【ゴルフ】セルヒオ・ガルシアの感動勝利を演出 夢舞台を作る“パトロン”という人々

北村収

例年よりも多くのパトロンが集まった最終日

ガルシアのメジャー初優勝の瞬間には、多くのパトロンも一緒に狂喜した 【写真:ロイター/アフロ】

 海外男子ゴルフのメジャー初戦「マスターズ」、勝利を決めた約3メートルのバーディパットが入った瞬間、歓喜したのはセルヒオ・ガルシア(スペイン)だけでなかった。18番ホールを取り囲んだパトロン(※マスターズでは観客のことを“パトロン”と呼ぶ)も狂喜した。

 マスターズではゲートオープン前に長蛇の列ができる。目的は場所取り。コース内の所々にある“SITTING AREA”という場所に椅子を置いておくと、一日中自分の席として確保され、席を空けて他の場所へ見に行くことも許されている。

 最終日のゲートオープンは現地時間8時。筆者はコースから車で約20分のホテルに泊まっていたが、6時くらいにロビーへ降りると、お土産屋で30ドル(約3300円)で販売されているマスターズオリジナルの緑の椅子を持った、多くのパトロンがフロント前にひしめいていた。開門前に自分のお気に入りのベストスポットを確保しようとする人々だ。

 このゲート前に並ぶ人々が今年は例年以上に多いという声を聞いた。最終日の優勝争いに、役者がそろったからであろう。

米国人ペアに観客が集まるも前半で最終組へ

最終日に多くのパトロンを集めたのは地元・米国人ペアとなったスピースとファウラーの2人だった 【写真:ロイター/アフロ】

 昨年、連覇達成かと思われたが12番ホールで池に2回入れて自滅し、今年リベンジが期待されているジョーダン・スピース(米国)がトップと2打差の4位タイ、米国のゴルフファンに人気が高いリッキー・ファウラー(米国)がトップと1打差の3位、そして昔は「神の子」と呼ばれるほどの実力者ながら、未だにメジャータイトルを持たなかったガルシアと、昨年のリオ五輪で金メダルを獲得したジャスティン・ローズ(イングランド)がトップに立っていた。

 やはりスタート時に最もギャラリーを引き連れたのは最終組の1つ前でスタートしたスピースとファウラーの米国人ペアだった。

 1番ホールの周りには多くのパトロンが集結。ところで通常のトーナメントで選手がショットをする際に出される「お静かに!」というボードがマスターズにはない。そんなボードがなくても、観戦マナーを知っているパトロンはショットの際に静かになる。そして、ショットの後には他のスポーツのように大歓声で選手を鼓舞するのもパトロンならではの流儀だ。

 多くのパトロンを集めたスピースとファウラーは2人とも序盤からスコアを落としてしまいフロントナイン(前半の9ホール)でトップと大きく引き離されてしまった。9番ホールを終えた時点で8アンダーまでスコアを伸ばしてトップに並んだガルシアとローズの一騎打ちの様相になり、パトロンもこの組に集まり出していた。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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