦を受けることになったゴロフキン。35歳となった怪物も、最近は衰えが見えていた 【Getty Images】
他ならぬゴロフキンもそう語り、ライバルの実力は認めている。
昨春以降、GBPがゴロフキン戦の早期実現を避け、露骨な時間稼ぎを続けていたことに米国内でも批判は多かった。ただ、この試合は先に延ばすほどカネロの勝機は膨らみ、ビジネス的にもうまみが出るのは紛れもない事実。そして、今年9月の挙行は、カネロ側から見てベストのタイミングと言えるのだろう。
プロ通算37戦全勝(33KO)のゴロフキンも35歳を迎え、過去2戦ではこれまでほど圧倒的な強さは感じられなかった。特に3月のダニエル・ジェイコブス(米国)戦では敗北寸前の大苦戦。ゴロフキン対カネロが昨年に実現していれば“ゴロフキン圧勝”という見方が大半だったはずだが、1年待ったことで、より拮抗(きっこう)した予想が出されるに違いない。
最強王者が弱みを見せるまで、辛抱強く待ったGBPのやり方に不快感を感じる人もいるのかもしれない。しかし、ボクシング・ビジネスとはそういうもの。展開、結果の予測がより難しくなったことは、ゴロフキン対カネロ戦の興行成績に好影響を及ぼすはずである。
2017年最大のボクシングファンへの贈り物
好試合必至の頂上決戦はボクシングファンにとっては素敵な贈り物。その舞台がどこになるかも注目だ 【Getty Images】
短期間で“ボクシングファンの新恋人”になったゴロフキンにしても、一般的な知名度はボクシング界の範疇を超えたものだとは言えない。そんな両者にとって、“2017年最大のファイト”というキャッチコピーとともに行われる直接対決の意味は大きい。試合内容にもよるが、勝者は晴れて“メイウェザー以降の支配者”として崇められる可能性は高いはずである。
現代ボクシング界のターニングポイントになりかねないゴロフキン対カネロ戦。それほど重要なファイトだからこそ、相応しい舞台作りにも期待したい。
開催地候補にはニューヨーク、ダラス、ラスベガスが挙がっているが、ファイトウィークの便宜の良さを考えれば、やはりベガスのT−モバイルアリーナ(約2万人収容)が濃厚。ただ、4月29日のアンソニー・ジョシュア(イギリス)対ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)の世界ヘビー級タイトル戦がウェンブリー・スタジアムに9万人を集めたあとで、同じような豪華な雰囲気を作って欲しいと願いたくもなる。
ダラスのAT&Tスタジアムを約10万人が埋め尽くし、その前でゴロフキンとカネロがスリリングなファイトを展開すれば……。
運命のゴングまであと4カ月弱――。カウントダウンは始まっている。戦前から最高級の盛り上がりが確実なゴロフキン対カネロは、ボクシングファンへのすてきな贈り物。スタイル的に好試合になることも必至で、凡庸な内容に終わったメイウェザー対パッキャオ戦へのアンチテーゼでもある。
2017年9月16日。エキサイティングな激闘、ドラマチックな結末に胸を奮わせるその日を、世界中のボクシングファンが首を長くして待っている。